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第十一話 まだまだ未熟

「い、一体何があったのだ」

「……一つだけ確かなのは、彼があの驚異的な魔法を上空に跳ね返したということだ」


 目を大きく見開きながらスライが誰にともなく問う。それに応じたサリーだが何があったかは判断がついていないようだ。その証拠に実際は合気による受け流しだが跳ね返したと思っている。


 もっともどちらにしてもとんでもないことという認識だが。


「しかし君のおかげで助かった。あやうくとんでもないところになるところだった」


 サリーがガレナにお礼を述べた。


「確かにあの火が燃え移っては大変だからな。その前になんとかできてよかった」

「はい? 燃え移る?」


 サリーが目をパチクリさせた。勿論周囲に燃え移る物がある時に火の魔法を扱うのはよろしくない。ただ、今の魔法は周囲が消し飛ぶ程の威力がありサリーの中では燃える燃えないと言ったレベルの問題ではなかった。


 一方で、わりとあの程度の炎は見慣れてるガレナにとっては木が燃えて火災になったら大変だったな程度の認識でしかない。そもそも合気があれば例え燃え移ったとしても消すことは可能だったりするが。


「くくっ、ぬははは! いや本当に驚いたぞ。まさかここまでとは。私など途中で慌ててしまい何も出来なかったというのに」


 ガレナとサリーが話していると、スライが大声で笑い上げ、ガレナに近づいてきた。


「いや、そんなことはない。殆どの敵は二人で倒している」

「はは、謙遜するでない」


 スライはガレナの実力を目の当たりにし清々しい表情でそういった。本気でガレナを見直したようだ。


「なるほど――やはり騎士ともなると違うな」


 ガレナが納得したように頷く。自分は二人のちょっとしたミスをカバーしただけなのに気を遣ってくれて心が広いのだな、と本気でそう思っていた。


「しかし今回は俺でもなんとかなったみたいだ。相手が大したことないようで助かった」


 ガレナが二人にそう告げた。勿論この意味は自分が勝てる程度の相手なら大したことないだろうという意味だが。


「そうか大したことない相手に……不甲斐ないな」

「う――」


 サリーが肩を落とし自らの力不足を恥じる。一方でガレナもまた複雑な表情になった。


「そうか――不甲斐ない。確かにそのとおりかも知れないな」


 サリーには自分が不甲斐なく見えたのだろう、とガレナは解釈していた。この程度の相手ならきっと彼らはもっと上手くやったのだろうと。


「――ふふ、なるほどそこまではっきり言われるとかえって清々しいな」


 そう言ってサリーが微笑を浮かべる。


「うむ。どうやらまだまだ精進が足りないようだな」


 スライが自分に言い聞かせるように口にし表情を引き締めた。それにガレナも頷いて返す。


「あぁ。そう感じている。何せ俺もまだまだ未熟だ」

「な、あれでまだ、未熟、だと?」


 ガレナの発言にサリーが驚愕した。もっともガレナは、自分に対して苦言を呈されているのだと思いこんでいたわけだが。


「――まさかここまでとは。いや、本当に驚きました」


 ハイルの声が三人の耳に届く。戦闘が終わったのを感じ取り馬車から出てきたのだろう。


「何か凄い音がしましたがどうかされたのですか?」

「お嬢様。少々厄介な魔物が現れまして――しかしその脅威は今取り払われました」

「うむ少々手こずったが――この男のおかげでな」


 そう言ってスライがガレナの肩を叩く。


「むぅ、やはり俺のせいで――」


 手こずったのは自分の動きが悪かったからかとガレナが反省していると、フランが近づき彼の手を取った。


「ガレナ――また助けられたようですね。本当にありがとう」

「い、いや、俺はそんな大したことは、その、参ったな――」


 ぎゅっと握られたことで感じるフランの手の温もりに、思考が定まらなくなるガレナでありつい視線を逸してしまう。


 とにかくこれで夜の危機は去った。その後は引き続き交代で見張りに立ったがそれ以上の問題が起きることはなく一行は朝を迎えたのだった――

ここまでお読み頂きありがとうございます。

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