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EP.31 また一つ

 それからルティナと子供達、それにディール夫妻を連れてのノースパラリアへの旅は順調だった。魔物になりかけている狂暴な動物も、ガッシュがいればたまにしか寄って来ないし、寄ってきてもサラ、ガッシュ、ルティナがいれば直ぐに処理出来た。

 やがて動物が魔物に完全に変異した。


「遂に現れたわね」

「ああ」


 ルティナが緊張した声で呟きサラが頷く。

 サバンナ限定だが、ガッシュがいれば寄って来る数は少ないが、動物の時より多い。


「じゃあナターシャ殿のお香を焚こう」


 そう言ってサラはお香を焚始めて。

 その瞬間、ガッシュは反射的にお香をひったくり遠くへ投げてしまう。


「ぬ! ガッシュ、何をするのだ?」

「はながまがる、はながまがる」


 ガッシュに鼻が曲がる程の匂いだったようだ。残念ながら魔物避けのお香は無駄になってしまう。

 動物避けも魔物に変異する直前では、役に立たず。魔物避けはガッシュが嫌った。ナターシャのプリズン家秘伝のお香も形無しだ。


「そうか……仕方ない。ルティナ、ガッシュが匂いがダメらしいからお香は無しだな」

「そうね」

「まぁ寄って来るのは大した数じゃないし、魔物に変異する直前の動物は寄って来なくて助かったしな」

「ええ。それに比べれば魔物相手にしてる方が良いわね」

「と言うわけだ、ガッシュ。匂いがダメなら確り護衛をし、子供達を守るのだぞ」

「わかった、わかった」


 まぁ護衛しながらでも対処できるし問題無い。三人も戦える者がいるのだ。と、サラはそう思う事にした。

 実際多少強いのがいても、サラ達の誰かが対処出来た。やがてノースパラリアに到着し船でサウスパラリアに渡った。

 サバンナを抜ければ更に魔物など問題にならない。何故なら強力な魔物程サバンナに集まるのだから。

 尤も魔物が寄って来ないと言うガッシュの特性を活かせるのは、サバンナだけなのだが。まぁそれでもサバンナ程、強力な魔物はいなし、サバンナ程数も少ないので問題にはならなかった。


挿絵(By みてみん)


 が、チェンルを目指す時に変わったものを発見した。


「なんだあれ? なんだあれ?」


 ガッシュは指差す。


「あれがゾウとやらなのか!?」

「………小さい」


 それを見てサラが目を丸くし、ルティナがボソっと呟く。ガッシュが指差したのは全長100mくらい大きな六本足の生物。ゾウだ。それが少し離れた場所にいるのが見えた。


「サラ、あれがなにかしってるのか? なにかしってるのか?」

「ああ。あれが今回の魔物騒動の原因らしい。あれの討伐でチェンルに集まる事になった」

「………」


 ガッシュは、それを聞いて驚くが何故かルティナが大人しいかった。


「ルティナは驚かないのか? あんなバケモノなんて今までいなかったんだろ?」

「へっ!? あーえっと、驚いてるよ? うん、驚いて言葉が出なかったの」

「……そうか」


 ルティナは取り繕うように言ってるようにしか思えない。まるで知っていたかのように……。それでもサラは、それ以上聞かなかった。

 やがてチェンルに向かう途中の道で野営の準備を行いサラ、ガッシュ、ルティナで焚火を囲む。


「私が頼まれたの十日以内にルティナ達をチェンルと言う町に連れて行く事だったけど、まだ八日しか経っていないな。明日には到着できそうだし、あとは特に期限もなくゆっくり子供達やディール夫妻をフィックス城に連れて行く事だ。私の役目もこれで終わりだな」

「サラは戦わないの?」


 サラがしみじみ言い出し、ルティナが問い掛けた。


「うむ。欠員が出ない限りは私の役目は終わりだな」

「そう……残念ね。サラは強いのに」

「その方がこの大陸に取って良いと思うぞ。私に頼った事でエドはディーネに貸しを作ってしまった。これ以上、貸しを作ると資源が更に困窮する事になるだろう」

「うーん。確かにね。サラは元々外交の橋渡しだったしね」

「うむ。そうだな。ただこの歴史での情報源はルティナではなくアークだったがな」


 苦笑いを浮かべるサラ。


「そうなの?」

「ルティナの家でも少し話したが、アークが困っていてな。交換条件で助けたのだ。その時に洗いざらい喋って貰った」

「へ~……あ! サラって確か魔晶石渡していたわね」

「らしいな。それで呼び出された時は正直驚いたぞ。あれは今ではいくつかあるが、当時は一つしかなかったのにアークが、まったく同じ物を持っていたのだからな」


 そう歴史改変前にサラがアークに『どうしても立ち行かぬ事になったら使ってくれ』と言って渡したのだ。

 それは魔力を流すとディーネ王妃に伝わると言った代物。それによりアークの居場所がディーネ王妃に分かり、結果としてアークはディーネ王妃に救われたのだ。


「ふふふ……歴史改変するとそう言う事もあるわよね」

「まったくだ。最初は混乱したぞ。ははは……」


 そう言って二人は楽しそうに笑う。ガッシュは話に付いて行けず端で少しイジけていたが、気付言え貰えない。哀れ。

 そうして次の日、チェンルに到着したので、サラは船着き場に足を向けながら振り返り、ルティナとガッシュに声を掛ける。


「これでお別れだな」

「ええ、サラ。ありがとう」

「またな、またな」


 ルティナとガッシュも別れの言葉を掛けた。


「ああ、生きていたらまた会えるかもな。なかなかこの旅は面白かったぞ」

「機会があったら、私の家に遊びに来て」

「そうさせて貰おう。ガッシュも世話になった」

「チキンありがとう、ありがとう」

「ではな」


 そうしてサラはルティナの家族を引き連れて船着き場に向かった……。


 これでまた一つピースが埋まった。このユピテル大陸が救うピースが。いや、正確にはこの星々の(スターライト)世界だ。

 例のゾウは、ユピテル大陸に出現したと言うだけで、放置すれば他の大陸に移動を開始するであろう。そして討伐すれば時間の牢獄に囚われてしまう。現に今がその状態だ。それは即ちこの世界の未来が失われた事を意味する。


 そして、時は始まりの日に戻る。始まりの日と言うのは少し語弊があるか。始まりと言えば時間逆行が起きる起点となる日なのだが、この『始まりの日』とはアークが目覚めた日を意味する。


 全てはそこから始まる。星々の(スターライト)世界を救う全てのピースを埋める為の戦いが……。

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