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EP.05 ナターシャは底無しでした

「「はぁはぁ……」」


 二人の吐息が混ざり合う。


「次、行くよ。アーク」


 それにしてもナターシャは元気が良い。一戦目は、大抵俺からだけど、それ以降はナターシャからだ。何より二戦目、三戦目と回数を重ねる毎に元気になって行く。

 俺は逆だ。最初だけは燃え上がるけど、それ以降はどんどん疲れて行きビッグマグナムも覚醒しなくなる。

 それに今回は、俺が護衛の仕事で暫く家にいなかったから余計に燃えているようだ。それに帰って来たと思えばサトモジャのオマケ付き。サトモジャがいるせいか、ナターシャも自重してくれていた。


 ちなみにだが、そのサトモジャは、昨日エーコがエド城に連れて行ってくれた。ムサシと顔馴染みだし、話が通し易いって事で。

 え? 俺が連れて行けって? エドと同じでムサシともこの歴史では出会っていないし、中身が違うのでダークと名乗るつもりもないので、エーコに頼んだと言う訳だ。

 まあともかくこれで文官として働けるだろう。その後はサトモジャ次第。これ以上はいくら旧友でも責任は持てないな。


「なんだい? もう終わりかい?」


 俺のビッグマグナムを握られたので、物思いに耽けるのを強制中断した。

 てか、心底残念そう言われる。もう覚醒しません。勘弁してください。


「何回したと思ってるんだよ!」

「うーん……三回くらい?」

「五回だよっ!!」


 つい怒鳴ってしまう。何だよ。そのまだまだ足らないですって態度は。

 これがあるから、最近はエーコも混ぜて一緒に寝る回数を増やしてる。流石にエーコの前では、ナターシャもその気にならんだろ。

 ただ……、


「それに回数重ねる毎に声が煩くなってるぞ。またエーコに聞かれたんじゃないか?」


 そうたまに朝起きるとエーコに目線を反らされる。あれは地味に傷つく。


「うっ! ソンナコトナイヨ」


 目を反らしてるぞコラ。


「声くらい抑えられないのか?」

「アークがおかしんじゃない? 何? あたいじゃ満足しないってのかい?」


 何で絡まれないといけない?


「満足してない奴が五回戦もできるかよ!」

「へ~~……アークはそんなにする程、あたいに満足してるんだ?」


 ドヤ顔するな! と言うかこれじゃ五回戦も望んだのは、俺みたいじゃないか。

 クソ! 口では勝てない。いや勝とうとすると、矯正ビンタが飛んでくる。

 あ~あ。完全に尻に敷かれているな。


「もう良い。俺は寝る。まだ足りないならナターシャは一人でしてろ」

「アークでまんぞ……おっと、あたいも疲れたし寝ようかねぇ」


 おっとー。これはチャンス。


「今、何を言おうとしたの? 途中で止めるなて気持ち悪いぞ」


 したり顔で言ってやると、ナターシャの顔が引き攣る。


「何でもなさぁ。寝るよ」

「俺で満足しちゃって、自分では満たせないのか~。うんうん五回戦もしたがる強者だもんな。当然そう考えるよな」


 やば! 言わなくて言い事を……。


 パッシーンっ!


「矯正!」


 くっ! 出た、矯正ビンタ。だが、やられっぱなしは嫌だ。


「その理由は? いつもちゃんと理由を言って矯正するよね?」

「察しなさい。もう一度矯正!」


 パッシーンっ!


 またビンタがきた。やってしまった。つい調子に乗ってしまった。これだから俺はいつまでもひっぱ叩かれるんだよな。

 ナターシャとエーコと一緒に住み始めて五ヶ月経つというのに変わらんな、俺も。

 だが、それでも引き籠りのコミュ症も大分改善され社会復帰出来た事には感謝だな。


「ふんだ! もう寝る」


 だけど、それとこれは別だ。イジけたように布団にくるまり、ナターシャに背を向ける。


「ねぇねぇそう言わずにさぁ。こっち向いてよ」


 そう言ってる割には後ろから手を回してビッグマグナムの覚醒を促すなよ。残念だけど、今日は限界だ。

 やがてナターシャも諦めて後ろから抱きしめてきた。寝息も聞こえてくる。

 うほ~。ナターシャの大きいから、この背中に当たる感覚がええんだよな。

 

 ダガタタナイ、タダノシカバネノヨウダ。

 

 と言う訳で俺も眠りついた。


 次の日、案の定エーコから目線を反らされた。地味に傷付く

 だがそれはそれで良い。そんなエーコも可愛いぞ。

 三人で朝食をしてる間もずっとエーコは目線を合わせてくれない。そこで俺はエーコの頬を突いた。


「なーに?」


 やっと目線を合わせてくれた。小首を傾げてる感じがまた良い。エーコ、可愛いぞ。


「今日、目線を合わせてくれないから」

「そ、そんな事ないよー」


 慌てたように返してきた。


「そんなにナターシャの声が凄かった?」


 いきなり核心をついてやる。


「ちょっとーアーク!」


 当然ナターシャの言葉は無視。


「え? え? な、何の事かなー?」


 めっちゃ顔赤いぞ。


「まあエーコも興味ある年頃だしね」

「だーかーらー、何の事ー?」


 あくまでシラを切る気か。だけど、更に顔が赤くなり耳まで真っ赤だ。


「顔赤いぞ」

「は~……するなと言わないけど、声が落としてよねー」


 観念したように溜息と共にそう言った。


「だってよ。ナターシャ」

「違うよー。アークに言ってるのー」

「俺ぇー?」

「そうだねぇ。アークが悪い」


 ナターシャまで……。何でそうなる? 解せん。


「ちっ! だ、だけどあれ、あれだぞエーコ」


 言い返してやりたいけど咄嗟な事で何を言って良いか分からなかった。


「なーに?」

「そう、あれだ。エーコも年頃だからって慰めるなら部屋の鍵を閉めてるんだぞ」

「………」


 なので、つい触れて欲しくないだろう事を言ってしまった。あ、エーコが固まちゃった。


「矯正っ!!」


 ペッシーンっ!


 ナターシャからビンタが飛んで来た。うん、今のは分かるよ。デリカシーないよな。


「あたいも気付いてたけど、そう言うのは見ても見ぬふりするもんさぁ」


 あ、ナターシャがトドメを刺したぞ。エーコの真っ赤な顔が真っ青に変わった。


「<ミーティ……>」

「ちょっ!」

「それはダメさぁ」


 エーコが隕石魔法(ミーティア)を唱えようとしたので、二人して必死にエーコを止めた。

 家を破壊する気か? せっかリフォームしたってのに。


「アークっ!」

「いやナターシャがトドメを刺したぞ」

「そ、ソンナコトナイヨ」


 おい! 目線反らすなよ。


「……どっちもだよー。恥ずかしいよー」


 あ、泣いちゃった。俺は優しく抱きしめ頭を撫でてあげる。


「ごめんごめん。エーコが可愛いからついね。乱入されなかっただけ良いでしょう?」

「でもー」

「年頃は、そういうものだから気にするなよ。それにエーコも良い男いないのか?」


 俺はそう言ってエーコから離れた。

 ちなみに年頃と言うがまだ十一歳なんだよな。でも、こっちの世界の人間は早熟だ。なんせ成人が十五歳だしな。

 エーコの内面も大人びている。それに胸も既にBカップくらいはあるしな。


「いないよー」

「そうか……人生で一度は言ってみたい台詞があったんだけど、言えるのまだ先かな」

「何を言いたいのー?」

「貴様にうちの娘はやらーんっ!!」

「中身違うでしょー」

「だねぇ」

「いや言いたいだけだから」


 そう言って、和ませエーコの涙を拭う。そして三人で笑い合う。エーコの機嫌が直って良かった。

 それにしてもこの世界に来て本当に充実している。引き籠りしてた時と大違い。この二人がいるだけで、そう思う。


 ちなみにダークに着いて回り、ラフラカとの決戦後エーコが引き取ったハンターは四ヶ月程前に逝ってしまった。

 俺の元の世界の犬は十二年くらいが寿命だが、この世界の犬はもっと長いのだろうか? 二十年は生きた。

 歴史改変後エーコが俺を探してる間、ナターシャが預かっていた。もう老犬で、あまり動けなかったからだ。


 俺……正確にはダークなのかな? ダークとエーコ以外には懐かない犬だった。それでもナターシャが餌を置いておくと勝手に食べてはいたらしい。

 そして、俺とエーコが一緒に暮らすようになってから、それを見届けて満足そうにして逝ってしまった。

 もしかしたら、ハンターは、賢い犬だからエーコとナターシャの会話を聞いて俺が、もしかしたら一緒に暮らしだすのではないかと考えたのではないだろうか……。

 だから、俺がこの家にやって来るまで頑張って長生きしたのではないだろうか? まあ実際のとこ分からないけど。


「アーク? どうしたのー? 急に黙ってー」


 俺が物思いに耽って黙り込んでしまったのを心配してかエーコが顔を覗き込んで来た。


「いや、もう一つ言ってみたい台詞があったなって。こっちは中身がどうとか関係ないぞ」

「は~……どうせくだらない事でしょう?」

「だねぇ」


 二人して酷いな。くだらないって何さ。


「一応言ってみてー。どうせくだらないと思うけどー」


 二度も言うなよ。


「娘が欲しければ俺を倒してみろ! ってな」

「やっぱくだらなーい」

「アークって相変わらず変な事しか言わないよねぇ」

「二人とも酷いぞ」

「だってーそんな事できるのムキムキ叔父ちゃんかガッシュしかいないじゃん」


 確かにそうかも……。ちなみにムキムキ叔父ちゃんとはアルの事だ。


「じゃあアルと結ばれるか? やった! これでうちも王族の仲間入り」

「歳が三倍近くあるよー」

「ほら馬鹿な事言ってないで、ご飯食べてしまいなぁ」


 ナターシャまで酷いな。だが悪くない。こんな時間がいつまでも続けば良いなと思うこの頃。

 それから月日は流れ十月の事だ。俺がこの家に住むようになってから約半年は過ぎた。


「さて、買い出しに行きますかねぇ」

「ああ」


 ナターシャが言い俺は頷く。今日は三日に一度の買い出しの日。

 港町ニールまでは朝早く出発しても到着するのは昼頃。買い出しを済ませ帰る頃には夜なっている。

 正直めんどくさい。それ故に三日に一度としている。そして、今回俺は仕事がないので荷物持ちに駆り出された。


 俺の仕事はまちまちなのだ。例えば狩りで稼いでる人が怪我をした時に代理で行う。危険な場所へ資源を取りに行く。

 場合によっては悪行を行ってる者を捕らえる、もしくは始末するなんて汚れ仕事もしてる。まあ極力殺さないようにしてるけど。

 FFOのプレイで殺人は、慣れているとは言え日本人の倫理観から、なるべく殺したくないと言う気持ちもある。

 ちなみに悪行と言っても大半が野盗だな。野盗等の悪行を行っている者は、歴史改変前より歴史改変後の方のが多い。お陰で結構仕事があったりもする。が、今日はないので荷物持ちだな。

 

「今日はエーコもおいでぇ。外ならアークに隕石魔法(ミーティア)使って良いからさ」

「おい!」


 使って良いわけないだろ!


「ほんとー!? じゃ行くー」


 すげー花が咲いたように笑ってるよ。マジでぶっ放すの?

 その顔は超可愛いけどさ、その理由が俺に隕石魔法(ミーティア)をぶっ放せるからってのが哀しい。


「じゃあ準備して行くさぁ」


 そうして俺達は出掛ける準備を行い家を出た。

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