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鑑定板

 結局、あのカードについてはよく分からなかった。

 現状、あれを調べる手段もないということでこの問題は先延ばし。

 今のところ体にはさしたる異変はないが、心配ではある。

 未知の物質が体内に吸い込まれたのだ。

 もしあのカードが問題で病気になったりでもしたらたまったものじゃない。


 とはいえ、差し迫った問題は他にもある。


「どうやって出よう……」


 ゴブリンに追いかけ回されてここまで来たはいいものの、逃げるのに必死でメモを取ることも出来なかった。


 一先ずは今ある荷物を確認する。

 一つは肩にかけたショルダーバッグ。

 その中にはメモ帳と筆記用具、五百ミリリットルペットボトルのお茶、携帯電話といくつかのお菓子だけ。


 あとは――


「この槍……か」


 ゴブリンから拝借した一.五メートル程度の鉄製の短槍。

 武器としては充分すぎる代物といえる。

 だがしかし、僕は槍を扱う技能なんてものはない。

 出来るとしたらせいぜいめちゃくちゃに振り回すくらいなものだ。


「でも、文句は言えないか……。今は武器があるだけマシって考えることにしよう」


 それにしてもこの塔に入ってからやけに独り言が増えた気がする。

 周りに人がいなくなると独り言が多くなるっていうのは本当みたいだ。


 いつまでもこの部屋にとどまっていても仕方がないと決心を決めて立ち上がる……が、ぐぅ〜と唐突に腹の虫が盛大に鳴り響く。


「さっき走ったからかな……? なんかお腹減ったな」


 とはいえ、あるのは少しばかりのお菓子だけ。

 みんな大好きチョコ菓子ポッ○ーとア○フォート。


 腹一杯、とまではいかないだろうが小腹を満たすくらいにはなってくれるだろう。

 お菓子を貪り食べ終わるとようやく行動開始。


 まずはいい加減に部屋を出る。

 でも慎重に警戒して。

 今度はゴブリンに気づかれないように。


 その前に扉を開けてすぐ、二方に分かれる道のどっちから来たのかという問題があった。


 僕は記憶に薄っすらと残る道筋を辿る。

 それが正しい道なのかは定かではないがとりあえず進む。

 もちろんのこと、メモは忘れない。


 何もない石畳の道を歩く。

 もう発光する壁にも慣れて新鮮味は感じない。


 足をただただ動かすこと一時間。

 変わったことがあるわけでもなく、時間だけが過ぎていく。

 景色は変わることなく石、石、石。

 ゴブリンの気配も感じない為、注意力が散漫になり始めた。

 ――そんな時。


 ベチャッベチャッと水気を含んだ音が響いて聴こえてきた。


 ゴブリンの足音とは毛色が違う。

 なら……違う生き物、いやそもそもこれは生き物が出せる音なのか?


 疑問は広がり、やはり僕は胸の内から溢れんばかりの好奇心に逆らえない。


 音の下まで近づいていく。

 ただしさっきみたいに痛い思いはしたくないので、最大限警戒。


 靴の音が極力鳴らないようにすり足で移動。


 ソロリソロリと歩を進め、僕の目に入ってきたのは青く半透明なゼリー状の物体。

 しかし物体というには自分の意思で動いているようにも見受けられる。

 その姿はまるでRPGに出てくるスライムそのもの。

 しかし、ゲームのように可愛くデフォルメされたものとは違いこのスライムは目や口は無く、ただの粘液の塊。加えて体の中央部には心臓のような臓器が浮かんでいて大変気色悪い。


 そんな目も耳も鼻も無いはずのスライムがどうやってか僕に反応。

 粘液で出来た体とは思えないほど俊敏な動きで地面を這って移動。


 たかだかスライムと侮っていた次の瞬間、僕の鳩尾に強い衝撃が走った。


「ぐぇっ! ……ゴホッゴホッ!」


 スライムの突進。

 それをもろに食らった。

 まるでサッカーボールを思いっきり腹に蹴り入れられたみたいな痛み。

 予想だにしなかった攻撃に思わず膝をつきかけたが、なんとか踏ん張る。


 僕は溢れ出ようとする涙を堪えてぶよぶよと形を変えるスライムを睨みつける。


「この野郎っ!」


 仕返ししてやる、と槍の柄を強く握りしめて構える。

 もちろんちゃんとした構えでは無い。

 本職が見たら怒られるだろうくらい滅茶苦茶で適当な構え方。


 でも、今はそんなことどうでもいい。


「はあぁぁぁぁ!!」


 ――このスライムにダメージが与えられるなら。

 気合いの入った一声と共に槍を突き出す。


 以前、テレビで見た武術家の真似。

 記憶は曖昧だけど大まかには覚えている。


 渾身の刺突はスライムの体を貫通。

 しかし、倒すには至らなかった。


 スライムは全く効いた様子も見せず再度突進の姿勢を見せる。


「まずっ!」


 焦り、思わず上ずった声が漏れる。

 当たる! その前に何とかしなくちゃ。

 そう思って槍を狙いもつけずに闇雲にぶん回した。


 すると振り回した槍の刃先に手応え。

 身構えて思わず閉じてしまった瞼をゆっくりと開ける。

 そこには半分に切断されたスライムの姿。


 よく見ると中心部に浮かんでいた臓器が真っ二つに断ち切られているではないか。


「成る程……スライムはあの臓器に攻撃しないと倒せないってことか……」


 しげしげとスライムの死体を眺めていると妙な現象が発生。

 僕の体がほんのりと熱を持ち、それと同時にスライムの死体が黒い靄となって消滅してしまったのだ。


「は……? え、いやどういうこと?」


 疑問と困惑で埋め尽くされていた僕の前にさらなる怪奇現象が。

 黒い靄が消え去るとそこにはさっきまではなかったはずの小さな宝石とそして一枚のカードが落ちていた。

 宝石? はキラキラと光り不思議な魅力を感じさせる。売ればそこそこの値段になることだろう。

 問題はこっち。カードの方だ。


「またこれか……」


 スッとカードを拾ってカードを見るが、やはり記載されている文字は読めない。でも、解る。


 ――【鑑定板】


 また、視界が白く染まった。

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