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自宅訪問

 家までは歩いて行ける距離だと言うのでこのままおんぶした状態で送っていくことにした。


 ダンジョンを抜けて、門前の警備員さんに二人分のライセンスを提示する。明らかに具合の悪そうな白月さんを案じているようだったが、事情を説明するとホッと顔を綻ばせた。


 警備員の方は年齢が六十代くらいのご年配だったので、自分の孫くらいの女の子がダンジョンなんて危険なところから出てきて顔色悪そうにしていたのを見て心配してくれたのだろう。


 僕は人の良い警備員さんに会釈をすると白月さんの道案内の元、彼女をおぶりながら道を進む。レベルアップのおかげもあってか人一人をおんぶしながら歩いていても大して体力を消耗しない。


 そして歩き続けること数十分。やっとの事でたどり着いたそこは中々大きな……というか結構な大きさを誇る和風なお屋敷があった。本当にここが? と疑心暗鬼になって表札をみてみるとそこにはたしかに白月とあった。


「まじかよ……」


 まさか彼女がお金持ちのお嬢様だとは思っても見なかった。予想だにしなかった豪邸に尻込みしてしまった僕はここでおいとましようかと白月さんに声をかけるが、返答がない。


 どうしたのかと見てみると瞼を下げて小さな寝息をたてているではないか。寝顔は可愛らしいものだが、タイミングが悪い。病人? を無理矢理起こすわけにも行かないか、と渋々インターホンを鳴らす。



 頼むから誰か出てくれ。そんな願いが叶ったのか、若々しい女性の声が機械越しに僕の耳に届く。


『はい、どなた様でしょうか?』


 白月さんとよく似た凛とした耳に良く残る澄んだ声。緊張感を隠しながら冷静を心がけて要件を伝える。


「白月……冬華さんの友人、というか知人の柊木というものです。えっと、なんて言ったら良いものか。冬華さんがダンジョンの中で倒れてしまったので送ってきたんですけど……」


 白月さんと僕の関係性を伝えようとして迷った。友人、といえるほど仲がいいわけでもないし、では何かと問われれば知人としか言いようがないわけだが、彼女は僕のことをどう思っているのだろうか。


『た、倒れた!? わ、分かりました。今、そちらに向かいますのでそこでお待ちください!」


 インターホン越しに聞こえる声からよほど慌てているのだろうことがうかがえる。マイクを切っていないのかバタバタと忙しない音までが聞こえてきた。


 バタンと屋敷の扉が荒々しく開かれて、出てきたのは二十代後半くらいだろうか白月さんをそのまま成長させたかのような美人さん。ただ違うところを挙げるとすればそのお胸様だろうか。彼女は白月さんとは比べ物にならないほどに立派は物をお持ちであった。


「白月さん……冬華さんのお姉様でしょうか?」


 息を切らせて走り寄る彼女に僕はそう問いかけた。だが、その返答は予想だにしないものだった。


「いえ、私は冬華の母の水穂と言います。あの、それで、娘は……」


 お姉さんだろうと思っていたこの女性が、なんと母親だった。若すぎるだろ、と思いながらも背におぶった白月さんをそっと下ろして顔を見せる。


 顔色の悪いのにいち早く気づいた彼女は「大丈夫なんでしょうか」と目尻に涙を溜めて詰め寄ってきたが、それをなんとか宥めて白月さんの言っていたことをそのまま伝える。


「魔術の使いすぎで気分が悪くなっただけみたいで安静にしていれば明日には治るそうですよ」


 そう言うと彼女は胸をなでおろし、安堵の息を吐いた。


「わざわざ娘を送っていただいてありがとうございます」


 どうやら僕は娘を送り届けてくれた親切な人という程度の認識を得られたらしく、感謝の意を伝えられた。が、僕はとにかくここから離れたくて仕方がなかった。


 こんな豪邸を見たこと自体初めてだというのに女性経験のほとんどない僕では彼女――水穂さん程の美人とまともなコミュニケーションを取れるとも思えない。ボロが出る前にさっさとここから立ち去ってしまいたい。そんなことを思ったのがダメだったのだろうか。


「そうだ、ちょっと家に寄って行かないかしら? 娘を送って貰ったお礼もしたいですし」


 彼女から反応に困る提案がもたらされてしまった。


「ええと……」


 本音を言うなら今すぐ帰りたい。でも、そんなに期待に満ちた顔をされたら帰りたい、だなんていえるわけないじゃないですか。


 僕は渋々、だが、顔には出さないように笑顔で「お邪魔します」と承諾の返答を口にした。するとすぐに水穂さんは白月さん――この場合冬華さんを担いだあと僕を手招いて家へと入っていく。


 母と娘。親子で容姿は似ている筈なのに性格は全く似ていないんだなと思いながら僕は彼女の後を追った。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公と冬華はボス部屋から家まで休まずに来たから、ボスの返り血をシャワーのように浴びたままの筈では? 既にこの世界では、返り血を浴びまくって全身真っ赤になっている人は珍しくないのか? …
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