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EP.11 やっぱタダメシは最高でした

「これはエーコ殿、こんばんは」


 フィックス城の門に立っていた衛兵に声を掛けられた。こんな夜遅くまでご苦労様な事だ。


「こんばんはー。お疲れ様ー」


 エーコが労いの言葉を掛ける。

 ちなみにこの城は、エドと交友があるという事を衛兵が知っていれば自由に通してくれる変わった城だ。なので、衛兵が知っているエーコを先頭に俺とナターシャが後ろに控えていた。

 まあ俺もダーク(・・・)だって名乗れば、たぶん通してくれるだろうけど。


「ただいまエドワード国王は留守にしております」

「分かってるよー。エド叔父ちゃんから、これ預かってるのー」


 エドが(したた)め、俺に渡して来た手紙をエーコに渡していたので、それを衛兵は渡す。それをその場で、読み始める。


「なるほど。事情は分かりました。では、客室を用意します」

「ありがとー」

「それから、お食事はお済みでしょうか?」

「まだだよー」


  実は城のメシを食べたくてイーストックスで、何も口にせずにそのまま来たのだ。


「分かりました。では、お食事も用意致します。それから例の屋敷への船を明後日までに用意しますので、明日はエルドリアでお休みください。その次の日、東の海岸に停泊させて起きます」

「はーい」


 そうして俺達は食堂に案内された。お城の食事はフランス料理っぽいコース料理で、食前酒から始まり、付出し、前菜、スープ、メインディッシュ、デザートという順番で運ばれてくる。

 ちなみにエーコは、酒を飲めないので果実水だった。いや、まあ俺も好きじゃないから果実水だけど。


「やっぱ城の食事は豪勢だな」

「そうだねぇ」

「美味しいねー」


 などと会話に花を咲かせ食事を楽しむ。この豪勢な食事の為に夕飯を抜いた甲斐があった。あと、タダメシってのがまた良い。


「だけどやっぱり俺は。エーコの料理が一番だな」


 前菜を終えスープを口にしながら言った。


「は~……」


 毎度お馴染みのエーコのに溜息だ。


「そこはーナターシャお姉ちゃんの料理が一番だなー……でしょー?」

「まったくだよ。あたいがいつも作ってるのにさぁ」

「わたしは、いつもナターシャお姉ちゃんの手伝いばかりだよー」

「ほんとアークったら、何かとエーコ、エーコばっかりだねぇ」

「そこは照れ隠しだよ」

「それぐらい分かってるさぁ。分かってても言って欲しいものさぁ」

「ほんとアークは、分かってないよねー」


 ですよねぇー。確かに俺は、つい恥ずかしくてナターシャを褒めたりしない。

 やがてデザートも終わも終わる。


「やっぱ食後のお茶欲しいよねぇ」

「そうだよねー」


 ナターシャが言い、エーコが同意した。確かにいつも家では食後にお茶があるんだよな。

 だからやっぱ物足りない。まあもちろん城のメシは美味かった。普段はこんな豪勢なもの食べれないからな。

 でも、なんだかんだ言って 日本料理っぽいのが一番だな。 ナターシャは、それを分かっててくれて、良く作ってくれる。だから本当は、かなり感謝してる。

 ちなみに俺達の家はエド領に属しており、エド城のムサシの好物が同じく日本料理っぽいもの。そのお蔭で流通が盛んで、材料が手に入り易い。

 とは言えまだまだ金額が高く、ウチでの一番の出費は食費だ。

 余談だが、昔の俺は知らなかったのだが、ナターシャの家はエド領にあるので、エド城に税金を払っている。つまりムサシを養ってるのは俺だったり? なんちゃって。


「それでは皆さんお部屋にご案内します」


 食事が終わると衛兵がやってきて客室への案内を申し出てくれた。


「ところで皆さんは同じ部屋ですか? それとも分けますか?」

「同じで良いよー」


 エーコが答える。それにしても、此処の衛兵は気が効くな。それに偉そうにするわけでもなく、逆に妙にへりくだるわけでもない。

 城で過ごす客人が息苦しくないようにエドの教育が確りしてる。勿論、相手によってはへりくだるのだろうけど。


「分かりました。では、行きましょう」


 そうして衛兵に案内されて客室に向かった。


「衛兵さん、お茶用意してくれないかい?」


 客室に到着するとナターシャがそう言い出した。


「分かりました。直ぐに用意します」


 暫くすると侍女らしき人がお茶を持ってきてくれた。 それを飲み俺達は、まったりし始めた。

 二人共、やっぱ食後のお茶がないとなーと言う感じで、ご満悦の様子だ。


「それでアーク、何か不安な事でもあるんじゃないのかい?」


 やっぱそこを突くか。誤魔化してるつもりでもナターシャには分かってしまうのかな?

 いや、船の上で、エーコとの会話で分かってしまったのかな。


「何もないよ」


 やっぱりどうしても不安にさせたくない。 生物実験をしてるなんて言ったら不安になるだろうし。


「良いから話しなぁ。これから一緒に行くというのに、ちゃんと言ってくれなきゃいざという時困るでしょう?」

「そうだよー」


 エーコまで一緒になって言ってきた。本当はエーコは、強く言いたかったんだろうな。

 でも俺が誤魔化すから、ナターシャが代わりに強く言ったのだろう。

 不安に感じてしまいエーコと一緒に寝たのが失敗だったな。だが、二人共それだけ俺の事を心配してくれてるって事が妙にくすぐたかった。


「実は潜入というのは、初めてなんだよな。ダークが何度か、やってるのを知ってるから俺も出来ると思うけど、やっぱ初めてだから不安でもあるかもな。それに孤島だから、何かのミスで退路を塞がれるかもしれないし」


 これも本当のことだ。

 VRMMO、F(ファースト)F(・ファンタジー)O(・オンライン)で、ダークを操作し、潜入とか、あったけど実際にダークの体を使って行うのは初めての試みだ。ダークに出来た気配察知が俺にも可能なので、いけると思うけど。


「ならあたいも一緒に入るさぁ」

「それはダメだ! 気配察知ができないと潜入は難しい」

「まあそうだねぇ」


 勇ましく申し出たナターシャだが、少し沈んでしまった。

 もし生物実験の事まで、話してしまったら何が何でも、来ると言いかねない。 だからそれだけは言えないな。


「退路さえ確保してくれれば十分だよ。だからそこはお願い」


 それだけで十分助かる


「しょうがないわねぇ」


 ナターシャも 渋々了承してくれた。


「エーコもナターシャと同じように退路の確保をしてくれ」

「分かったよー」

「それと最初だけ重力魔法(グラビティ)が必要になるから、それも宜しく。一番最初に 最上階から見て行く。こういうのって上のが当たりが多いだろうから」

「それはわかるなぁ」

「そうだねー」

「じゃあそろそろ寝ようか」


 話もまとまったとこで、ナターシャがそう言ってきた。


「そうだな。寝ようか」

「今日あたいと寝なさいよねぇ。またエーコと一緒って言ったら怒るさぁ」

「変なことするなよ?」

「変なことしてくるのいつもアークの方からでしょう?」


 はいそうです。

 二戦目以降はナターシャから仕掛けてくるが、初戦はいつも俺からだ。


「だーかーらーそういう話は、わたしがいないとこでしてって言ってるでしょー」


 横で聞いていたエーコに突っ込まれた 。

 と言う訳で今日はもう寝て、明日はエルドリアに向けて出発だな。

 エルドリアで宿を取る。その後、船でも一泊するだろうから家から三日の距離があるんだな。 面倒の場所に屋敷を建てたものだなあ。そんなことを考えながらナターシャと同じベッドに入った。

 さて今日は船の上で、ナターシャに泣かれたし抱っこして寝ようかな。

 そう思っていたらナターシャの寝息が聞こえてきた。寝るの早くない?

 いつもナターシャからくっついてくるから、たまには俺からと思ったのになんでこうなるかな……。

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