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EP.30 意味深なルティナ

 サラはサバンナに入るまでは順調だった。ナターシャに貰った動物除けのお香のお陰で、襲って来る動物がほとんどおらず、退屈なくらいだった。

 しかし、事態はサバンナに入ってから一辺。お香の効果が無く次々に動物が襲って来た。アークにはサバンナでは、恐らく効果がないだろうと言われていたが、その通りだったのだ。

 そこにサバンナで育ったガッシュが来た事で、襲って来る動物は少なく、その後は順調にルティナ殿の家を目指せた。

 サバンナに入り二日掛かったが、ルティナの家に到着する。フィックス城を出発して四日目だ。尤もディーネ王妃が、転移魔法(ソウテン)で、サウスパラリアの近くまで飛ばしてくれなければもっと掛かっていたであろう。


「はーい」


 サラがルティナの家をノックすると透き通るようなブルーの瞳をした女が出て来た。ルティナ本人だ。

 作り物のような美しい瞳だな。と、サラは内心感嘆する。


「えっ!? サラ?」


 ルティナが驚く。それ以上にサラが驚いた。何故なら……、


「何故私を知っている?」

「ルティナルティナ。ひさしぶり、ひさしぶり」


 サラの問いに答えて貰う前にガッシュが割り込んで声を掛けた。


「え? ガッシュも? えっと……久しぶりね」


 何だ? 突然の来客に驚くのは分かるが、様子がおかしい。と、サラは感じる。

 何故かルティナの視線があっちこっちに彷徨う。


「お主がルティナ殿か? 何故私の事を知っているのか知らぬが、アークに頼まれ事があってな。すまぬが家に入れて貰えぬかな?」

「アークに? だから二日早い? ……分かったわ。どうぞ」


 意味深な言葉にサラは首を傾げつつも家に入る。

 ルティナの家にいる子供は五人。もう一軒家が並んでるので、そっちには数人いるだろうと、サラアは護衛対象を確認。


「ガッシュ、悪いが私はルティナ殿と話がある。子供達と遊んであげてくれないか?」

「分かった、分かった」


 サラはルティナに部屋の椅子を勧められ腰を掛けると口を開いた。


「それでルティナ殿。何故私の事を知っている?」

「あーえっと……どう言えば良いか……」


 ルティナが考え込み出す。


「そのまま事実を話した方が良いかな? 信じて貰えないかもしれないけど前の歴史で私達は出会っているの」

「なぬっ!? ならお主は前の歴史の事を覚えているのか?」


 サラは驚愕に目を剥く。


「えっ!? サラも?」

「私はアークから聞いた」

「アークは、そんな信用できるかも分からない話をしたんだ……あ! ディーネ王妃の時空魔法があるから話しやすかったのかしら?」

「アークが困っていてな。交換条件で前の歴史を洗いざらい話して貰ったのだ。してお主は?」

「実は私、人間と精霊とのハーフなの」


 今は精霊の力はないが、前は精霊の力があったので、その力で恐らく記憶が残っていたのだと言う。サラは驚くべく話に目を丸くするがそれだけだ。その対応がお気に召したのかルティナの顔が緩む。


「ふふふ……」

「いきなり何だ? ルティナ殿」

「ごめんなさいね。前の歴史でも驚いていたけど変な目で見てこなかったから、歴史は変わってもサラはサラなんだなって」

「私は覚えておらぬがな」

「あ、あと前の歴史では、呼び捨てだったの。殿は止めて欲しいわ」

「うむ。分かったルティナ。それで本題だが、もう直ぐ魔物が出現し出す」

「………」


 穏やかの雰囲気だったのにルティナが無表情になり、何かを考え始める。


「……驚かないのだな」

「う~ん。何て言うか感? 匂い? 気配? まぁそんな感じので薄々感じていたから」


 それはまた随分あやふやだな。精霊とのハーフとの事だから感が鋭いのか。と、内心納得するサラ。


「それで本当なら今日買い出しから帰って来る予定だったんだけど二日早く出発したんだ。今は動物が前より狂暴化してるでしょう? 明日にでも家を出ようと思ってたのよ」

「予定通りの買い出しだったら危険だったな」

「それにサラのが先に来ていて会えなかったかもね」

「家を出ると言うなら話が早い。実はアークから頼まれてな」

「そう言えば、さっきもそんな事言ってたわね」

「何でもこの家の周辺に魔物を誘き寄せるものを仕掛けた輩がいるらしく、ルティナの子供達を護衛してフィックス城に連れて来て欲しい、と」

「誘き寄せる? だから……いや、それは助かるわ。ありがとう」


 だから? またルティナがよく分からぬ事を……。もしかしたら前の歴史とかか?それとも何か隠している? と、内心訝しむサラ。


「そう言うわけだから直ぐ発てるか?」

「えっ!? 今はまずいよ。明日の早朝が良いと思うわ。魔物になるギリギリのタイミングの方が」

「何故そのタイミングが分かる?」

「感と言うか匂いと言うか気配と言うか……」


 考えるように言う。また曖昧な言い方だ。


「まぁ良い。何故魔物になるギリギリのが良いのだ?」

「動物除けのお香が効かないから」

「あー確かに……が、それならガッシュがいるから平気だ」

「えっ!? そうなの? ガッシュ!」

「なんだ? なんだ?」


 目を丸くし驚いたようにガッシュに問い掛けるがいきなり振られ、聞き返す。

 と言うかお主は何をやってるのだ? と、サラは目を剥く。と言うのもガッシュは逆立ちをして、足に子供を乗せていたのだ。

 危ないくないのか? ルティナも止めないのか? と、サラは思う。


「ガッシュがいれば魔物になる直前の動物は寄って来ない?」


 ルティナが言い直す。どうやらルティナはガッシュの奇行を止める気はないらしい。


「まったくではない、まったくではない。ほとんどだな、ほとんどだな」

「そう……なら早く出ましょう。サラ、準備するから待ってて」

「分かった」


 そうしてルティナは急いで準備をして家を発つ事になった……。

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