EP.07 エドが半ギレしていました
「オラオラ……金の物を出せやー」
「女! てめぇはこっち来いや」
「これもオレ様が貰ってやるよ」
港町ニールに到着すると、罵声浴びせる野盗がいた。好き放題暴れているし。今日はエンカウント率高いな。
「町中では魔法は控えたいからー、アークお兄様宜しくねー」
「はい! 喜んで」
何処の居酒屋だ!? ついエーコにお兄様と言われ反射的に応えてしまった。
「じゃアーク、頼むねぇ」
「おいナターシャは、弓なんだから平気だろ?」
「仕方ないねぇ……援護くらいしてやるさぁ」
と言う訳で野盗達とエンカウント。
・たたかう
・にげる
・さくせん
・アイテム
どうする?
さくせん→ガンガンいこうぜ。
よし! これで行こう。
俺は一気に駆け抜け小刀の峰打ちを首筋に当てた。
一人。次! 一瞬で移動してまた峰打ち。
きっと今の俺は町民の目には、残像が残っていて野盗達を同時に攻撃してるように見えるんじゃないかな。
そうして次々に峰打ちをしていき、全員に当てたとこで……、
「またつまらぬ物を斬ってしまった」
と、呟きながらカチンと小気味良い音を鳴らし鞘に小刀を収める。
バタン!
それと同時に野盗達が一斉に倒れた。
「まーたアークがくだらない事言ってるよー。しかも斬ってないしー」
エーコが呆れたようにツッコミをしてきた。言ってみたかっただけなんだよ。そんな呆れないでよ。
「あたいの援護なんていらないじゃないさぁ」
ナターシャがボヤく。まあ後ろがいるから安心してガンガンいこうぜのさくせんを選んだんだけどね。失敗してもフォローしてくれると思ってさ。
「やぁ。良い手際をしてるね」
うん? 今度は金髪の美丈夫が現れたぞ。
・たたかう
・にげる
・さくせん
・アイテム
どうする……?
「……エド」
やばっ! たたかう、にげる、さくせん、アイテムの選択を選ぶ前に呟いてしまった。
金髪の美丈夫はエドワード=フィックスだ。エドは俺の事を知らない筈。歴史改変後はまだ会った事がない。会うつもりもなかった。
「ん? 何故私の名を?」
あんれぇ~? なんかデジャヴってない? 前にもあったような……。
「いや……フィックスの王だからな」
とりあえず誤魔化そう。
「ははは……それは私も有名になったものだな」
思い出した。これ歴史改変前と完全に同じやり取りだ。
「あ、エド叔父ちゃん」
エーコがやって来た。
「やぁエーコ。君は見る毎に麗しくなっていくな」
カチンっ!
「俺の義娘を気安く口説くな」
ついキレてしまった。
「うん? すまない? そういう関係だったのか?」
副音声で『義娘』って言ったけど聞こえてないだろうし完全に誤解されたな。
「またアークったらそんな事言ってー」
って言う割には顔赤いぞエーコちゃん。それがまた可愛い!!
「違うからねー? エド叔父ちゃん」
エドの方を向いてそう続ける
「アーク? ……もしかしてダークか?」
何故バレている?
「ははは……それなら確かに君の娘だね」
これ副音声で『娘』と言ってるな。エーコがダークの娘だとエドは、たぶん知ってるからな。
ダークが妻のグランティーヌが病の時にエドに助けを求めた。そこから推測されたり調べられたりしてもおかしくはない。
「……中身違うよー」
ボソっとエドに聞こえないようにエーコが呟く。エーコには確り副音声が聞こえたのかな?
「ダークも確り自分の娘だと打ち明けたんだね」
エドがそう言う。まずい。どう誤魔化すか。
「……いや、娘じゃない」
半分事実だ。肉体的には親子でも中身が違うからな。
って、ついダークっぽく間を置いて静かに低い声で言ってしまった。
「ダークがそう言うならそうしておこう。それよりそちらの麗しい女性は?」
ナターシャを見て聞いて来た。
「あたいはナターシャ=プリズン。正真正銘のアークの女さぁ」
何張り合ってるの? と言うか、何故恥ずかし気もなくそう言う事を言えるのだ?
「そうかダークにこんな美しい女性がいたとは驚きだ」
「エーコを口説いた時は、殺気だけで済んだけど、あたいを口説くと首が飛ぶさぁ」
えっ!? 首飛ばさないよ? と言うか、俺さっき殺気出してたかな? あ、ちなみに今のはギャグじゃないけどね。
確かにエーコが口説かれてイラっときたけどさ。
「……それは気を付けよう」
「それとダークではなく、アークさぁ」
「そう……だったね。今はそう名乗ってるんだったな」
今はではなく最初からそう名乗ってますが何か?
「それはともかく野盗の処理感謝する……それとそっちにいるのも野盗かな?」
「そうだよー」
エドは港町ニールに向かう途中で、襲ってきた野盗七人を見て問いかけ、エーコが答えた。
「そうか……連れて行け!」
「はっ!」
エドと一緒にいた衛兵らしき人に命令を下す。直ぐ様、俺が処理した野盗と、ここへ来る途中で処理した野盗を連れて行った。
「ところで何で俺がダークだと思った? エーコが話した?」
「話してないよー」
俺が聞くとエーコがぶんぶん首を横に振り否定した。
「サラという女性から聞いた」
エドがそう答える。
「情報源はそこか」
確かに生き残る為にサラ……いやユグドラシル大陸にいろいろ情報を流した。そしてサラと一緒にガッシュと会った時にガッシュが俺をダークと呼んだのだ。
それでサラは、アークもしくはダークとかエドに言ったのだろう。
「ユピテル大陸の内情を随分親切に話してくれたね? お蔭で不利な状態で交渉する事になった」
「……悪い」
交易で不利になるのは分かっていたけどそれしか生き残る手段が思いつかなかったのだ。
船も通っていない大陸のはずれにある島で満身創痍の状態だった。そこから体を回復して貰い、本大陸に行かせて貰う条件で情報を全て話したのだ。
「それに監禁事件を知らせておいて被害者を連れて行くってどう言う事かな? 聴取取るのに手間がかかったよ」
軽く怒っている? 薄ら笑いに目が座っているぞ。
サトモジャの件は、やっぱり迷惑を掛けていたか。それでも上手く処理してくれたのだろう。エドに頭が上がらないな。
「……それも悪い」
「その辺、詳しく聞かせて貰いたいな。それに久しぶりに会ったのだし酒でも飲まないか?」
笑みを深め有無を言わせない気迫を感じる。
「ダメだよー。えっと……そう今日は買い出しがあってー……」
エーコが慌てたようにしどろもどろしながら言う。うん。わかるよ。歴史改変とか話さないといけなくなるからね。
でも、エド相手だと話さないといけない。俺はそんな気がした。
今までは避けて来たが、いざ会ってみるとそう感じてしたまった。ここは直感に従うかな。
「エーコ、良いよ。エドと飲みに行く」
「でもー」
納得行かないようだ。
「俺がダークだってバレているようだし、どのみち話さないといけない」
「……分かったよー」
渋々了承してくれた。
「ナターシャも良いかな?」
「アークが決めたなら良いさぁ。今日はここで宿を取って明日買い出しするよ」
「すまない」
「じゃいつもの宿屋で」
「分かった」
「エーコも行くよ」
「はーい」
そう言って二人は宿屋に向かった。港町ニールで、たまに一泊する事がある。その時、必ず行く宿屋だ。
「さてエド、行くか」
「ああ……良い店あるから着いて来てくれ」
そう言ったエドに着いて行き飲み屋に向かった。