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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第一章 ファースト・ファンタジー・オンライン
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EP.13 武器を貰いました

 食事を摂り終わるとナターシャちゃんは流し台に食器を漬け、仕事があると調合室に入って行った。

 その前に俺に服だと言って紙袋を渡された。現在全身包帯だしな。さて中身は……、


「ズボンとシャツが三セットに下着が三着」


 下は黒で上は紺……地味じゃね? それとこれから寒くなるからだろうか、暖かそうな上着が一着ある。

 下着まで買って来ちゃってぇ。恥ずかったんじゃね?

 それにこれ新品じゃね? 中古服で十分なんだが、ナターシャちゃん随分奮発したな。自分はツギハギだらけのボロしか着てないのに。


「これは感謝を込めて洗い物でもしないとな」


 俺は流し台に向かい、夕食の食器を洗い始める。まだ体痛いけどこれくらいならまぁ……。


 水がジャバジャバ流れる音の中、時折ギコギコという音が聞こえる。薬を作る際のすり鉢を使っているのだろう。名前は知らないが左右に持ち手がある円盤のようなもので、すり潰している音だ。

 この体は暗殺者だけあり、耳が良いんだよな。それに気配察知の上位互換の気配完知を持ってるので息遣いも感じる。


「よし! 終わった」


 ん? 音が止んだな。それに息遣いが規則正しくなっている。寝落ちしたか?

 気になり、調合室に入った。やっぱり寝落ちしてるな……。


「にしてもナターシャちゃんって綺麗だよな。すっぴんなのに惹きつけられる」


 つい寝顔を覗いてしまう。だが、そんな事より風邪引いてしまうしベッドに運ぶか。


「うほ~~……女って柔らけ~~」


 腰に手を添えてけしからん事を考えてしまった。


「………」


 しかし、そこから先に進めない。このまま抱き上げベッドに運ぶだけ。なのに抱き上げる事ができない。別に体中が痛むわけじゃない。勿論痛みはあるが、人一人運べないわけじゃない。

 胸が締め付けられる。例えようのない感情が爆ぜる。


「ああ……そっか。やっぱり、俺はここにいちゃけないんだな……」


 小さく息を吐き、毛布を掛けるだけにした。


「完治したら、出て行くからね。おやすみ」


 それから二ヶ月経ち十二月を迎えた。


「ねぇ、そう言えばアークって誕生日いつなんだい?」


 唐突に聞かれた。


「………」

「あ~ごめんごめん。そういうのってあんまり詮索されたくないよねぇ。聞かなかった事にして欲しいさぁ」


 そう言って桃色の双眸を反らし両手を俺に向けて振る。


 いや、誰の(・・)誕生日か考えていただけなんだけどね。俺の? 暗殺者の? アークの?

 まあアークの誕生日ならナターシャちゃんに拾われた日になるのだろうけど、俺はそれ詳しく知らんし、ナターシャちゃんもそんな事を聞きたいのではないのだろう……。

 じゃあ俺の? それも違うな。この体は暗殺者のだ。


「……いや、忘れていただけだ。一昨日だな」


 うん。アークスの誕生日は、もう過ぎてるよ。十二月二十四日だしね。とは言え、公式設定のダークの誕生日は不明。ダームエルが決めてくれた日が誕生日だ。

 何故にイヴを誕生日にするんだとツッコミたいがな。

 それを聞いたナターシャちゃんは、俺の方を向き目をパチクリさせる。そしてややあって口が開く。


「もう過ぎてるのかい。遅くなったけど何か欲しいものはあるかい?」

「武器」


 即答してしまった。もう直ぐで怪我が完治する。そしたら出て行くしな。武器は欲しい。


「武器?」


 コテリと首を傾ける。


「……ああ」

「弓? あたいの一品物だから、上げられないよ?」

「ナイフとか短剣とかで十分。二振りあれば有り難い」


 弓なんて扱えないっつーの。


「わかったさぁ」


 そう言って立ち上がり、部屋を出て行く。倉庫でもあるのかな? 

 出て行くと決めてから、部屋あさりするのは止めようと思い、自分に割り当てられた部屋、調合室、ナターシャちゃんの部屋、そしてこのダイニング以外知らない。

 当然男のロマンを追うのも止めた。


 やがてナターシャちゃんが戻って来て、テーブルにコトっと武器を置いた。短剣とナイフ一振りづつ。


「昔にあたいが使っていたものさぁ。遅くなったけど誕生日おめでとう」

「……感謝する」


 ただ二刀流にするのに長さが違うのは扱い辛いんだけどな。でも、ナターシャちゃんの心遣いに感謝しよう。


「でも二振りってどうするのさぁ?」

「……俺は二刀流だ」

「へ~そうなのかい」


 ナターシャちゃんが瞠目する。


「……これで使いができるぞ」

「そうなれは嬉しいさぁ。でも、その前に……」


 桃色の瞳に睨まれ、一指し指を突き付けられる。


「怪我治しなぁ」

「……ああ」

「なら良し!」


 フッとナターシャちゃんが微笑む。やっぱ綺麗だな~と見惚れてしまう。でも、だからこそナターシャちゃんの顔が曇るとを見たくない……。

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