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トレント

 七階層に入ってすぐ、僕たちはソレと遭遇していた。


 毎度のごとく七階層に生息する魔物の情報はギルドにて収集済みだ。

 そして今回、七階層での遭遇の可能性がある魔物というのは複数種類存在する。

 それが、植物系魔物であり、その中の一種類の魔物からのドロップがポーションであるのだ。

 それも低確率ではあるのだが。


 ポーションを確実に手に入れようと思ったのなら、フロアボスを討伐してしまうのが一番手っ取り早い……らしい。


 まあ、今はそんなことはどうでもいい。

 現状で最も僕が気を割くべきなのは、眼前に佇む一本の木。

 根っこを足のように使って移動し、葉の一枚もついてはいない寂れた枝を手のように動かす魔物――キラープラント。


 別名殺人植物。

 ほかの魔物とは遭遇しても一切の敵対行動は見せないが、人間を見るや否や襲いかかる物騒な植物系の魔物である。


 攻撃手段は枝を鞭のようにしならせた打撃と自身の体を倒す重量攻撃のみ。

 単純な危険度としてはオークよりも下で、それに今回のような単独での行動が多いとあって七階層内では比較的討伐難易度は低めとなっている。


 加えて言うならば、こいつはポーションを落とさない。

 そう、僕が小さく告げると、源は「なんだ」とでも言いたげな表情で興味なさげに、虫でも払うかのように斧を横薙ぎ。

 それなりに硬度があるはずの幹を、スッパリと斬り裂いた。


 ここまでの道のりでレベルがアップしたのか、最初よりも一撃が重くなっているような気がする。

 そんな彼のような芸当は、熟達の木こりでも出来はしないだろう。


「次に行こう」


 源は黒い靄へと変わっていくキラープラントには一瞥もくれることはなかった。


 一度休憩を挟んだこともあってか、動きにキレが戻って来ている。

 これなら、僕たちも心配することなく見ていられる。

 とはいえ、ここまで源に任せる場面が多くなって来ている。

 次は僕から先頭に立って戦おう、と、そう判断したところで前方からさらなる気配を感じとった。


 いや、これは気配というか音だ。

 なにかを引きずるような音。


 警戒心を最大限まで引き上げて、僕は槍を構えた。

 それに習うようにして、白月さんと源も戦闘態勢に入る。


 現れたのは樹木であった。


 しかし、その見た目はキラープラントとは大きく異なる。


 まずはさっきまで聞こえていた音の原因、根っこの部分。

 一本一本がキラープラントとは比べ物にならないほどに太い。

 幹はキラープラントよりふた周りほど大きく、醜い人面が張り付いていた。


 攻撃手段は枝での打撃に加えて、刃物のような鋭利さを持った葉っぱを飛ばす遠距離攻撃、あとは赤く実った丸い果実による攻撃だ。

 トレントの持つ赤い果実は枝から離れてから強い衝撃を加えると爆破する仕組みなのだとか。


 トレント討伐時にはその果実がドロップすることもあって、それに関してはただ単にすごく美味しい果物だという話だ。


 僕はそこまで興味はないのだが、その果実はあまりの美味しさに金持ち連中がこぞって買い求めるのだと聞いたことがある。


 ただ、僕たちがこの魔物――トレントに求めるドロップアイテムは果実なんかじゃない。

 そう、こいつこそがポーションをドロップする七階層の魔物なのだ。


 確率は非常に低く、果実のドロップ率が三分の一程度だとしたら、ポーションは五十分の一といったところ。

 まあ、詳しいところは分かっていないみたいだが。


 そして、この話はもうすでに共有されている。

 つまり、トレントというのは源にとっては目下最大の標的であり――


「死ねぇっ!」


 連携を忘れて単独で突っ込んで行ってしまってもおかしくない相手なのだ。


 僕の予想は見事的中し、源は大斧を両手で持って突撃する。

 僕は一瞬焦りに体が強張り、出遅れたが、すぐさま気を取り直して源の後を追った。


 白月さんは背後からの援護の構えで、落ち着き払っている。


 源は突っ込んだ勢いのまま、遠心力を用いて斧を大きく振り回す。

 気迫のこもった雄叫びの後で、強力な一撃が胴体部に叩き込まれる。


 ――しかし、それはギィンという硬質な音と共に弾き飛ばされてしまった。

 およそ木と斧が衝突した時に聞こえる音ではない。


 斧と木がぶつかり合った部位をよく見てみると、少し凹みが出来ている程度で、ダメージはそこまで通ってはいないようだ。


 流石、七階層に出現する通常の魔物の中では一番強い種だと言われるだけのことはある。


 僕は即座に“黒鬼化”を発動させた。


 油断も、慢心もしない。

 ただ僕は、人事を尽くす。


 手が、腕が、足が、体が、真っ黒に変色していく。

 額から角が生え、全体が黒く染まったところで、体のうちから湧き上がる膨大なエネルギーを知覚した。

 以前よりも、さらにパワーアップしたこの能力の力……こいつでたっぷり試してやるよ。


 僕は高揚する気分を抑えられずに無意識的に唇を舐めた。

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