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EP.33 二週目以来でした

 意外な来訪者が訪れたが、問題なく次の日の昼頃にはフィックス城に到着した。フィックス城には、あの二人がいる。間に合わなかったら、今回の周回でも厳しくなるだろう。

 来訪者のせいで思わぬ時間が取られ、午前中の便の船に間に合わせる為に急いで港町ニールに移動したら、めっちゃナターシャとエーコに怒られた。マジごめんなさい。

 午後の便で出航するとさ、イーストックスに到着するのは夜になってしまい宿で休むのが必然的に遅くなってしまうじゃん。そうしたら、朝起きれなかったとかシャレにならないしな。

 そして、謁見の間に足を踏み入れた。よし! まだ二人はいるな。気配を感じる。


「エド叔父ちゃん、こんにちわー」


 真っ先にエーコがエドに挨拶をした。


「エーコか……。君は日々美しくなって行くな」

「ありがとー」


 二周目と同じやり取りだな。だが、今回はナターシャもいる。ナターシャも口説くんだろうな。


「やぁナターシャ。君も……おっと首が飛ぶ」


 飛ばさないよ? 何必死に首を守る仕草をしてるの? 態とでしょう? 態とふざけてるでしょう?


「久しいな、アーク」


 ここで、目的の一人に気安く声をかけられた。ああ、二週目以来だな。もっとも知らんだろうが。それ以降は記憶もないし、面倒だから避けたんだよな。


「ああ、久しぶりだなサラ」


 彼女は、サラ=マンデーラ。歴史改変前の第二次精霊大戦の戦いを手伝って貰った。今回は(あるじ)の護衛でフィックス城に訪れていた。


「それとディーネ王妃もお久しぶりです」


 そしてもう一人。サラの主であるプリセン=ディーネ=イクタベーレ……イクタベーレの王妃だ。

 相手は、王族だし一応お辞儀をした。作法? 知らん。適当に頭を下げておけばええだろ。どっかのクズ王と違って、この人は文句言わないだろうし。


「お久しぶりです、アーク。一年半ぶりくらいですね」


 ディーネ王妃が、優雅に微笑みご丁寧に返してくれた。やっぱりどっかのクズ王とは大違い。嫌な顔一つしていない。それに気品があって良いね。

 おっと、あまり見惚れてるとナターシャに怒られるな。


「はい……。再会して早々ですが、お帰りですか?」


 確かこの二人は直ぐ帰った筈。


「ええ。此度の交易は滞りなく」

「大変申し訳ないのですが、また(・・)サラを貸して頂けませんか?」

「また?」


 おっとやってしまった。サラが訝しげに首を傾げる。


「失礼。前回は歴史改変前だったな」

「ああ。そう言う事か」


 サラが納得し頷いた。


「それでサラを借りると言うのは、どう言う事でしょう?」


 ディーネ王妃が尋ねて来る。


「力を貸して欲しいのです。対価は……悪いがエド、払ってくれないか?」


 ごめんなさい。無茶ぶりです。事情も分かっていないのに、いきなり振られても困るよね。一瞬呆けた顔しちゃったし。


「内容によるな。まずは説明してくれないと」


 ですよねー。


「例の屋敷を調べた結果とだけ今は言えば良いかな?」

「ふむ」


 エドは暫く黙考し、やがて口を開く。


「わざわざ部外者に頼まないといけないような事だったのか?」

「ああ」

「分かった……。ディーネ王妃、如何でしょう?」


 エドはディーネ王妃に向かって問い掛ける。


「具体的には、何をさせるのですか?」


 と、今度はディーネ王妃が俺に問い掛けた。


「端的に言えば護衛。それと宜しければディーネ王妃にも少しだけ手伝って頂けませんか?」

「わたくしには何を?」

「前に俺を飛ばしてくれた場所にサラを転移させて欲しいのです。そこからのが護衛対象の居場所に近いですから」


 ロクリスのアジトの南の海岸がその場所だ。


「なるほど……分かりました」


 そう言ってディーネ王妃は、サラの方を向く。


「サラ、良いかな?」

「ディーネが良いなら、私は構わないぞ」

「承諾しました。対価の方はサラが帰って来た際に詳しく聞き、その後に決めると言う事で宜しいですか?」


 ディーネ王妃がエドの方を向き言った。


「それで構いませんが……先に取り決めしなくて宜しいのですか?」

「この一年の間にエドワード国王の人となりは、理解しているつもりです。悪しき王でないと」


 おお。信頼されているな。


「ははは……これはありがたい言葉です」


 エドが朗らかに笑う。


「尤も口説き癖は玉に瑕ですが」


 だよねー。俺もそう思うぞ。


「レディを口説くのは礼儀ですよ」


 また言ってるよ。


「それでアーク。誰を護衛するのだ?」

「ルティナとその家族十人程だ」


 そう言うと気を利かせてかエドが衛兵に地図を持って来させる。ちなみに正確な人数なんて知らん。そこまで覚えてないし。


挿絵(By みてみん)


 俺は地図のルティナの家の場所を指差す。


「此処に家がある」

「ふむ……だが十人程いるとなると、一人では厳しいだろ?」


 ごもっとも。


「問題無い。ルティナ自身戦えるし、ルティナの家に行く途中サバンナを通るだろ?」

「サバンナ……ああ、ガッシュか」


 得心行ったと言う感じで頷く。

 歴史改変前のサラに歴史改変後のサラとガッシュを引き会わせて欲しいとか頼まれたんだよな。そして、その通りに会わせた。

 歴史改変前のサラは、ガッシュと模擬戦をさせたがっていた。その理由はガッシュの立体軌道をパクる為に。結果、サラ愛用のサンダーランスで簡易版の立体軌道を可能にした。よって、サラはガッシュと面識がある。


「そうガッシュだ。三人いればなんとかなるだろ?」

「それなら、そこまで難しくないな」

「ただチェンルでルティナとガッシュとは別れて欲しい」


 俺はチェンルを指差す。そして、次にイーストックスを指差した。


「そして、船でイーストックスに移動し、ルティナの家族をフィックス城まで護衛して欲しい。ちなみにイーストックスからは、フィックス兵数人が護衛に加わるから厳しくないだろ? エド構わないか?」


 フィックス兵の事なのに勝手に決めてしまうのはまずいと思いエドに聞く。


「構わないぞ」


 流石エド。寛容だな。どっかのクソクズ王と大違い。


「ふむ。承知した」


 サラが了承してくれたので、話を煮詰める為にもっと詳しく話した。それにナターシャから動物除けのお香と魔物除けのお香を渡される。

 ただ、魔物に変異する直前はどっちのお香も効かないんだよな。確りそこも説明した。

 あと、あれだな。ガッシュに俺をダークと呼ぶなと伝言を頼んだ。他に細々とした事を話すと直ぐに発ってくれた。


「ふ~」


 エドが王座に座り大きく息を吐き脱力した。

 サラ達がいる時は王の威厳なのかキリっとしていたが、やはり話が大き過ぎて一気に力が抜けたのだろう……。無理もない。


「さっきの話は本当なのか? ……いや、本当なのだろうな」


 信じれないと言うより信じたくないと言う感じか。


「事実だ。あの屋敷を調べて分かった事だ。他にも色々な」

「他にも?」


 エドは王座で頬杖を突き暫く考える。やがて口を開いた。


「詳しく話してくれるか? ああ、そう言えば昼食がまだだったな。アーク達も摂るか?」

「頂く」

「ご馳走になるー」

「ご相伴に預かるさぁ」


 俺、エーコ、ナターシャと頷く。


「ふむ。私は色々やる事があるから、軽めにするがアーク達はどうする? 確り摂るか?」


 王となれば忙しいのだろう……。更にこれから戦争が始めると言えばてんやわんやだろうな。


「俺達はこの後、エルドリアに向かわないといけないから軽くで良い。ナターシャとエーコもそれで良いか?」


 がっつり食べてエルドリアの道中、お腹痛くなったとか目も当てられないしな。それに軽めでも、食料がまだまだ高いご時世なので有難い。


「わたしも軽めー」

「あたいもだねぇ」

「分かった……では、食堂に移動しよう」


 そう言ってエドは立ち上がり食堂に向かおうとする。


「待て。その前に西の国境を固めるように兵に指示を出しておいた方が良いぞ?」


 それを俺が引き留めた。

 国境と言ってもたぶんツートックスではない。ツートックスに兵を大量に連れて行くと住民を怖がらせるだけときっとエドは思っているだろう。よって、その手前にある砦に兵を集中するのではないかと、俺は予想した。


「ん? ……国境? 何でまた?」

「明日アルフォンス国が戦争を仕掛けて来る」


 端的に説明した。それを言った瞬間エドの肩がガクっと落ちる。


「は~~~……勘弁して貰いたいな。じゃあその話も昼食を摂りながら詳しく聞こう」


 溜息が凄いな。まあ当然か。戦争とか面倒でしかないと考えているしな。


「分かった」

「おい! 聞いていたな? 国境の守りを固めろ」

「はっ!」


 側にいた衛兵に声を掛けると衛兵は、直ぐさまどこかへ行った。


「では、今度こそ食堂に行こう」


 そう言ってエドは食堂に向かって歩き出した。

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