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探索者御用達武具専門店

「ここ……か?」


 僕らは立花さんに書き写して貰った探索者御用達の武具店までの案内図を元に遂にたどり着いた。


 外見としては真新しいお洒落な服屋といった感じ。

 武器防具なんて物騒な物を売っている店とは到底思えないような出で立ちである。


 が、何度案内図を見返してもここであるという事実は変わらない。


 僕らは困惑を顔に貼り付けながらも恐る恐る扉を開く。

 チリーン。

 扉を開くと鈴の音が鳴り響いた。


「いらっしゃいませー!」


 元気のいい声。

 しかも、想像していたよりも大分若い声だ。


 視線を向けると、そこにいたのは僕らと同い年くらいの女の子。


「本日はどういった物をお探しでしょうか?」


 僕らの視線に気づいた彼女はにこやかな笑顔を浮かべながら歩み寄ってくる。

 店内には僕ら以外の客はいないから、暇なのかな?


「えっと……ここは探索者御用達のお店だって聞いてきたんですけど……」

「ええ、あっていますよ」


 首を傾げる少女であったが、それにしては武器の類が全く見当たらないのは何故だろう。

 防具らしき物はいくつか見られるのだが。


 そんな僕の思考に気づいたのか、少女は再び口を開いた。


「武器は危ないですからね、店の奥に置いてあるんですよ。もし一般人の方が間違って来店しても大丈夫なように」

「ああ、そうなんですね」


 たしかに、そうか。

 最近いつも武器を手に持っていたから忘れかけていた。

 武器、それも刃のついた武器は危ないのだ。


 それに、店の外見が無駄にお洒落なこの店に、間違って探索者ではない人間が入ってきてもおかしくない。


 納得して、ウンウンと頷いていると、奥の扉が開かれてガタイのいい大男が現れた。


 あの源にも負けず劣らずの威圧感。

 身長は目測だが、百九十はあるのではないかというほどで、肌は黒く焼け、眼光は鋭い。


「あ、お父さん。お客さんだよ!」

「ん、ああ……いらっしゃい」


 ――お父さん!?


 僕は、いや恐らくは白月さんも心の中で叫んだ。

 だって、明らかに似ていないんだから。

 ごっついガタイの無愛想な大男と細身で可愛らしい笑顔を見せる少女。


 やっぱり、これで親子とは到底信じられない。が、本人たちが言うのなら本当なのだろう。


 僕は内心で考えていることを悟られまいと、無理矢理笑顔を作った。


「そんで、今日は何が欲しいんだい?」


 気怠げな低い声でそう尋ねられた。


「えっと……装備の新調を考えていまして」

「装備の新調ォ……?」


 大男はジロリと僕の体を凝視した。


「お前さんら、今はどこまで行ってんだ?」

「え……?」

「だから、ダンジョンの何階層まで進んでんだ?」


 僕が間の抜けた声で聞き返すと、男は少し苛立ち紛れに詳細を付けてもう一度説明を加えた。


「三階層、ですけど」

「……なるほどね。使ってる武器はなんだ?」


 男はカウンター下の小棚から一枚、紙を取り出して何やら書き始めた。


「僕は槍ですね」

「私は……短剣、です」


 白月さんは魔術、と言うのを躊躇った結果、短剣を使っているという設定にしたらしい。


「防具はどういうのがいいとかってリクエストはあるか?」

「リ、リクエスト、ですか」


 急にそんなことを言われてもな……。


「取り敢えず、軽くて丈夫なのが良いですね。後は動きを阻害されないものであればなんでも」

「えっと……わ、私も」


 白月さんは後方でバンバン魔術を撃つだけだから僕ほどの危険性はない。

 でも、魔物との一対一になる場面も無いとは言い切れない。

 それを考えると良い装備を買っておいて損はないはずだ。


 そして実は僕にとって、防具はあまり重要ではない。というのも、“液体化”や“黒鬼化”など、防具を身に纏うよりも有効なスキルによる防御手段が存在するからだ。

 特に“液体化”を発動させてしまえば物理攻撃のほとんどは効かない。


 これに加えて“適応”によってある程度攻撃を受ければ、同じ攻撃はダメージが入りにくくなる。

 まさにチートである。


 その為、僕にとっての本命は武器。

 良い武器が欲しい。


「了解。そんじゃあサイズ測っから兄ちゃんはコッチ来な。嬢ちゃんは……おい、オメェがやってやんな」


 男は僕を手招き、白月さんはこの男の娘である少女に手を引かれて別の部屋へと連れていかれた。


 まあ、それからは店の奥から色んな皮鎧を引っ張り出してきては着せられた。

 サイズはS、M、Lみたいに大雑把に決められているわけではなく、もっと細かい仕組みのようだった。


 そこから、予算の都合も合わせてようやく決まったのは二時間後。


「おい兄ちゃん、次は武器を選ぶからちょっとコッチ付いてきな」


 そう言って、男は僕を連れて奥の部屋の鍵を開けた。


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