EP.14 記憶が復活しました
とりあえずこのコンピューターの中身を見てみるか。
「キー配列が分からん」
キーボードなんて触るのは一年半ぶりくらいになるが、そういう問題ではなく分からん。たぶん俺の知ってる配列じゃないな。
それでも、少しでも中身を見るか。俺は、キーボードを慎重に押し始める。
モニターを見る限り、言語は知らないものだが問題無いのがせめてもの救いか。
何故なら恐らくだが転移特典で言語理解を習得済み。何故か理解出来たんだよな。最初は日本語だと思っていた。
そう思って見ようとすると、この世界の文字は日本語に見える。しかし、この世界の言語なんだと改めて知った時に、知らない文字に見え始めた。
要は思い込みで見え方が変わる転移特典を星々から与えられたっぽい。
そう言う訳で、他の世界の言葉だろうが理解出来る。なので、このモニターに表示されている文字も理解出来た。
「ううん? 何だこれは? ゾウ?」
モニターには、ゾウが映っていた。しかも足が六本……意味不明。
概要が書かれているな。色々書いていてよく分からん。まあなんとなく分かる範囲を要約すると……、
「下手な山よりも大きく、討伐されると時間逆行を引き起こし、討伐される前に戻ると……はぁ!?」
それ反則だろ? 絶対に倒せないじゃん。
と言うか何でそんなものを作れる? 生体実験を繰り返しこんなのを作り出そうとしてるのか?
それと散ったラフラカの細胞を一部採取して培養……って、それじゃあ精霊の力があるから、時間逆行もできるのか?
それに次元の狭間にて実験を繰り返してる。それって完成前に手出しが出来ないじゃん。
最終メンテナンスの一週間後~十日後辺りにこちらに現れるのか。その時に倒す……でも、時間逆行するとか、もう詰んでるじゃん。
しかも、現れた時に動物が魔物に変異し始めるとか、それもめんどくさい。
『警告! 警告! 許可無き者が端末に触れました。これより爆破を開始しデータと共異物者を排除します』
何だって? まずいまずいまずい。まだ概要しか読んでいない。弱点とか見つけないと。
だが、詳しい研究データとか分からん。くそ! キー配列が分からんから、色々見るにも時間がかかる。
「これは……メモ書き?」
なになに……【ラフラカの細胞を採取し培養した事でラフラカの記憶を読み取れた。その際に分かったのは十一人の英雄と呼ばれる者が障害となるだろう。よって減らす必要がある】
『……爆発十秒前』
【アークス所在不明、よって無視】
うんまあそうだよね。ダークってどこにいるか分からんし。
『九』
【ラゴスとエーコは閉鎖的な村にいるだろうから放置して問題無し】
ラゴスは死んでるしエーコは村を出てるんだけどね。ラフラカの記憶だけじゃ分からん事もあるんだろうな。
『八』
【アルフォンス国にフィックス国に戦争を仕掛けるように仕向ける。それによりエドワード及びアルフォードは、そっちに手一杯になる。その際、アルフォンスに我が世界の盾の技術を流せば戦争が有利に進むだろう】
我が世界? いや、今はそんな事はどうでも良い。次だ次。
『七』
【クロード城にエド城は資源を大量に持ってるいると言うデマ情報を流すこれによりムサシは、それに対応しないといけなくなるだろう。結果が上々なら戦争も期待出来る】
【エルドリアの炭鉱を爆破し、ユキはその対応に追われる】
えげつない事を考えているな。
『六』
【ルティナの家の側に魔物を引き寄せる匂いがするものを埋める。いくら半精霊化できても、共に暮らす者を守りながらでは、限界がくるだろう】
いや、半精霊化はもうできないんだけどね……って、なら余計やばいじゃんかよ。
『五』
【この屋敷に地下迷宮を作り、生体実験で作った魔物を配置ロクームをおびき寄せる。今もエリスと一緒にいるなら二人とも、そこで始末】
はっ!? この地下に魔物がいるだと?
『四』
【これらが上手くいけばガッシュ一人では何もできないだろう】
……これは確かにそうだな。
【ラフラカの欠片により生まれる魔人は、足を同時に潰すと時間逆行しなくなってしまう。これらの作戦がいくつか失敗しても六本の足を同時に破壊は無理だろう……】
なるほど六本同時に潰せば良いのか。
『三』
【目下の目的は時間逆行した際に記憶を確り引き継ぐ事。それができない現状は欠陥品でしかない。同じ時間を何度繰り返しても、結局同じ末路になるのだから……】
『二』
限界だな。ここまで読めれば十分だ。俺は、急いで部屋を飛び出た。
『一』
そのまま勢いを殺さず窓を突き破り外に出る。
『ゼロ』ドッカーンっっっ!!
背に強烈なバックファイヤーを喰らい俺の意識はここで途切れた……。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽
クソったれが!
研究が後一歩ってとこだったのに。
あやつは何者なんだ?
わしの命も、この爆発で終わってしまう。
あやつも死ぬだろうが、それだけじゃ気が収まらん。
あやつの写真は確り撮った。
本大陸にいる協力者に写真を渡し、あやつの大事な奴を調べあげ、殺し屋にリークしてやる。
あやつもこの爆発で死ぬだろう。
そしてあやつの大事な奴も死ぬ。
それも時間逆行によって何度も何度も……未来永劫な。
くくくく、ふーはっははははは……。
このオドルマン、研究が完成しなかったが、全てを破壊してくれようぞ。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽
「あ、ああ……」
俺の記憶が蘇った。ただ大量の記憶を一気に頭にぶち込まれたような感覚で、かなり頭が痛い。
「どう?」
ナターシャが緊張した面持ちで訪ねてくる。
「記憶はもど……きゃ!」
言い終わらないうちにナターシャを腕を掴み引き寄せた。そのまま強く強く抱きしめる。
「……すまねぇ」
ただ一言俺は言う。それ以上の言葉が見つからない。
だけど、それだけで伝わり、ナターシャは暫くワンワン泣いてしまう。
くっ! いきなり色んな事を思い出したから、頭がグラグラする。だが、ナターシャが泣き止むまでは……。
やがて泣き終わったので、そっと離れた
「悪い……脳はかなり疲弊してる。やすまな……い………」
言い終わらないうちに限界を迎え、意識が闇に呑まれてしまう。そして次の日は、まだ頭がグラングランしており、ナターシャと会話もほとんど出来ず寝てばかりだった。
そして、更に次の日に帰還用の転移の魔法陣の上に乗り地上に戻った。俺が目覚めて一四日後の事だ。
最終リミットは一四日……誰が一四日目でゾウを倒すのかまでは分からないが。その一四日目を迎えたので当然時間逆行が始まり、俺はいつものクイーンサイズのベッドで目覚めた……。