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第三十一話 ガレナと合気

「蟲に頼るのもいいが、そろそろお前の力とやらを見せてもらいたいところだ」

「俺の――本気だと?」


 イグルが顔を顰めた。一方でガレナは深く頷き、スッとイグルに目を向けた。


「お前が本物の魔人というのであればこの程度なわけがないからな」

「お、おいあまり煽るな――」


 自信に満ちたガレナの発言を見てサリーが息を呑んだ。それだけサリーは魔人に粗恐れを抱いているということだ。


 一方でガレナは確かに自信があった。ただし魔人はきっともっととんでもない力を秘めているという意味でだ。つまり自分の予想はあたってるに違いないと思っている。

 

 そのためか傍からはいやイグルすらも気づいていないが余裕に見えるガレナもわりと緊張していた。しかし合気の特訓を重ねることで動揺を悟られないだけの精神力を身に付けていたのだ。


 そして遂にその時が訪れる。


「いいだろう。そこまで言うなら見せてやる。この俺様の本気の本気! 蟲融合!」


 イグルが叫びあげ、その体が発光した。するとイグルの体が変化していく。全身を覆う甲殻に、巨大な羽。口元には鋭い牙が見え両手は鎌、更に毒を宿した尾が尻から伸びていた。

 

 その姿はまさに蟲の融合体。


「ふっどうだ? これが本気になった俺の姿だ」


 そう言って笑うイグル。体も山のように大きくなっており今のイグルから見ればガレナなど豆粒みたいなものだろう。


「ああ、中々の迫力だな」


 対してガレナの反応は淡白なものだった。


「ふん、怖気づかないのは褒めてやるが、果たしていつまでそんな態度でいられるかな?」


 イグルが不敵に笑いながら腕を振り上げた。直後、イグルの腹から大量の蟲が放たれる。


「魔蟲大解放!」


 イグルの合図と共に蟲が一斉にガレナに向かって襲い掛かった。


「合気――」


 ガレナが合気を行使。迫りくる蟲を次々と受け流す。だが蟲に集中するガレナにイグルの鎌と尾が襲いかかった。最初からこれがイグルの狙いだった。

 

 イグルにとってガレナの合気はよくわからない力だったが、それでもイグルはその力を観察し、一つの答えに行き着いた。それがこの戦法。つまりガレナの合気は二つの事に同時に対応出来ない。


 ならばそこに付け入ればいい。まずは魔蟲の攻撃。次に魔人イグルの攻撃。この連携はガレナには返せない。まして蟲との融合で今のイグルはパワーもスピートも神の領域に至っている。


「くくくッ、つまりこれで俺の勝ちと言うことだぁああぁあッ!」


 イグルが勝利を確信し、そして叫んだ瞬間のことだった。


「合気――」


 イグルの全身に衝撃が走った。そして次の瞬間にイグルの体は宙を舞っていたのだ。何が起きたのか理解できずに混乱するイグルであったが、それはあまりに単純なことだった。


 ガレナが合気を使ったのだ。


「な、何故だ!? どうして俺は吹き飛ばされたんだ!」

「簡単なことさ。お前の攻撃を俺が受け流しただけだ」

「馬鹿を言うな! そんなはずはない。お前の合気は二つの攻撃には対処できない――」

「……いや、普通に出来るが?」


 相手が小首を傾げ、イグルは驚愕の表情を浮かべていた。そう出来るのだ。一体ガレナがどれだけのあいだ合気を鍛え続けたと思っているのか。

 

 たとえ道先案内人として仕事を全うしていてもガレナの毎日は合気で始まり合気で終わる。


 そうやって生きてきた。それがガレナの日常だった。何千、何万、何億、何兆、何京と、何度でも何度でも何度でも何回でも何回だって何回だろうと何時だろうと何時間だろうと何日だろうと何年だろうと何世紀だろうと何次元だろうと何虚数だろうと何無量だろうと何乗だろうと何那由多であろうと何不可思議であろうと何阿僧祇だろうと何恒河沙だろうと何載劫だろうと何極光だろうと何無辺ろうと何無限だろうと何極微塵だろうとそう、何度でもガレナは合気をふるい続ける。


 そして今、ガレナは意識を極限集中させ、イグルに向けて飛び立った。


「合――気!」


 ガレナが再びイグルに向かって合気を放つ。


「グゥオオオォオォォオオオォオォオオオオ!」


 結果、最初に放った合気と追撃で放った合気。この二つが魔人イグルの中でぶつかり合い、そして――パンッ! という破裂音と共に消滅した。合気と合気のぶつかり合いにより対消滅したのだ――

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