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EP.19 時空の揺らぎ

 転移したは良いが、ただその場所が広い。いつも狭い通路のような場所で敵が横に三人しか並べない広さだったが今回は十人以上並べるそんな広さに、いつもの機械のような敵の人型が三十体いた。

 それなのに後ろに行かせるわけにはならないのが面倒だな。と、内心アルフォードは思う。

 後ろに行かせると、またリアル側で家が崩れ落ちるので、それは避けないといけない。


《じゃあアル、宜しくサ》


 パルサがそう言うとモニターが消えた。とりあえず正面からだと思いアルフォードは、前を見据え速攻で間合い詰める。


 パンっ!


 顔面を拳で打ち抜いた。まず一。

 続けて回し蹴りで周辺にいたのを薙ぎ払う。二、三、四、五と。

 次の瞬間敵側も動きアルフォードを囲む。左後ろの奴が最初に攻撃し来ると瞬時に見極め左裏拳で粉砕。六と。

 アルフォードの闘気を膜のように周囲に広げ、その範囲にいる奴の行動を把握してるので、機械とは言え動きが丸分かりなのだ。この点はアークの気配察知と違うと言えよう。

 次は真後ろから二体。回し蹴りで薙ぎ払う。七、八と。


《ちょっとアル! いつものオーラバスターはどうしたのかしら?》


 いきなり前にモニターが現れ、パルサが泡を食ったように叫ぶ。


「あれは直線上に闘気を飛ばす技なん……だ!」


 正面にいた二体を粉砕。九、十と。

 尤もちょっとした気弾を連続で飛ばす事も可能だが、無駄にそこまで消費するまでもないとアルフォードは考えた。


「だから狭い通路ならともかく、開けた場所だと……ふん!」


 右後ろから来たのをそっちを見ず右手の裏拳で粉砕。十一。


《……なるほどサ》


 左前に俺は走り、そっちにいた三体を連続で潰す。十二、十三、十四と。


《まずい! アルを無視して個人宅の回線の方へ……》


 アルフォードには闘気による空間把握により感じていた。敵側はアルフォードには敵わないと思って目的だけ済まそうと言う魂胆に出たのだ。が、それは失策でった。都合の良い事に列をなして並んだ。それ即ち……、


「<オォォォラバスタァァァっ!!>」


 十五~二十五消滅と。残り一。

 アルフォードはオーラバスターを放った直後、走り込んだ。そしてオーラバスターを免れた奴に飛び蹴りをかます。三十と。


《まずい事になったサ》


 パルサが神妙に呟く。


「うん? どうした?」

《アルの手の内を知られたかしら》

「ん? 俺の?」

《直線上にしか大打撃を与えられないとバレた可能性があるのサ》


 まぁ確かにそうだが……、


「それがバレるとまずいのか?」


 と、首を傾げる。


《手を打ってくるサ》

「それは分かるが、オーラバスターを使わず処理出来るだろ? さっきみたいに」


 実際半分はオーラバスターを使わずに戦った。それにその気になれば、ちょっとした気弾を連続で飛ばす事も可能である。


《例えば二ヵ所同時襲撃して両方オーラバスターが有効じゃない場所だったらどうするかしら?》

「あ!」


 そこでアルフォードも今回の戦闘は失敗だと気付いた。無駄消費でも気弾を連続で飛ばせば良かったのだと。

 圧倒的に力でねじ伏せれば、パルサの予測してる事は起きない可能性があるからだ。仮に二ヵ所、三ヶ所同時に襲撃を受けた場合、その時になって気弾の連続使用で闘気を切らし戦闘の続行が困難になってしまう。

 尤も後の祭りなのだが。


《気付いたかしら? まぁ結局やれる事をやるしかないんだけどサ。じゃあ散歩の続きをどうぞかしら》

「ああ……ダイブアウト」


 アルフォードは、リアルのベンチに戻って来た。ちなみにリアルに戻る時の呪文はダイブアウトである。

 それにしても二ヵ所同時襲撃か……今までなかったからと言ってこれからもないとは限らないなと、胸中呟く。

 狭い通路ならオーラバスターで一瞬で終わらせてもう一ヵ所にいける。が、オーラバスターが有効ではない場所では時間が掛かり、片方処理してる間にもう片方は守り切れない。前述の通り気弾の連続使用では燃費が悪いので悪手になる可能性もある。


 しかし、それらは杞憂に終わる。いや、杞憂なら良いがそちらに目を向けさせ心経を擦り減らすのが敵の習いなのかもしれない。

 何故ならアルフォードがパルサに雇われ戦い続け、気付けば二ヵ月。全く敵の出方が分からないのだ。

 散歩してる時に戦う事になる場合もあれば、二、三日何も起こらない事もある。かと思えば夜中に叩き起こされ、戦う事もあった。

 その辺りの事をパルサも調べている。それ故、一日中キーボードを叩いていた。


「ただいま」

「おかえりかしら」


 アルフォードが日課の散歩から帰って来ると、アルフォードに目を向けずモニターに集中しキーボードを弾きながら返した。


「今日は何もなかったな」

「それはそれで困るサ。出現場所から本拠地を割り出せる確率が上がるかもしれないのに。二ヵ月が経つけど、ここまで時間がかかるとは思わなかったかしら」

「本拠地を潰すまではと思っていたが、いい加減国に帰らないとまずいかもな」

「そっちも気になるかしら」

「ん? そっち?」


 俺がいた世界がどうしたのだろうか? と、アルフォードは首を傾げる。


「二ヵ月もタケルが帰って来ないのが不思議なのサ」

「殺られたか?」

「……殺すかしら? フッシャ~~っっ!!」


 パルサは水色の双眸でアルフォードを睨み凄まじい殺気が溢れた。しかも猫っぽい威嚇混りで。まぁ猫獣人なのだが。

 尻尾に触れた時は、怒りよりも警戒が強かったが、これは完全に怒りからのものだ。


「タケルが黙って死ぬわけないかしら!」

「悪かったよ。そんな怒るな」

「ふ~」


 パルサは息を吐き、気を落ち着かせる。


「失礼したかしら。でも、仮にタケルが死ぬ事があってもタダでは死なないサ」

「それは道連れに相手も殺るって意味か?」

「そうじゃないサ。死ぬ間際なら、あたしか仲間に必ず連絡を入れるかしら。あたしじゃなく仲間に連絡が行ったとしても、そこからあたしに連絡が回ってくるサ」

「連絡の手段があるのか?」

「そうサ」

「こっちからは連絡できないのか?」

「……………………………普通は可能サ」


 間を開けた後、何か苦いものを口に入れたかのように呟く。


「連絡がつかないのかしら。これはあっちの世界で時空の揺らぎが生じてるのサ」


 時空の揺らぎ? アルフォードには聞きなれない言葉が出て来た。


「どう言う事だ?」

「例えば何らかの手段で過去に行けるとして、過去を変えると起きる現象サ」

「そんな事が……」

「普通は難しいかしら。ただこれが可能だと仮定して、例えばオドルマン博士がそれを実行しようとしてタケルがそれを阻止。この攻防が続くとどうなると思うかしら?」

「悪いがお手上げだ」


 全く理解できずアルフォードは、天を仰いでしまう。


「未来が不確定になってしまうかしら。オドルマン博士が過去を変えた未来とタケルがそれを防いだ未来と二つ存在するサ」

「つまり、どっちになるか確定していない?」

「そうサ。それが時空の揺らぎかしら。これが起きてる世界には連絡できないサ」

「もし、その仮定通りなら、その攻防が忙しくてタケルから連絡してこない、と?」


 過去を変えるとかとんでもない事だ。下手するとラフラカを倒さなかった未来が発生してしまう。

 もしも……だけど、その仮定通りなら是非ともタケルに勝って貰いたい。と、アルフォードは心底そう思った。


「その可能性もあるかしら。時空の揺らぎはそれだけが原因ではないけど、いずれにしろそれが理由でこちらから連絡できないのサ。タケルの方は、単純にオドルマン博士を倒す算段がまだ立っていなくてこっちに帰ってこない、もしくは連絡していないって事もあるかしら」


 つまり時空の揺らぎが発生している世界には連絡できないが、発生している世界からなら問題なく連絡できると言う事になる。


「なるほどな」

「ともかく、期限を決めるかしら。アルはあっちに帰るべきかもしれないサ。タケルが苦労してると言う事は、一人でも多くの戦力が必要かもしれないかしら」

「期限か……どれくらいだ?」

「そうね……二週間程でどうかしら?」

「分かったぜ。あと二週間手伝うぜ」

「感謝するかしら」


 そして、その日は襲撃もなく一日が終わった。

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