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EP.03 パンチ・オブ・ファイアーはクソゲーでした

 俺は昼頃には、ツートックスに戻って来ていた。昨日護衛した商隊の隊長であるリリックさんに会う為にだ。そんな訳でリリックさんの店を訪ねる。


「リリックさん、景気はどうだい?」

「レディック商会が先に必要な物を売ってましたから、微妙なとこですな。アークさんは、如何したのですか? お買い求めです?」


 リリックさんが販売してるのは、寝具だが残念ながら俺には必要無い。


「いや、ちょっと頼みたい事があって」

「何です?」

「部下でも良いんだけど、フィックス城に使いを頼みたい」

「どう言う事です?」


 訝しげに首を傾げるリリックさん。


「今から、ちょっくらレディック商会を潰して来るから、衛兵を出すように言って来て欲しいんだ」

「おいおいおい……ちょっと待った待った!!!」


 リリックさんが泡を食ったように言って来る。当然だな。下手すると虚偽の報告を国にしたって事でリリックさんの商会が危うくなる。


「問題無い。ダークの名を出せば良い。全てダークの責任だと言えば、リリックさんとこには迷惑は掛けない」

「ダーク?」

「昔に名乗っていた事があってな。エド……エドワード国王とも知り合いだ。エドワード国王の耳に入れば動いてくれると思う」


 半分嘘だが。歴史改変後は、まだ出会っていないし、今後出会うつもりはない。中身が違うから不信がられるしな。


「マジかよ!?」


 リリックさんが目を丸くし素で呟く。


「これでレディック商会を潰れればリリックさんも助かるだろ?」

「それはそうなんですが……」

「仮にレディック商会が何も問題無く潰す事が出来なくても全責任は俺にある。だから使いを頼むよ」

「分かりました」


 そうして再び俺はレディック商会の拠点に戻り全員制圧した。


 制圧した内容が一行で終わってるって? だってただのごろつき連中だし野盗のが遥かに強いしな。一瞬で片付くわ。それが例え十人いようがな。


「あの……命だけは……」


 丸眼鏡のモジャモジャ頭の青年が真っ青にしながら、訴えて来た。まあ目の前で散々暴れればそうなるわな。


「いや、お前はやらんよ」

「へ?」


 丸眼鏡のモジャモジャ頭の青年が目を丸くする。


「コイツらに監禁されていたんだろ? もう直ぐ城の衛兵が来る筈だから」


 言ってる側から騒がしくなる。どうやら衛兵が来たようだ。


「貴方がダーク殿で?」

「ああ」

「エドワード国王陛下より、最優先で此処に向かうように言われました」


 最優先か。ダークの名を出したしな。エドは仲間には甘い……いや、一番は女だから、次に甘いのかな?


「全員制圧したから、しょっ引いて」

「はっ! ただちに」

「それとコイツは、俺が連れて行く」


 丸眼鏡のモジャモジャ頭の青年を差す。


「いや、それは困ります。重要参考人です」

「なら、実力で俺を止める?」

「うっ! それは……」


 たかだか五人の衛兵だ。ごろつきとは言え十人を一人で制圧した俺を早々に止められるとは思わないだろう。


「もし、どうしても問題あるならエーコが現在住んでいるとこを訪ねて来くるようにエドワード国王に伝えて」

「……分かりました」


 苦いものを口に入れたような顔をして衛兵が答える。


「ただ直ぐに処理するから、来るなら早めに宜しく」

「分かりました。エーコ殿の住まいですね? 宜しければ場所も教えて頂けませんか?」

「それはエドワード国王が知っている」


 そうして衛兵達は、ごろつきをひっ捕らえ去って行く。罪状は監禁だ。ただ監禁されていた本人から聴取を取らないといけないと言うのに俺が連れて行くとか、マジでタチ悪いな。自分で言っておいてアレだが。


「あの……やはり僕を殺すので?」


 再び丸眼鏡のモジャモジャ頭の青年が顔を真っ青にし出す。

 うん? 処理(殺害)とでも思ったのかね?


「違うよ。この案件(・・)を俺が処理するって意味だから」

「……そうでしたか」

「にしても、馬鹿だよな。此処にいた連中は。お前を有効利用すれば、もっと稼げただろうに」

「え? 僕を知っているのですか?」


 丸眼鏡のモジャモジャ頭の青年が目を丸くしながら、眼鏡をクイっと上げた。


「サトモジャ」

「その名で呼ぶのは、治と武と(らい)だけ。貴方は一体?」


 更に目を見開く。


「あ、俺が治だよ」

「は? いやいや……有り得ないでしょう……」


 それ言われるのも無理ない。灰色の髪に灰色の目だしな。そんな訳で、俺が異世界転移した事情を軽く説明した。


「……信じられない」


 眼鏡をクイっと上げなら呟く。


「パンチ・オブ・ファイアーは、マジでクソゲーだったな」

「その言い方は……本当に治?」


 サトモジャが目を剥く。

 こんな歯に衣着せぬ物言いをするのは、俺しかいなかったしな。武は気を使って、もっとオブラートに言っていた。來は、そもそもゲームにそこまでハマっていなかったので、良く分かっていなかった。

 ちなみにパンチ・オブ・ファイアーは、中学三年の頃にコイツがハマっていたゲームだ。

 でだ、このサトモジャは中学時代につるんでいたダチの一人。先程名前が出た武と來もそうだな。

 まあ中学卒業前辺りから俺は引き籠りになったので、それ以来会っていなかったが。

 ともかく今回の一件、ダチが監禁されていたからレディック商会を潰す事を強行したのだ。でなければリミットが三日……もう残り二日しかないのだから、余計な油を売ったりしない。

 そう商人相手に油を売ったのだ……って、つまらんわ!!


 余談だがパンチ・オブ・ファイアーのジャンルは格闘RPGとか意味不明なもの。フィールドを歩きエンカントすると格闘バトルに入ると言う実にめんどくさかったゲームだ。

 主人公は竜と人のハーフでドラゴンになれる。パーティーは最大三人にいて格闘バトル中にチェンジできる。あと場外は一発KO。

 空中コンボもあり、空中コンボ締め且つコンボ数が多いとレアドロップ率が上がるとか色々なパクリのてんこ盛り。

 ストーリーは、悪くなかったが戦闘がクソだるくて途中で投げたゲームだな。


「にしても何で、お前この世界にいるんだ?」

「それは……」


 答えようとするが、サトモジャがフラっとし出す。無理もない。此処に監禁されほとんど寝ていなかっただろうから。


「いや、それは明日聞こう。とりあえず移動だ。近くの町で宿を取る。そこで確り休め」

「それは助かる」

「それにお前臭い」

「そうズゲズゲ言うのは相変わらずだな」


 サトモジャがげんなりしたように苦笑する。

 こうして、俺はサトモジャを連れイーストックスに移動した。

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