EP.01 フルダイブ型MMORPG
俺、高梨 治は引き籠もりだ。
何故引き籠りかって?
十五歳の中三の時に色々あってさ。
まぁそこは今語るべきではないな。
今、語りたいのは引き籠りだがバイトはしている。とは言え、在宅でできるものだな。
引き籠って、ずっと暇なのでパソコンいじりに興じてちょっとしたプログラムも組めるようになっていた。それでお金を稼いでいた訳だ。
尤も引き籠った最初の一年は、ほとんど何もしていなかったが。
そもそもお金が欲しいのには理由があった。フルダイブ型ゲームが欲しかった訳だ。
それも一年くらい前から話題になっていたMMORPGファースト・ファンタジー・オンラインをプレイして見たかった。
プログラムで稼ぎ一年、発売日にようやくお金が届き、念願のハードとソフトを購入したわけだな。
このゲームの素晴らしいとこはプレイアブルキャラの多さとストーリーの重厚さにある。
RPGに限らず従来のゲームは主人公に設定したキャラの専用イベントはあるが基本的に他のキャラとの違いは序盤とエンディングだけだ。
しかし、FFOは序盤だけではなく中盤もそれぞれのキャラ専用ルートが用意されている。
それ故にキャラストーリーの重厚さが話題になった。
そして、今日ハードとソフトが届き、逸る気持ちを抑え、まずプレイアブルキャラ全員の概要に目を通した。
その中で一際目を引いたのが暗殺者だ。
誰かと組む事はあっても基本的にはソロ。まさに孤高という感じで格好良い。
俺は、色々あって一人だ。まさに孤独……いや止めよう。悲しくなってきた。
ソロなのに孤独というのを感じさせない気高さに惹かれた。
しょっぱな両親に捨てられとか濃過ぎる。それも五歳だぞ。普通生きていけないって。
ゲームと言えば自分とは違う感じの者をロールプレイするのが醍醐味であり、その方が多いだろう。
俺も今までプレイしたゲームで、複数いるキャラから主人公を選ぶ場合は、自分とは全く違うキャラを選んでいた。
今回も敵組織と表では同盟を組み、裏ではレジスタンスをやっている王子とかも、なかなかそそられた。他にも突然変異の人語を介する魔物とか。
女っ誑しのトレジャーハンター……は、どうでも良いや。
ともかく他にも魅力的なキャラがいたが、暗殺者に少し自分を重ね……って、俺なんかの浅い人生と暗殺者の悲惨な人生を比べるのもどうかと思うが、これっきゃないと感じた。
さぁキャラを選んだら早速プレイだ!
俺は、ハードに電源を入れFFOの世界にダイブした……。