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アサシンズ・トランジション ~引き篭りが異世界を渡り歩く事になりました~  作者: ユウキ
第一章 ファースト・ファンタジー・オンライン
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EP.10 男のロマンを探しました

 自分の肉体の事を確認できたし、今度こそ部屋を物色しますかね。さっきは鏡を見た瞬間、外に飛び出て魔物とバトって来たしな。

 それにしても傷は付かなかったが、相手が雑魚のシャドーウルフだったからだ。今更ながらに何やってるんだと思ってしまった。これが上位個体のダークネスウルフだったら、危なかったかもしれない。


 シャドーウルフと言えば雪だるま一族のユキを思い出すな。プレイアブルキャラの一人? いや一体で、クラスはテイマー。そして真っ先にテイムするのがシャドーウルフだった。

 育て進化させるとダークネスウルフになる。

 アップデートを重ね対人戦ができるようになった時、最初は面倒なキャラだった。影移動ができ、いきなり背後に現れるんだもんな。ダークネスウルフになるとデバフ攻撃ばかりして鬱陶しかった。


 さて、気を取り直して部屋の物色。まずは俺が寝てる部屋にあるタンスからだ。何故タンスからだって? 決まっているだろ。そこに男のロマンがあるからだ。

 ナターシャちゃんは、どんなの穿いてるのかな? やっぱ大人っぽい黒かな? それもスケスケだったりして……。


「むふふふ……」


 おっと我ながら気持ち悪い笑みが零れてしまった。

 まずは上から……ん?


「弓?」


 それもかなり年季が入っているな。練習用かな? 今日ナターシャちゃんが出掛ける時、宝石が散りばめられた装飾の綺麗な弓を持って行ったけど、これで散々練習したのか?

 ちなみにナターシャちゃんが持って行った弓は装飾が綺麗なだけでなく業物と予想している。それなりの装備じゃないと魔物が跋扈(ばっこ)してる世界を歩こうとしないしな。


 さて、次の段は……トップス系か。この調子だと最後の段にロマンがあるかも。順番に開けて行けば、いずれエデンへ道が切り開かれる。期待が膨らむぜ。


「ただまま~……え?」

「………」


 暫し時が止まってしまう。お互いに見つめ合い何も発さない。互いの息遣いのみが鼓膜を打つ。


 つか、タイミング悪いわ! 何でこんな早く帰って来るのさ! エデンまで辿り着いていないぞ。

 いやいやいや、問題はこの空気をどうするかだ。誤魔化す? 何て? 引き籠りのコミュ症には、ハードルたけぇ~。


 というか俺の愛用してた暗殺者ならどうした? 誤魔化すか? いいや誤魔化さない。

 って訳で、スルーして続行だ! ここまでの思考は、わずか2秒。


 いざ、エデンを目指し次の段へ……この段はボトムズ系か。じゃあその次はインナー系かな? にしてもナターシャちゃんは地味というか、ツギハギだらけの服ばかりだな。こりゃあロマンの方もみずぼらしいかもな。


「ちょちょちょちょちょちょちょちょちょ……何してるのさぁ!?」


 ナターシャちゃんが泡食ったように慌てて駆けて来て俺の手を抑える。ちっ! あと二段だったのに止められた。

 つか、ちょを何回言った?


「……習慣」

「女の子のタンスを物色するのが習慣なのかい?」


 いや、老若男女問わず他人の家に入ったらまずタンスを調べる……ゲームでは、それを習慣にしていたしな。

 にしても……、


「女の……()?」


 そんな歳? 二十代半ばくらいの歳じゃないのかい?


「なんか文句でもあるのかい?」


 やば! ナターシャちゃんが青筋立てて眉間をピクピクさせている。それも笑いながら……器用だなおい。つか怖い……。


「……いや」


 そう言いながら物色を続ける。下の段から二番目の段。予想ではインナー系が入ってるタンスに手を掛ける。


「だから続けるんじゃないさぁ!」

「……どうした? 息上がってるぞ」


 秘儀話題反らし。


「誰のせいかい? ねぇ、誰のせいかい?」

「ん? そんな急いで帰って来たのか?」

「そうだけどそうじゃないさぁ! 女の子のタンスをあさる不埒者がいるからでしょう!」


 話題が反れないどころか藪蛇だった。


「……危険なものがないか確認しないとな」


 結局言い訳してしまったぁぁぁぁ!!!


「ないわ! あるのは調合室だけさぁ!」


 調合室というのは薬師ではあるナターシャちゃんが、薬を調合してる部屋らしい……中には入った事ないけど、ギコギコと音がするのが聞こえて来る事がある。おそらく何かをすりつぶしているのだろう……。


「……そうなのか」

「それより一番下は確認してないよねぇ?」


 やっぱりそこにロマンがあるのか。下から開けて行けば良かったかもな。いや、開けていたら手に取ってじっくり眺めていたかも。

 そしたら、そこにちょうど帰って来たナターシャちゃんに目撃され、変態と罵られていたかも。

 男なら普通だと反論してやりたいが、反論する暗殺者風の喋りなんてできんからなぁ。暗殺者ロールプレイしていないと、まともに話せないし。


「……これからだ」

「だから止めろって言ってるさぁ」


 言ってなかったけど?


「……危険な……」

「物はないさぁ!」


 遮られた。ここまでだな。諦めるか。


「それより随分動けるようになったみたいだねぇ」


 相変わらず器用に眉間をピクピクさせているよ。マジで怖いんですが……。


「……ああ」

「なら、今日からあんたは上の奥の部屋で寝なぁ。客間だった部屋だけど好きに使って良いさぁ」


 この家は二階建てだったし。上も物色したいと思っていたとこだ。ただね……まだ体怠いから階段登りたくなかったんだけどなぁ。だが、仕方ない。家主に逆らわないのが利口だ。


「……ああ」

「それとこの部屋は、あたいの部屋だから許可なく入らない事! わかったかい?」

「……ああ」

「……………………」


 めっちゃジト目で見られているよ。信用ないな~。


「ああ、しか言えないのかい?」

「……ああ」


 暗殺者ロールプレイしないとまともに話せません。


「……そうかい」


 まともに相手するの諦めたという感じで大きく息を吐いた。ごめんね~。引き籠りのコミュ症だから、まともに話せなくて。


「さて、夕食にするさぁ。アーク、テーブルに座って待ってて」

「……ああ」


 やっと顔が和らいでくれた。マジで怖かったな。

 って訳で言われた通りテーブルに座った。しばらくするとナターシャちゃんが料理を運んで来て、テーブルに並べて行った。


「……魚?」


 合成食材だけじゃないぞ! おお~久々のまともなメシだ。

 だが……魚しかない。醤油は? 米は? 味噌汁は? 魚以外は合成食材だ。まぁ贅沢は言えないか。


「そうさぁ。今日は港町ニール安く売っていたから買って来たさぁ。ただ残念ながら香辛料は高くて買えなかったさぁ」


 は~と息を吐くナターシャちゃん。それ塩すらないって事だよね? 味のしない魚かよ……。

 にしても……、


「……港町ニール?」

「そうさぁ。北に二時間歩けばあるよ。買い出し、いつもそこさぁ」

「……なら、ここはエド領?」

「そうさぁ」


 そうか。エド領だったのか。またMMORPGファースト・(F)ファンタジー(F)・オンライン(O)の世界という確信に迫ったな。まぁ俺の今の姿を見れば一目瞭然なんだけど。

 にしてもエド領かぁ……。初めてゲームのシナリオで訪れた時、ムサシのインパクトに大笑いしたな。


 あれは確かダームエルと出会って五年経ったくらいだったか……。ダームエルと出会ってから時間の経過があっという間なんだよな、暗殺者のシナリオって。

 まぁともかく、そうあれはダームエルが珍しく引き受けるか悩んでいた仕事だった……。

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