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第二十九話 ガレナと魔人イグル

 フランと一旦別れガレナが疾駆する。


「くっ、こ、この――」


 視界の先に魔人と戦う兵士の姿を見た。魔人の攻撃によって今にもやられそうな状態だ。


「合気!」


 すれ違いざまにガレナが合気を行使すると兵士を襲っていた魔人が吹き飛びバウンドしながらあっちこっちを跳ね回り最後はべチャリと地面に叩きつけられた。角もしっかり折れている。


「い、今のは――」


 兵士が目をパチクリさせるがガレナは声を掛けず町中を駆け回る。


 途中の魔人は全て合気で吹き飛ばした。ガレナは特に意識してないがこの合気の威力で魔人の角はポキンポキンと飴細工のように簡単に折れていった。


 こうして突き進んだガレナの目に見覚えのあるシルエットが飛び込んできたわけだが――







◇◆◇


「ぬぐぉおおぉおお! 離れろ! 離れろー!」


 スライに群がるは黒く小さな蟲であった。体をよじらせたり腕を使って暴れてみたりととにかく蟲を引き剥がそうと必死だが蟲は中々離れてくれない。


「無駄だ我が蟲は獲物を見つけたら食い尽くすまで決して離れはしない」

「ぐうぉおぉぉぉお!」

 

 スライが身悶える様子を見ながらほくそ笑む魔人。人が苦しむ姿を見ることに快感を覚えているようである。


「合気!」


 その時だった。力強い声が弾け、かと思えばスライの体に群がっていた蟲が引き剥がされ粉々に砕け散った。


「た、助かったのか?」


 スライが顕になった鎧に目を向け安堵の表情を浮かべた。


「怪我はないか?」

「おお! そうかガレナが助けてくれたのだな。助かったぞ」


 スライの顔がガレナに向けられ感謝の意を示す。


「元気そうで何よりだ。しかし――もしかして蟲が苦手なのか?」

「うん? まぁ蟲にもよるが……」


 スライが何でそんなことを? と疑問符混じりの顔を見せる。


(やはり蟲が苦手だから手が出なかったのだな――)


 一方でガレナの考えはこうだった。ガレナからすれば小虫程度の相手だったのもあり、蟲を追い払えなかったのは苦手だったからと推測している。


「まさか私の蟲をこうもあっさり跳ね除けるとはな」


 ガレナへと声が掛かった。見ると全身が瘤だらけの不気味な魔人が姿を見せた。


「こいつは?」


 ガレナが訝しげな表情で問う。


「そいつはイグルという魔人だ。気をつけろ。そいつは他の魔人とは明らかに別格だ」


 スライの発言を耳にしガレナが身構えた。ガレナの中ではスライは優秀な騎士だ。


 本気を出せば自分など足元にも及ばないだろうと思っている。そんなスライが警戒する相手だ。


 張り詰めた空気がその場に漂っていた。その時だった。イグルの腕が伸びガレナに迫る。


「合気――」


 ガレナは合気によって腕を受け流した。


「ほう。これを見切るとは少しはやるようだな」

「……俺も随分と舐められた物だな――」


 感心したように呟くイグル。一方でガレナは不機嫌そうに言葉を返したのだった――

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