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第三十話 魔人イグルの実力

「ガレナめ。中々いいおるわ! 流石はこの俺が認めた男だ」


 そう言ってスライが豪快に笑ってみせた。


「そんな呑気なことを言ってる場合じゃないだろう」


 呆れたように口にしたのは美しき女騎士サリーだった。


「ククッ、舐められた物か。だが当然だろう。我ら魔人から見れば人間など取るに足らない相手なのだからな」


 自信満々に口にするイグル。一方でガレナは全く別な考えを持っていた。


(全くこんな害虫をばらまいた程度でこいつは一体何がしたいんだ?)


 そうそれこそがガレナが舐めているといった理由だった。実はかつてガレナが山籠りし修行していた時にも様々な危険な蟲が現れた。そこは魔境と呼ばれる場所だけあってその凶悪さはイグルが生み出した虫など霞むほど。


 その経験故に、ガレナにとってイグルが扱う虫などそこらに生息している羽虫と何ら変わらないように見えて仕方ないのだ。


「お前の目的はなんだ? 何故俺たちを襲った?」


 今度はガレナから率直に疑問をぶつけることにした。するとイグルは笑みを浮かべながら語り始めた。


「我々の目的は一つだ」

「目的……それはいったい何なのかしら?」


 サリーが問いかけるとイグルは不気味に笑い答えた。


「我らの目的……当然フランという女を殺すことだ」

 

 ガレナの脳裏にフランの顔が思い浮かぶ。彼女は今どうしているのかと……。


 そしてこの男の言葉を聞いてスライもまた怒りを覚えたようで拳を強く握りしめていた。


「殺すだと……ふざけるなっ!」

「怒ったのか? だが安心しろ、すぐにあの世へ送ってやるよ」


 そう言うが早いかイグルが大口を開け、かと思えばイグルの体内から巨大なムカデが飛び出してきた。その姿を見た途端に皆が目を見開く。あまりにも異様で禍々しい姿をしていたからだ。そしてムカデはそのままガレナに向かって飛びかかる。


「合気――」


 その攻撃を避けることなくそのまま受け流したガレナであり、次の瞬間イグルのムカデは勢いよく弾き飛ばされた。


「馬鹿な!? 我が魔蟲はどんな奴だろうと一撃で葬ってきたはず――」


 驚愕するイグル。一方のガレナは落ち着いた様子で言葉を続ける。


「ちょっと大きい程度のムカデでどうにか出来るわけないだろう」


 ガレナの台詞にサリーとスライが目を丸くさせた。


「そ、そうか。つまりガレナにとってはアレが雑魚同然というわけか……」

「スライが苦戦してる相手だというのに……」


 二人の視線がイグルに向けられる。一方イグルは奥歯を噛み締めガレナを睨んでいた。


「……なるほど、少しはやるようだな。だがまだまだこちらには切り札があるのだぞ」


 イグルがそう口にした途端、再びイグルの口から魔蟲が飛び出す。


「まだいるのか……」


 呆れたように呟くガレナだったが、その表情は直ぐに厳しいものへと変わった。なぜなら魔蟲は一匹ではなく大量にいたからである。


「どうだ? これでもまだ私を侮るか?」

「そうだな。確かにこれは凄いな。だけどもういいだろう?」


 そう言って一歩前に出るガレナ。そして合気を行使した。


「合気!」


 イグルの体が大きく弾かれる。


「ぐぉおぉおぉお!」


 イグルの体が宙を舞い、そして地面に叩きつけられた。


「き、貴様、まさかこれほどの力を――」


 イグルが驚愕の声を上げるがそんなものは無視だった。


「スライ。こいつの相手は俺がする。だからお前は残りの蟲共を頼めるか?」

「任せろ! こんな蟲共に後れを取るようなら騎士の名折れだ」


 そう答えるスライに笑みを浮かべるとガレナはイグルへと向き直るのだった――

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