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EP.34 エドに事情説明しました

ブクマありがとうございます

「さて、詳しく話して貰おうか。まずは戦争の事からか」


 食堂に到着すると出されたのはサンドウィッチと紅茶だ。本当に軽食だな。まあ良いんだが……。

 具はタマゴのとハムか。オーソドックスではあるが、王が食す物だ。良い素材を使ってるんだろう。それじゃなくても資源不足により、一般人は普通の素材すらお高いからな。

 まずはタマゴから……うん、美味い。


「まず、生体実験の話からのが早い」


 先にそっちを話さないと進まない。


「分かった。聞かせてくれ……いや、さっきサラと話していた山より巨大な生物だったな?」

「ああ」

「何処にそんな生物を隠しておけるんだ?」


 ご尤も。


「次元の狭間」

「はぁ!?」


 まあそうなるよな。エドが素っ頓狂な声を上げティーカップを手にしたまま固まった。


「ラフラカの細胞の一部を採取していやがったんだ」

「……………………つまり。精霊王の力も備わっていると?」


 暫く考え、唸るように絞りだす。精霊王ではないのだが、訂正は面倒なのでそのままでは良いや。


「ああ。ちなみに六日後にこっちの世界に現れ、そのまま成長して十二日後に移動を開始する」


 これは屋敷を調べた結果ではなく、とある筋(・・・・)からの情報だ。それを聞いた時は、正直驚いたな。


「なら六日後討伐すれば良いだろ?」


 出来たら簡単なんだけどな。


「無理だ。足が六本あって同時に潰さないと復活してしまう。しかも内部に入らないと潰せない。つまり、内部に侵入出来る程に成長して貰わないといけない」


 正確には時間逆行を引き起こして討伐がなかった事になってしまう。


「なんても作り出すだ」


 エドはティーカップを置き頭を抱え出す。うん、分かるよ。でも、もっと問題な事があるんだよな。

 俺はハムのサンドウィッチを咀嚼しだした。エドは、話が大きくて結局昼食に手を出していない。紅茶だけを口にしている。

 俺は、紅茶を口にし、ハムのサンドウィッチを流してから再び話し始めた。


「同時に潰すには戦力を集めないといけない」

「……つまり、それを邪魔する為に戦争を引き起こすのか?」


 お! 鋭いな。


「いや……となるとアルフォンスとあの屋敷の主は通じてるのか?」


 エドが考えるように続ける。尤もな疑問だ。


「違う。そう仕向けるように何かを吹き込んだんだ」

「なるほどな」

「もっと言えば俺……いや正確にはダークか。ダーク、エーコ、ラゴス、ガッシュを除く十一人の英雄を始末、あるいは足止めする計画を立てていやがった」


 今更に思ったが同時にそんな計画を立てるとか、相当頭がキレる奴だったんだな。会った事ないけど。

 ダークの依頼主でもあり、死んだって言ってたけど、恐らくあの爆発で死んだんだろう。つまり、あの屋敷にいたって事だ。


「何っ!?」


 エドは驚愕を露わに目を剥く。


「戦争でエドとアルの足止めを計画していた……って、あれ? そう言えばアルはどこにいるんだ?」


 今までの周回で会わなかったな。エドのために、動き周っているのではないかとルティナは言っていたけど。


「北の洞窟に今朝、資源採取に行かせた」


 ん? 今朝?北って……仮に一日の距離だとして往復で二日。採取に一日、二日と考えても四日あれば帰ってくるだろ? でも、帰って来なかったな。

 それどころか六日後にロクームがエリスが死んで意気消沈で帰って来るんだよな。例の屋敷の主の策略以外で、何か厄介事に巻き込まれているのか? めんどうな……こっちもどうにかしないとな。


「……だが、これで合点がいった。人手が足らずで部外者のサラにルティナ達の護衛を任せたんだな」

「ああ」


 エドがやっとサンドウィッチを口にした。何かを考えるように咀嚼し、紅茶で流すと話し出した。


「皆、面倒な事になってるんだろ? となると、ロクリスの行かせたのは失敗だったか」


 エドが呟くように言う。


「屋敷の地下か?」

「知っていたのか……いや、屋敷を調べたんだったな」

「メモ書きみたいなのを読んだだけだけどな。爆発ギリギリまで読んでいたから、危うく死ぬとこだった」

「わたしがいなかったらー、死んでたよー」

「そうぐにょ」


 エーコがすかさず突っ込んで来た。だよねー。エーコの上位回復魔法(ヒーリング)が、なければ死んでいたな。

 と言うかナターシャよ、『ぐにょ』って何だよ? 食べながら話すなよ。


「アークにも、すまない事をしたな」


 エドが頭を下げて来た。


「いや、良い。それより続きだが、ロクリスのとこにはエーコとナターシャを行かせる。船の手配を頼む」

「それでエルドリアに行くと行っていたのか。船は構わないが……あの二人ならキリ抜けられるんじゃないのか?」


 普通はそう思うよね。なんせ大陸を股に掛けるトレジャーハンターだし。片方女を股に掛けてる奴だけど。え? つまらないって? うっさいわ。

 俺はサンドウィッチの最後の一口を食べた……やはり良い材料なのか美味い。紅茶で口を湿らし再び口を開く。


「あの二人専用の罠だし、考え込まれる筈だ。なんせラフラカの細胞からラフラカの記憶まで読み取れたらしいからな」

「そんな事が……」


 エドが目をきつく瞑り呟いた。この世界にはない技術だもんな。


「だが、なんと言う周到な……我々のほぼ全員を(おとしい)れるとは、とんだ策略家だな」


 さっき俺も似たような事を考えてた。


「じゃあアークはどうするんだ? アークもエルドリアに行くと言っていたが?」

「俺はユキを助けて、その後この戦争の早期終結に動く」

「ふむ。となると残りはムサシか。ムサシはどうするんだ? そもそも何処にいるのか知ってるのか?」

「ムサシはクロード城に監禁されている。そっちの救出の手配は済ませている」

「そうか……迅速な対応感謝する」


 再びエドが頭を下げた。


「だから良いって」

「だが、これは我々の世界の問題だ。アークは、ダークの体を使ってるとは言え、この世界の人間ではないだろ?」

「もうこの世界の人間だぞ。その言葉は侮辱だ」


 ちょっとそれは失礼だぞ。元は他の世界の人間でも、俺はこの世界で生きてるんだからな。


「そう……だな。すまない」


 エドが瞠目したような反応をする。そんな感心する事じゃないんだがな。


「そう言えば、ガッシュは分かるとして何故ダーク、エーコ、ラゴスは、(おとしい)れられないんだ? まあラゴスは当然だがな」


 まあ故人だしな。だが、それが理由ではない。


「ラフラカの記憶を元に計画を立ててるから、ラゴスは亡くなってる事は知らんようだけどな」

「それなら何故?」


 エドが訝しげに聞いて来た。


「屋敷の主の予想では、魔導士の村にいると思っており、閉鎖的だから、直ぐに動けるとは考えていないんだよ」


 そう言えば屋敷の主と言ってるが、名前は何て言うんだろうか? たぶんオドルマンって奴なんだろうけど。


「なるほどな。では、ダークは?」

「ダークは居場所が分からない」

「此処に……って、この歴史では二人いるんだったな。ややこしいな」


 だよねー。フロ〇もそう思う……もとい俺もそう思うぞ。

 それにナターシャがダークに命を狙われてるのも面倒だ。まあこれを話すと更にややこしくなるから、言わないが……。


「まぁガッシュは、一人では何も出来ないと考えているんだろうな」


 流石エド。鋭いな。その通りだ。


「ああ。じゃあそんな訳で今後の予定だが……」


 こうしてエドに今後の予定について話した。準備は着々とだな。今度こそダークを除いた九人全員揃えてやるさ。

 エドと話し終えると俺達はエルドリアに向けて出発した。到着したのは、夜の事だ。


「じゃあ、あたいらは宿屋に行くけどアークは、休まず平気かい」

「問題ない」

「本当かねぇ」

「アークだしねー」


 信用ねぇなぁ。エーコまで一緒になって言ってくるし。


「アークは、四日も寝込んでたんだよ」

「だから、リハビリにちょうど良い」


 それにこれくらいやってのけなければ、あのゾウは、討伐できない。何故なら人数を揃えないといけないからだ。

 ナターシャ、エーコ、エド、アル、ロクーム、エリス、ムサシ、ガッシュ、ルティナ、ユキ。彼、彼女らを生存させ討伐に動けさせる必要がある。

 エドは戦争のせいで、自らの城の事で手一杯になった周回もあった。だから、今回は完全勝利させないといけない。


「アークだから心配なんだよねぇ」

「そうだねー」


 二人とも酷くね?


「エーコが帰りを待っていてくれる限り俺は大丈夫だ」


 歯が光りそうな良い笑顔でサムズアップ。


「バカなのー?」


 また言われたよ。そして溜息と共に続ける。


「は~……何で、わたしかなー? そこはナターシャお姉ちゃんの名前出すとこでしょー?」


 そうなんだけど恥ずいし。


「それがアークだからねぇ」

「ナターシャお姉ちゃんもそれで納得するのはなー」


 そう…それが俺です。エーコはナターシャにも呆れてるな。


「そっちも無理は……いや、問題ないな」


 一瞬二人を案じたが、思い直した。


「何さぁ……心配してくれないのかい?」

「そうだよー」

「心配するとしたらダーク。だが、あの屋敷の島までは来れまい。そして、ロクリス達の救出後はロクーム、エリス、エーコの三人が常にいれば早々手出しは出来んだろ?」

「ダークの件は心配してくれるんだねぇ」

「ああ。貴重な戦力を失うわけにはいかんしな」

「矯正!」


 パッシーンっ!


 またやってしまった。


「戦力としか見ていないのかい!」


 はい、すみません。今のは俺が完全に悪いです。


「は~……やっぱアークだねー」


 エーコも溜息を付き呆れ果ててるし。


「さて……」


 俺はそう呟き、二人を引き寄せ頭を抱き後頭部を優しく撫でる。


「フィックス城で落ち合おう」

「本当に気を付けるんだよ」

「アーク、気を付けてねー」


 そうして二人と別れた俺は炭鉱入口に向かった。

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