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EP.18 パルサは出来る女

「これでだいたいインターネットは理解してくれたかしら?」

「ああ」

「じゃあ今度は敵側の話をしようかしら」


 パルサはアルフォードに基礎知識を教え、やっと本題に入りアルフォード姿勢を正す。


「ああ、聞かせてくれ」

「首謀者はオドルマン博士かしら。研究者でこの世界を思いのまましたいと考えているかしら。平たく言えば世界征服サ」

「これはまたありきたりな」

「そうね。ただこの博士は、狡猾で人を信用していなく研究を誰かに手伝わせたりするが、全貌を掴めなくしてるかしら。そして、この博士がとんでもないものを作ってしまったのサ」

「それは?」

「次元転移装置サ。つまり異世界を渡る扉……アルが通ってきたあれかしら」

「そんなものを作ってどうするんだ?」

「おそらく他の世界の技術を手に入れる為じゃないかしら?」

「俺の世界は文明レベルがここより低いぞ。手に入れるものなんてあるのか?」

「……魔法」


 パルサは神妙な様子で、ゆっくり息を吐き出す。


「あ! さっきこの世界の者は使えないって言っていたな」

「そうサ。もしこの世界の技術力と魔法が組み合わされば、どんな恐ろしい事になるやら……」


 アルフォードは、最初のに会った頃に言ってた話を加味しハッとする。話が繋がった、と。


「つまり世界のバランス崩壊」

「そうサ」

「そして、タケルはそれを阻止する為にあの扉をくぐり俺の世界に今いる」

「それも正解かしら」

「だからあの施設の守護をしてる奴らをタケルが全滅させた」

「………」

「ん? 違ったか?」

「いや驚いているのサ」

「?」


 アルフォードは首を傾げた。


「最初に話していた事を覚えているのもそうだけどサ。君は本当に肉体派かしら?」

「がははははは……考えるのは国を守る兄貴の仕事だ。俺は体を動かすしか脳がないぜ」


 とは言え、実際アルフォードは頭がキレる。知識は体を鍛えるばかりで詰め込んで来なかったが、頭の回転が良いのだ。

 知識は兄エドワードに負けるが、瞬時に答えを出す知恵はエドワードに勝るとも劣らない。


「国を守る? お兄さんは騎士でもやってるのかしら?」

「いや、王だ」

「えっ!? じゃあ君、王子様? いた、王弟かしら?」

「そうなるな」

「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや……見えない見えない。ムキムキでモヒカンが王子様?」


 いやいや言い過ぎにアルフォードは一瞬顔が引き攣る。が、直ぐにいつもの事だと笑い飛ばす。


「がははははは……よく言われるぜ」

「まぁ頭の回転が早いのは説明がはぶけて助かるかしら」

「それで、そのオドルマンとやらは俺の世界にいるんだろ? なのに俺は何を手伝うんだ? いやそれ以前に一般の家を潰してるのは何者だ? それが俺が相手をしないといけない奴なのか?」

「さっきも言ったけど研究の全貌を手伝った人にも教えていないのかしら。だから異世界に渡ったなんて知らないし、必死に行方を調べてるのサ。それはもう一般の家を狙うとか見境がないかしら」

「それは随分信奉しているのだな」

「どうだろうかしら? 世界征服して自分も甘い汁を啜ろうとしてるのか、悪さを今までしてたから捕まりたくなくて悪足掻きしてるのか……いずれにしろ碌な事じゃないかしら」

「そうだな」


 一般の家とか狙うとかほんと碌な奴らじゃないなとアルフォードも同感に思った。


「あたしがタケルに頼まれたのは、オドルマン以外に碌な事をしない奴がいないか監視かしら。その結果、オドルマン博士を探してる連中を見つけたって訳サ」

「なるほどな」

「それともう一つ、次元転移装置の監視かしら。こっちの世界に迷い込んだ人に丁重に帰って貰うように言われたのサ」

「だけど状況が変わり、オドルマンを探してる連中が見つかり戦力が欲しい……と?」

「ほんとに頭の回転が良いかしら。そういう事サ。タケルもこうなると分かっていれば、別の世界から仲間を呼んだかしら」

「別の世界に仲間がいるならパルサが呼べば良いだろ?」


 アルフォードは、目を丸くしつつそう返す。


「次元転移魔法をあたしは使えないかしら。タケルも限定的にしか使えないサ。次元転移は簡単にしちゃいけない禁忌と言えるものサ」


 世界のバランスが崩壊するから、か。そんなものをほいほい使えたらさまざまな異世界に侵攻できるな。と、アルフォードも直ぐに理解出来た。


「それでどうかしら? 手伝ってくれないかしら?」

「良いぜ。俺の世界では大きな大戦があってな、資源不足なんだ。鉱石とか少量でも貰えれば兄貴も喜ぶだろう」

「感謝するサ。その報酬も忘れていないサ。じゃあ早速宿をもう一部屋取るサ」

「確かに話すのは同じ部屋で良いが、寝るのは別のが良いな」

「アルは弁えてるサ。これも驚きかしら」

「がははははは……ちょいちょい俺を悪く言っていないか?」

「気にしないサ」


 と言う割にアルフォードは、笑って流しパルサはパルサは悪びれた様子が全く無かった。

 そんな話をし、アルフォードははパルサを手伝う事になる。宿を別に取ってもらい、その日は、その部屋で直ぐに寝た。

 頭がだいぶ疲弊していたからだ。小難しい話ばかりしていたから……と言うのも勿論ある。しかし、それ以上にネット内での戦闘がアルフォードを疲弊させた。

 元々この世界の人間ではないので、尚更ネット内にダイブする事に慣れていないのだ。リアルで暴れる事は慣れているし、鍛え抜かれた体は、そう簡単に疲弊はしない。

 が、ここでの戦闘は全てネット内となる。それが徐々にアルフォードを追い込む事になると言うのにまだ本人は気付いていなかった……。


 次の日、目覚めてアルフォードが思った事は、卵型の棺桶っぽいベッドの寝心地良良さだ。まるでふわふわ浮いてるような気分で熟睡出来た。

 繰り返すが、アルフォードは気付いていない。ネット内での戦闘が脳を疲弊していた事に。それが熟睡させた一つの要因である事に。そして、このベッドでは疲れが取れない程に徐々に徐々にアルフォードを蝕んで行く。


 その日から、昼間はパルサの部屋で過ごす日々が続く。そこで一日中雑談してるだけだ。勿論たまに戦闘でネット内にダイブさせられる事もあるが、頻繁にではない。

 パルサは忙しなくキーボードを弾き、視線はモニターに向きっぱなしだが、それでも確り会話している。アルフォードは、器用なものだと言う感想を抱く。

 実際パルサは天才だ。色んな作業をマルチタスクでこなせるんだから。それはコンピューターの扱いだけではない。コンピューターを操作しつつ会話なんて朝飯前と言ったところだ。

 気付くとアルフォードも筋トレしながら会話していた。やはり、ネット内だけで戦っていると体を動かしている気分なのだが、実際は訛って行ってるのを感じた。故に何かとリアルで体を動かすようにしだす。


 夜は部屋に戻りシャワー浴びて寝るの繰り返しだ。シャワーは、お湯が出た事に最初アルフォードは驚いた。アルフォードの世界には、シャワーすらなくただの水浴び基本だったからだ。

 尤も城や料金の高い宿屋は浴場があるがシャワーは存在しない。食事の方は、ルームサービスでパルサの部屋に朝昼晩と三食届けてくれて、それを摂った。

 これにもアルフォードは驚いていた。部屋の中から、ネット操作しパルサが注文していたものだ。最初は何で食事が届けられるのか理解出来ないでいた。やる事見る事全てが自分の世界と違うのだと実感が強まって行くばかりだった。


 はっきり言って外に出る必要はないのだが、アルフォードは元々体を動かすのは好きなのでたまに散歩に出た。

 その際にパルサは気を使ってアルフォードの視界の隅の中空にモニターを展開してくれ、そこには地図が表示されており迷う事はなかった。何より、自分の現在位置が分かる事にはこれもまた驚いていた。

 リアルで戦う事があまりないどころか道場のようなとこもない世界では、アルフォードの道着だ目立つのでこの世界の一般的な服までパルサは用意した……勿論ネット内注文だが。

 アルフォードが、やり易いようにとパルサは隅々まで気を効かせた。彼女はコンピューター特化の天才だが、そう言う天才は他はからっきしなのがお決まりだが、気配り心配りも出来た良き女とも言えよう。


「なぁパルサ。このキーボードは俺にも使えないのか?」


 中空に浮いたモニターに話し掛けるとパルサにも伝わる。


《無理かしら。あたしの翻訳魔法は会話だけサ。読み書きも可能になる翻訳魔法は覚えていないかしら。まぁ言語を書き換えたソフトを作れば良いけど、アルは一時期な味方に過ぎないかしら》

「そんな俺の為に作らない……って訳か」

《そうサ》


 ソフトとはなんなのか理解出来なかったが、その気になれば自分が知ってる言語を表示させる事も出来るのかもな。と、アルフォードの中で不思議な信頼がパルサに出来ていた。


《アルは、このままあたしに着いて来る気はないかしら? アルの強さなら歓迎サ》

「有難い申し出だけど俺は兄貴を支えると決めている」


 そう、その為にアルフォードは強くなったのだから。


《あたし結構モテるかしら。なのにこう簡単にフラれるとはショックサ》

「がははははは……俺を兄貴と一緒にするな」

《ん? お兄さんなら着いて来たのかしら?》

「いや、逆に引き込むかもな。女であれば子供から老人まで口説くのが兄貴だから」

《それはまた節操が………》


 急にモニターの向こうの気配が変わる。緊張が走しってるのがアルフォードにも伝わった。


挿絵(By みてみん)


《アル! いけるかしら?》


 出番が来たと瞬時に悟る。


「応っ!」

《なら……右前方にあるベンチで座ってダイブして》

「分かった」


 アルフォードは言われたベンチに向かって走って行き腰掛けた。立ったままダイブすると戻って来た時に平衡感覚を一瞬失いこける可能性がある。それに通行の邪魔だ。よって腰を落ち着けられる場所まで行かないといけないとパルサに言われていたからだ。

 ちなみに近くに落ち着ける場所がない場合はパルサが転移魔法(ラーク)で迎いに来て、宿屋に戻ってからダイブする事になっている。


「ダイブコネクト」


 インターネット内に入る呪文のようなものをアルフォードは唱える。

 何インターネットに潜り(ダイブ)、意識をネットと接続(コネクト)するという意味を持つとアルフォードは教わっていた。

 最初はパルサが強制的にアルフォードをダイブさせていたが、その一手間より相手を詳しく調べたりした方が良いとの事で、アルフォード自らがこの言葉を発しダイブするようになった。

 アルフォードは数秒の真っ暗闇の後、少し広い空洞に立った。アルフォードを機械の体に一瞬変えた場所であり、パルサが所有するネット空間だ。

 この世界の者はネット内のプライベート空間を所有するのが当たり前なので、パルサはネット内を掌握する足掛かりに自分専用の空間を買った。尤も何もない空間なのだが……。

 これはアルフォード自らダイブすると接続先が此処になるように設定されていた。今までパルサは、此処にダイブするという手順を飛ばして戦場へ行くようにしていたが、パルサからすれば、これも手間が掛かる。

 段階的に一度此処にダイブし、戦場に転移した方が手間が少ないのだ。

 そして、アルフォードの前にモニター現れる。


《じゃあ戦場に飛んで貰うサ》

「応よ!」


 アルフォードは気合を入れた。そうして視界が暗転。別の場所に転移した。

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