表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/569

EP.32 ここからピース埋めを開始しました

 よし! ここからだ。パシンパシンと頬を叩き気合を入れる。ここから反撃だ。記憶も蘇った事だし今度こそ、この繰り返しを脱却するぞ。

 とりあえず俺は、いつも目覚めるクイーンサイズのベッドから出て縁に座る。まずはエーコが登場っと。


「あ! アーク、目覚めたんだねー」


 はいキターーー。


「おはようさん」

「おはよー。それで大丈夫ー?」


 エーコが心配そうに俺の顔を覗き込んで。


「おお! バッチリだぜ」


 サムズアップして見せる。


「顔怖いよー? ほんと平気なのー?」


 おっと顔に出ていたか。これからの事を考えていたら、難しい顔になっていたのだろう。ここはおどけて見よう。


「エーコの顔は……可愛いぞ」

「は~」


 溜息をつかれた。何故だ? 解せん。

 さて、次はナターシャ来る番だな。


「あ、アーク起来たのねぇ。良かった」


 はい、来ました。


「ナターシャ、ちょっと来てくれ」


 手招きする。


「どうしたのさぁ?」


 目の前まで来た瞬間、腕を引っ張り引き寄せる。 そして抱きしめた。


「……愛してる」

「ななな……い、いきなりどうしたのさぁ? 今まで言ってくれなかったじゃない」


 めっちゃ狼狽えているな。こんなナターシャも新鮮だ。まぁ時間逆行してる間、ずっと苦労させたしな。尤も覚えていないだろうけど。

 ナターシャは未来永劫同じタイミングでダークに殺されていた筈だ。だから、今度はきっちり守るんだって強く想い抱きしめる腕にも力を籠める。そして、だからこそこの言葉を言いたくなった。


「どうしてわたしがいるとこで、そう言うことしてんのさー」

「エーコもおいで」


 ぶーたれているエーコも手招きした。そして、エーコも抱きしめる。


「エーコ、愛してる」


 やがて二人を離した。


「一体どうしたと言うのさぁ?」


 ナターシャが怪訝そうな顔で聞いて来た。


「まあともかく四日も心配かけた」

「何で四日寝てたと分かったの?」


 あ! 失敗した。時間逆行の事を話しても仕方ないよな。いや、でもどこかで話さなきゃいけなくなるかも。

 どっかでボロが出て、不審がられるより話しておいた方が良いだろう。明日にでも詳しく話すか。


「まあちょっといろいろあってな。それはともかく明日から忙しくなるぞ」

「明日がどうしたのー?」


 エーコが小首を傾げた。


「……第三次精霊大戦」

「「っ!?」」


 それだけ言うと二人は体をビクッとさせる。特に第一次精霊大戦の真っ只中にいたエーコは特にだ。


「それが起きるかもしれない。あの屋敷を調べて分かった事だ」

「なんだってー? じゃあ早くエド叔父ちゃんに伝えなきゃー」


 エーコが慌てたように言う。


「そうだな……まあ明日詳しく説明する。その後、フィックス城に向けて出発だ」

「分かったさぁ」


 ナターシャが頷く。


「そう言う訳で、俺はまだ疲れが残ってるようだ。だからもう一眠りさせてもらう」


 そう毎回繰り返す中でこの後、強烈な睡魔に襲われるんだよな。


「そうだねぇ。じゃあアーク、おやすみ」

「おやすみー」


 二人とも部屋から出て行き俺は再び眠りについた。

 翌朝二人に朝食を摂りながら説明を開始する。さてどこから説明するか。ゾウ攻略のピースを埋める為にまずはあれかな。


「まず二人にやってもらいたいのはロクリスの救出だ」

「二人がどうしたのー?」


 真っ先に反応したのはエーコだ。


「精霊大戦を引き起こそうとしてる奴は、十一人の英雄の存在が邪魔なんだ。だから、あっちこっちで面倒な事をやらかした」

「それならロクーム叔父ちゃん、エリスお姉ちゃん以外も大変なんじゃないのー?」

「そうだな」


 エーコの言葉に俺は頷く。


「それならわたしとナターシャお姉ちゃんは、手分けした方が良いんじゃないのー?」


 最もな意見だな。だが、ナターシャを一人にするわけにはいかない。


「問題ない。誰がどのタイミングで、大変なことになるか把握している。他の人にも頼ることになるけど俺に任せて欲しい」

「あの屋敷で、そんな詳しい事まで分かったのかい?」

「いいや」


 今度はナターシャが聞いて来た。それに対し俺はかぶり振る。

 さて、アレを話すか。信じて貰うのに時間が、かかりそうだな。


「実は俺は何度も同じ時間を繰り返してるんだ」

「「はいっ!?」


 二人とも急に胡散臭い物を見るような目になった。分かってたけど地味に傷つくなぁ。


「それで俺は四日寝てたと、分かったんだ」

「あんた本当大丈夫かい?」


 ナターシャに問われる。やっぱり信じて貰うのは直ぐには無理だよな……。

 このままだと俺がタイムリープしてる話は、なかなか信じてくれないだろうし、ちょっと他の話からして行くか……。


「だが事実だ。それはともかく今回の首謀者なんだが……とんでもないものを生体実験で作り出した」

「とんでもないものー?」


 エーコが首を傾げる。どう説明しようか。これが説明が一番難しいかもな


「ああ。ソレが討伐されると討伐される前に時間を遡らせると言う能力を持っている」


 こんな説明で分かってくれるかな?


「そんなんどうやって倒すって言うんだい?」

「そうだねー。倒してもなかったことに、されちゃうんだもんねー」


 おろ? 意外にも二人とも直ぐに理解したな。あーそうか。 二人とも歴史改変の記憶を微妙に持ってるんだったな。 お蔭で多少は、耐性があるのだろう。


「それなら問題無い。弱点は分かっている。それで話を戻すが、俺は何故か時間が遡っても記憶を保持していたんだ。そのせいで誰がどのタイミングで危険な事になるか、分かっている」


 こんな説明でどうだろうか……?


「にわかには信じがたいな」

「そうだねー」


 まあそうなるよな。毎回これを信じて貰うのに苦心する。

 ナターシャは、考え込むように無言で立ち上がり食後のお茶を用意し出した。


「それなら今までは、上手くいかなかったのかい?」


 そして、用意したお茶を口に含みそう聞いて来る。


「実は俺は、あの爆発で記憶をなくしていたんだ」

「「えっ!?」」


 二人が驚き目を丸くする。


「まあそれで自分の事で精一杯で、上手く行かなかったんだ。それにナターシャには大変な事をさせてしまった」

「あたいは、何をしてたんだい?」

記憶復元魔法(メモリー)の習得に専念していたんだ」

「なるほどねぇ。確かにアークの記憶ないとなれば習得しに行くだろうね」


 お! 少しは信じてくれて来たかな?


「ただ繰り返す度にダークに殺されたんだ」

「えっ!? 何でダークにー?」


 エーコが、これでもかと言う程、目を剥く。そりゃ実父だしな。俺のような紛い物ではなく。


「俺が、あの屋敷を調べたからだ。その俺は爆発で死んだと思われ、なら()にいる奴を殺してやると、屋敷の主が短絡的な考えをしたんだよ」


 流石に大事な人(・・・・)とは恥ずかしくて言えない。ちなみにダーク情報。


「いい迷惑だねぇ」


 ナターシャ嘆息する。


「それでダークが雇われたんだねー」


 エーコが少し沈んだ感じで言って来た。やるせないと思ったんだろう。まあ実父だし、そうなるか。


「それにしたって恩知らずだねぇ」


 ナターシャの呟く。その通りだと思う。瀕死のとこを助けてくれて、ずっと治療してくれたってのにな。まあダークからすれば死にたかったのだからいい迷惑か。


「だから二人は一緒にいて欲しいんだ。エーコがいれば、ナターシャが襲われてもなんとかなるだろう?」

「分かんないけどー、説得してみるよー」

「分かったさぁ」


 二人とも納得してくれて、話に一段落ついた。 さて次は何を話そうか……。

 いや、そろそろ出た方が良いな。フィックス領行きの船の午前中の出航に間に合わない。道すがら話せば良いか。


 コンコン!


 そう考えていたら玄関から、ノックされる音がした。あれ? おかしいな。この時間、誰か来るなんて事は、今までなかったぞ。


「誰だろう? 見てくるねぇ」


 俺が考え込んでいるのをよそにナターシャが玄関に向かった。まさかダーク? いや、それにしては早い。それにダークも繰り返してるならナターシャを襲う理由はもうない筈だ。

 いずれにしろやばいかも? 何でナターシャを行かしてしまったんだろう……。

 俺も席を立ち上がった。今までに無い展開だからこそ俺が見に行くべきだった……。


「アーク?」


 そう思っていたらナターシャが、俺を呼びに戻って来た。何事もなくて安堵する。エーコはそんな俺を見て不思議そうに首を傾げていた。


「アークにお客さんだよ」

「俺にぃ!?」


 訝しげに思いながらも俺は玄関に向かった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ