EP.28 永別
「ユキはこの部屋で良いかしら? 一緒に寝たいかしら」
休むにしても何処で寝れば良いかユキが尋ねようしたら、パルサにニッコリ笑ってそう言われた。
魔物相手にそんな事言うなんて変わってるな。と、ユキは思う。それにユキは……、
「……ユキは雄ダルマ」
「魔物なのに人族に変な気を起こすのかしら?」
「それはないルマ」
「じゃあ今日は、このフカフカにくるまりたいサ」
そう言ってルマの毛皮に顔を埋める。
「は~~気持ち良いサ」
「………」
対応に困り、アルフォードに助けるを求めるように視線を向けた。
「がははははは……ユキ、良かったな」
良くないよ! と、目を剥く。
「それにユキなら変な気を起こしても良いかしら」
さっきから何言ってるの? と、アルフォードにどうにかしてくれと視線を送る。
「タケルに言いつけるぞ」
「それは止めて欲しいかしら」
パっとユキから離れる。
「がははははは……ユキ、困ったらタケルの名前を出してやれ」
「止めて~~~~サ~~~」
パルサが絶叫を上げた。
そう言えば、ここに来た時にタケルって人間の名前を出していたな。誰なんだろう? と、一瞬考えたユキだが、とりあえず頷ておこうと判断した。
「分かったルマー」
「ユキも分からないで~~~~~~」
再び絶叫。煩いな。と、ユキは顔を歪ます。
「じゃあ俺は休ませて貰うぜ」
アルフォードは、そう言うと立ち上がり自分の部屋が取ってる部屋に行こうと扉の方へ向かう。
「待って、今のうちに頸椎に付けた装置を外すかしら。後ろ向いてて」
パルサはアルフォードの頸椎についてるネットと脳を繋ぐ装置を外した。次にユキについてる方のも外す。
その後、アルフォードは部屋を出て行った。
「ユキ、もっと抱き着いて良い?」
かなりユキの毛皮がお気に召したようだ。
「……タケル」
「ガーーーン、サ」
タケルの名前を出したら何故か絶望的な表情をし出す。
「……分かったルマ」
「ありがとうサ」
渋々了承すると、再び毛皮に顔を埋めらる。
本当に変わってるな。いくら当然変異でも魔物相手にこんな事するなんて。と、ユキは思う。
その後、少し話して本当に一緒に寝る事になった。
自分は抱き枕じゃないんだけどな~。と、内心嘆く。
そして次の日、アルフォードとユキはパルサの転移魔法で次元転移装置の前まで送って貰う。
これでお別れだ。たった二日の付き合いだったけど、少し寂しいかもな。と、ユキは感傷に浸る
ちなみにお土産にレモンティーのパックは大量に持たさていた。
「じゃあ寂しいけどこれでお別れサ」
「がははははは……また会えるだろ?」
パルサがしんみり言うとアルフォードが豪快に笑い飛ばす。
「残念だけどタケルが帰って来たら、この次元転移装置は破壊するかしら」
「……そうなのか。それは残念だ」
アルも少ししんみりし出す。
「じゃあ最後にえ~~~い、サ」
「ルッマーっ!?」
相当お気に召したようだ。再びユキの毛皮にくるまる。
「ふわ~~気持ち良いサ」
「がははははは……ユキ、モテるな」
「笑い事じゃないルマーっ!!」
「じゃあアルにも……」
そう言ってアルにも抱き着いた。が……、
「ムキムキ、おえ~~~!!」
直ぐに離れて後ろを向き、おえおえし出す。哀れアルフォード。
「おい!」
アルがすかさず突っ込む。
「ごめんごめん。冗談かしら」
そう言って再びアルに抱き着く。
「アル」
「何だ?」
「約三ヵ月本当にありがとうかしら」
そう呟く声は涙声でだった。それだけの友好関係を築くのに三ヶ月と言う時間は十分だったのだろう。永遠の別れとなれば尚更感傷的だ。
「もう何度も聞いたぞ」
アルフォードはそう言ってパルサの頭を優しく撫でる。約三ヵ月も一緒にいたからのか二人は気安い。
「最後くらい……なさいかしら」
「何だって?」
ボソっと呟き、聞こえなかったので、アルフォードは聞き返した。
「だから、最後くらい耳を撫でなさいかしらっ!!」
顔を真っ赤にして叫び出す。
「は?」
アルフォードは、何故そんな事を? と、不思議に感じ間の抜けた声をあげた。
「……あたし達の種族は親しくなった者に耳を撫でて貰いたいものなのサ」
「そう……なのか?」
アルフォードは首を傾げつつ耳を撫で始める。パルサは気持ち良さそうに目を細めた。
「じゃあこれで、本当にお別れかしら」
そしてゆっくりアルフォードから離れる。
「おお……元気でな」
「アルもサ」
「パルサ、さよらなルマ」
「うん、ルマもバイバイかしら」
パルサは手を振って見送り、アルフォード達は次元転移装置をくぐった。
こうして一つの物語が終わり、これがまた新たな物語の始まりでもある。全てはアルフォード達の世界の異変を解決する為に。それに必要なピースが一つ埋まった……。