表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラフトマスター建国記  作者: ウィースキィ
第一部 第四章 新たなる世界 【第二次王国 編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/289

第1話 新人クラフター誕生 


 キアナ王国の一件からしばらくの時が過ぎた頃、愁は長旅の疲れを癒すために村でゆっくりと過ごしていた。そんな彼に一通の手紙が届けられる。


 手紙を持ってきたのは、真面目で几帳面な事に定評のあるライトだった。村に到着したばかりにも関わらず、すぐに手紙を届けるあたり、ライトの律儀さが垣間見える。なんでも定期連絡のためにラリアガルド帝国へ戻った際、ラリアガルド帝国皇帝のノヴァン二世から愁に渡すようにと預かった手紙だという。


「愁さん、陛下から預かってきたお手紙です」


「わざわざ、ありがとうございます。移動で疲れていませんか?お茶を用意するので、座って待っていてくださいね」


 愁は手際よくお茶を用意しながら、ライトの顔色を窺う。長旅の疲れからか、その表情はあまり冴えない様子だった。


「ライトさん、顔色が良くないですよ。大丈夫ですか?」


「あ、いえ、体調は問題ないんですけどね……リリーが久しぶりに帝国に戻って、ちょっと張り切りすぎたみたいで」


「ああ、そういうことですか。気持ちはよくわかります」


 リリーニャは騒がしい子だ。決して悪い意味ではないのだが、その元気さゆえに保護者としては疲れてしまう。愁も同じ経験があるため、ライトの苦労はよく理解できた。


「ところで、璃里はどうしたんですか?姿が見えませんけど……?」


「リリーは部屋で寝ていますよ。村に戻って早々、疲れたみたいでぐっすりと」


「はは、璃里らしいですね。ライトさんも今日はゆっくり休んでくださいね」


「はい。そうさせてもらいますね……」


 ライトは愁が差し出したお茶を飲み干すと、自宅へと戻っていった。


 残された愁は、早速手紙を開封し、その内容に目を通す。


「さて、どんな内容だ……」


 手紙には簡単な挨拶とともに、アイラフグリス王国の動きが活発化していることへの注意が記されていた。そしてもう一つ、リルアの足についての話が書かれている。


 実は前回ラリアガルド帝国を訪れた際に、愁はノヴァン二世からこの世界にも義足のような技術があると聞いていたのだ。愁はリルアの失った片足のため、その技術を持つ技師を探してほしいとお願いしていた。それが今回、技師が見つかったという知らせにつながる。


「ふーん、なるほど……近々、帝国に来てほしいってわけか」


 もちろん、リルアの義足の話だけでなく、周辺諸国の情報や、今最も危険視されているアイラフグリス王国の動向についても話す必要があるが、今回、紹介してもらう技師の都合もあり、丁度今日から十日後にはラリアガルド帝国に向かわなければならない 計算になる。


「また遠出になりそうだな……」


 そう呟いた愁のもとに、リアの声が響く。


「またお出かけですか、愁さま?」


「おっ、リア!授業から戻ったんだね」


 朝早くからメラリカが村で実施する授業に参加していたリアが、今帰ってきたようだ。手紙に集中していたせいか、愁は帰宅に気付かず、少し驚いてしまう。


「はい!ただいま戻りました。それで、またしばらく村を空けるのですか?」


「うーん、今回はそんなに長くならないよ。ラリアガルド帝国に行って話をしてくるのと、リルアの義足を作ってくれるかもしれない技師さんに会いに行くだけだからね」


「そうですか……でも、最近ずっと村を空けているので……」


 リアの表情に微かに寂しさが滲む。彼女の言う通り、愁は最近村を空けることが多かった。ラリアガルド帝国での一件以降、すぐにキアナ王国へ向かい、休む暇もなかったのだ。


「今回は急ぎじゃないから、少しはゆっくりしていくよ。それに、前に約束したクラフトのやり方も教えてあげないとね」


「本当ですか?やった!わたし、作ってみたいものがあったんです!」


 リアは目を輝かせながら愁を見つめる。その期待に満ちた瞳が、逆に愁を少しだけ不安にさせた。


 実は、この世界には『レベル』や『ステータス』の概念が存在しない。ゲームではないので、それも当たり前の事ではあるが、愁の〈鑑定の魔眼〉で見えるスキルや数値なども、彼のために分かりやすく数値化されているに過ぎないのだ。それはつまり、この世界にクラフターという職業が存在しないことも意味する。リアにクラフターとしての技術を教える方法も、正攻法では存在しないのだ。


 しかし、愁には一つだけ心当たりがあった。『師弟システム』だ。『WORLD CREATOR』において、職業を極めた者が行える制度の一つで、自らの職業にて弟子を取ることができる。この師弟システムを使えば、弟子になった者は新しい職業をお試しで体験でき、気に入った場合はそのまま転職も可能なのだ。


 つまり、この世界に存在しないクラフターという職業、スキルなどをリアにも使えるようにできるかもしれないのだ。


「よーし。リア、ちょっと待ってね」


「……? はい! 分かりました!」


 愁は少し緊張しながらも、コンソールを呼び出し、師弟システムを選択した。


 その画面には、選択可能なプレイヤーとして『リア・スタッドフェルグ』の名が表示されていた。それを見つけ、彼女を選択する。システムが正常に作動していれば、リアは弟子としてクラフターの職に就けるはずだ。


 本来であれば、相手側の同意が必要だが、リアに詳しい説明をする時間はなく、コンソールの操作ができないリアには、そもそもシステム上の同意ができない。なので愁は結果を待つしかない。


 画面に映る名前──『リア・スタッドフェルグ』。これは、リアのフルネームだった。今まで一度も彼女に〈鑑定の魔眼〉を使ったことがなかったことを思い出し、愁は一瞬考え込むが、今はそれよりも重要な確認事項がある。


「これでよし。あとは〈鑑定の魔眼〉で確認してみよう……」


 愁は魔眼を発動させ、リアのステータスを確認した。もし師弟システムが正常に処理されていれば、彼女の職は『クラフター』と表示されるはずだ。あわせて、彼女のレベルやステータス、持っているスキルをチェックし、クラフターに適しているかを見極める。


「さて、リアのステータスはっと……ん?」


「どうかしましたか、愁さま?」


「あっ、いや、これは……驚いたな、リア。君のスキルが凄いことになってるよ」


 愁は目を見開き、驚きの声を上げた。リアのステータス画面に映し出されたスキルは、予想以上のものだったのだ。


**


ネーム:リア・スタッドフェルグ

レベル:3

ジョブ:クラフター(師弟システム)

スキル:神の右眼 精密技巧 祝福されし者 探究者 理解補正


**


 一番目立つ名前の『神の右眼』というスキルは、詳細が読み取れなかったものの、他のスキルがいかに優れているかは一目瞭然だった。『精密技巧』はクラフターにとって非常に有用なスキルで、愁自身も持っているものだ。これがあるおかげで、細かい作業を高い精度で行える。


 また、『祝福されし者』は運を高めるスキルであり、クラフトにおける成功率に大きな影響を与える。『探究者』は真理を追求するための補正を得られるスキルであり、クラフターにはぴったりだ。そして『理解補正』は、物事を理解する速度や深さを高めるスキル。これらのスキルが揃っていることから、リアがクラフターに向いていることは明白だった。


「リアにはクラフターになれる素質がある。もしかしたら、俺と同じくらいにね」


「え?本当ですか?だったら凄く嬉しいです……わたし、愁さまの役に立ちたかったので、本当に嬉しいです!」


 リアは目を輝かせながら微笑んだ。その笑顔は、心からの安心感と喜びが表れており、愁はそんな彼女を見つめながら、胸の中にある思いが沸き上がるのを感じた。


 リアを含め、亜人族と呼ばれる種族の人々は、どこか特別な精神性を持っている。これまでに幾度も迫害を受けながらも、その心は決して歪まず、むしろ健気で優しい者が多い。それを目の当たりにしたとき、愁はますます彼女たちの笑顔を守りたいという思いを強くするのだった。


 自然と、愁の手はリアの頭に向かい、優しく撫でる。彼女は少し照れながらも微笑んだが、なぜ撫でられたのか分からない様子で、嬉しそうにしつつもキョトンとした表情を浮かべていた。


「愁さま?急にどうしたんですか?」


「ん?なんでもないよ。これから一緒に頑張ろうね。それで、リアは何を作りたかったのかな?」


 愁は、リアが作りたい物について尋ねた。彼女は最初に『作りたい物がある』と嬉しそうに話していたので、愁は自然とぬいぐるみや可愛らしい小物を思い浮かべていたが──


「下着です!」


「……ん?ごめん、もう一回言ってくれる?」


「下着です!」


 愁は耳を疑ったが、どうやら聞き間違いではなかったらしい。リアの返答は、期待していた方向とは少し違うもので、愁は肩を落としつつも苦笑するしかなかった。


「そっかぁ……下着かぁ……」


 もちろん、下着を作りたいというのは悪いことではない。むしろ、女の子らしい感性で作られた下着は素敵だとも思うし、愁以外に作れる人が増えた方がいいのも確かだ。今は愁だけが女性用の下着を合間を見つけては作成しているのだから。しかし、愁がリアの答えに期待していたものとは少し違っていた。なにせ愁は、可愛らしいぬいぐるみやアクセサリーなどを想像していたからだ。


「ちなみに、どうして下着を作りたいの?」


「えっと、もちろん他にも作りたい物はあるんですけど、前にスフィアさんに見せてもらった本に色々な種類の下着が載っていて、それがとっても可愛かったんです!それで皆にもプレゼントしたいなって思いまして!」


「あ、ああ!あの雑誌ね、ドレスとかも載ってたやつ」


 そういえば、前にラリアガルド帝国でスフィアにドレスを作った時、彼女に渡した雑誌には、可愛らしい下着もたくさん載っていたことを思い出す。


「はい!駄目ですか……?」


 リアが悲しそうに愁を見上げてくる。その表情に、愁は目を逸らしながら小さくため息をついた。教えること自体は問題ない。しかし、下着の作り方を教えるとなると、どうしても微妙な気持ちになってしまう。


 クラフターの衣服作成は、作る物のイメージを詳細に描き、細かい装飾や形状を頭の中で組み立てていく技術だ。だが、これを女の子相手に教えるとなると、下着のイメージや装飾について言葉で伝えることがどうにも気まずい。自分が想像しているそれを、リアに口にするというのはどうにも戸惑う。


「いや、駄目ってわけじゃないんだけど……んー。よし、分かった!お教えしましょう!」


 言葉にしたものの、内心は半分やけくそだった。しかし、目を輝かせて期待するリアの視線を裏切ることは愁にはできなかった。そもそも、この世界にはまだ上も下も下着という概念があまり普及していない。こちらが変に恥ずかしがるのも、なんだかおかしな話だろう。


 それに、もしリアがこれを機に下着作りを覚えてくれれば、愁にとっても気が楽になる。さらには、需要があれば売りに出すことだって考えられるのだ。それなら一石二鳥じゃないかと、自分に言い聞かせながら、愁は心の中で意を決する。


「ありがとうございます!愁さまっ!」


「あ、うん。いいよいいよ!それじゃあ、雑誌持ってきてくれるかな?作りたいもののデザインとか知りたいからさ」


「わかりました!すぐに持ってきます!」


 リアはびっくりするほど素早く雑誌を取りに走っていった。


(そんなにクラフトが楽しみなのかな?)


 その笑顔からも、やけに嬉しそうな様子が伝わってくる。愁としても、それは嬉しい限りだ。結局のところ、クラフターにとって大事なのは楽しむ心だ。どれだけ技巧を持っていても、心から楽しんで取り組まなければ、良いものは作れない。そう考えると、リアはクラフターの素質を十分に持っている。楽しそうに学び、挑戦する姿は、将来の大きな成長を予感させるものだった。


「持ってきました!えっと、まずはこれが作りたいです!」


「どれどれ……ん?こ、これ?」


 小走りで戻ってきたリアが指さした雑誌のページには、とてもじゃないがリアの年齢で身に着けるにはあまりにもセクシーで大胆な大人の下着が載っていた。こう、なんだか、紐っぽいやつだ。


「えーっと……」


 一瞬、言葉を失う。だが、ここで冷静さを保たなければいけないのだろう。この世界の価値観と、愁が元々いた世界のそれは違うのかもしれない。それを変だとか、おかしいと決めつけてしまうのは良くない気がしていた。


(しかし、これは……)


「ちょっと待って。これは、リアが欲しいやつなの?」


 念のための確認で問いかけると、リアは頬をわずかに赤くして急いで首を横に振った。


「ち、違いますよ……?これはスフィアさんが欲しいって言っていたので。わたしはこういうのはまだ早いかなって思ったんですけど……」


「あ、ああ。スフィアね!納得したよ。でも、ちなみにだけど、こういうのは普段使うものじゃないからね?」


「そうなのですか?じゃあどんな時に使うんですか?」


 リアの無邪気な質問に、愁は言葉を詰まらせる。


「ま、まあ、詳しくは知らない、かな」


 スフィアの悪ふざけで無駄に心配してしまったことと、自分で墓穴を掘ってしまったことに少し苦笑いを浮かべる愁だった。


(い、いや、とりあえず、リアが大胆な子ではなくて、正直ほっとした。心底安心したよ)


「とりあえず、練習だから別な物にしようか。そうだな……まずはタオルとかを作ってみようか。イメージが大事なんだけど、タオルならすぐに思い浮かべられるでしょ?」


「あ、はい!わかりました!よろしくお願いします!」


 リアは可愛らしくぺこりと頭を下げ、愁からタオルのクラフトに必要な素材を受け取る。


「じゃあ、これを持ってね。この布はタオルの素材になるんだけど、本来は作りたいものの形や模様を頭の中でしっかりイメージして、魔力をその中に流し込むことで望んだ形に作り上げていくんだ。ま、とりあえずやってみよう。最初は普通の真っ白なタオルで良いから、目を閉じてイメージするといいかもね」


「はい!わかりました!……で、出来るかな?」


 リアは布をしっかりと手に持ち、目を閉じた。いつも使っているタオルなら、イメージはすぐにできるはずだ。だが、この技術は、コツを掴むまでが難しい。すぐにはできるようにならないだろうと愁は思っていたが、リアが目を閉じてから、数分後──リアの手元がほのかに銀色に輝き始めた。


「あれは……」


 光りはクラフター特有の魔力の発色だ。愁の魔力は黄金色だったが、リアはどうやら銀色の光を放つようだ。銀の光が次第に強くなるとともに、布が形を変え、徐々にタオルへと姿を変えていく。目の前で、リアの魔力に導かれた布が、ゆっくりと形を整え、ついに白いハンドタオルとなって完成した。


「リア?もう目を開けて大丈夫だよ。ほら、完成してるから」


「え?……い、いつの間に……?」


 リアがそっと目を開けると、そこにはしっかりと形を変えた布──純白のハンドタオルが、驚くほど綺麗に彼女の手の中に収まっていた。驚いた顔で手元を見つめるリアは、まだ状況を理解していない様子だ。どうやら無意識のうちに、初めてのクラフトに成功してしまったらしい。初心者によくあることだが、完成を自覚しないままに作り上げてしまうのだ。慣れれば、手応えで完成したかどうかが分かるようになる。


「リア、そのタオル、ちょっと見せてくれる?」


「あ、はい!こちらです、愁さま!」


 リアが大事そうに差し出したタオルは、ほぼ完璧だった。少しだけ形が不揃いで角が微妙に歪んでいるものの、初めての作品としては驚くほどの出来栄えだ。


「よくできてるよ、リア。初めてなのに、これはすごい。次は、完成した感覚が掴めるようになれば、さらに上達するよ」


「本当ですか……?よかった……!イメージするのが思ったより難しかったですけど、出来上がるとすごく楽しいですね!」


 リアの瞳が輝いている。愁はその様子を見て微笑みながら、こう続ける。


「そうだね、クラフトは楽しむことが大事だよ。楽しんで取り組めば、それだけ成長も早い。よし、次は少しステップアップしてみようか。タオルに柄をつけてみるのはどうかな?」


「柄ですか……?うーん、どうしよう……」


 リアは少し悩んでいるようだった。柄を考えるのは彼女にとって少しハードルが高かったのだろう。愁は優しく声をかけた。


「そんなに難しく考えなくても大丈夫だよ。雑誌に載っていた服の柄を参考にしてみてもいいし」


「えっと……それなら、このドレスの柄にしてみたいです!」


 リアが選んだのは、日本の伝統的な着物のデザイン──桜の花が舞い散るような美しい柄だった。初心者にはやや難しいが、リアの実力なら大丈夫だろうと愁は感じた。


「桜、だね。俺の故郷に咲いていた花なんだ。いつか、リアにも本物を見せてあげたいな」


「さくら……ですか?すごく素敵なお名前ですね」


「うん。満開の桜は本当に見事だよ。それじゃあ、柄を作ってみようか。タオルの作り方はさっきと同じ。今度はタオルが完成したって感じたら、そこに桜の花をイメージしながら少しずつ描いていく感じかな?はい、これが柄をつけるための糸だよ」


 愁から色とりどりの糸を受け取ったリアは、真剣な表情で再びクラフトに取りかかった。今度は少し感覚を掴んだのか、すぐに彼女の手元に銀色の光が灯り、タオルの形が浮かび上がっていく。桜の柄が徐々にタオルの表面に現れ、リアの手はますます巧みに動いていった。


 愁はその光景を見つめながら、驚かずにはいられなかった。自由な柄をつけるのは、通常ならば初心者には荷が重い。しかし、リアはものの数分で、美しい桜の模様が施されたタオルを完成させてしまった。


「愁さまっ!出来ました!どうでしょうか?」


 桜の花が見事に描かれたタオルを手に、リアは満足そうに微笑みながら、愁に見せた。


「おぉ、今度は一段と上手にできてるね!リア、すごいよ」


「本当ですか?やったあ!思ってた以上に楽しいです、クラフトって!」


 リアの興奮した声に、愁も嬉しそうに笑みを返す。


「楽しんでもらえたなら何よりだよ。それじゃあ、次は少し練習として、村のみんなにタオルを作ってあげようか?それぞれの好きな柄をつけて、一人ひとりに贈ってあげるんだ。慌てずに、ゆっくりでいいからね。全部作り終わったら、次のクラフトを教えてあげるよ」


 クラフトの基本はイメージだ。自分が好きなものを作るのは簡単だが、他人の好みに応じたものを作るのは一段と難しい。これができるようになれば、リアは一気に成長するだろう。


「分かりました!早速みんなに聞いてきます!」


 リアは素材を手に取り、嬉しそうに村へと駆け出していく。その姿は、まるで新しいおもちゃを手に入れた子供のように輝いていた。


 愁はリアが全員分を作り終えるのに一週間、いや十日ほどはかかるだろうと予想していた。しかしその予想は大きく裏切られることになる。リアはその驚異的な集中力と才能で、わずか二日で村人全員のタオルを完成させ、愁を驚愕させることになるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ