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値段

今回ちょっと短いです。

 

「疲れたー」


 ため息と共に吐き出された愚痴は誰が答えるでもなく夕焼けの空気に溶けて消えていく。


 ダンジョンでの探索が一区切りついたところで僕は探索を中断して今、探索者支援所――通称ギルド会館まで来ていた。


 ダンジョンからほど近くに建てられたこの建物は魔物に襲われても籠城できるように限りなく頑丈な造りになっているようで外見は無骨でオシャレな感じは微塵もない。ただただ機能性を重視している。


 だがしかし、内装はその無骨なイメージとはほど遠く、カラフルな椅子や小綺麗な長机。ピカピカに磨かれたフローリングに洒落た壁紙。


「スゲーな……」


 内と外とのギャップに思わず感嘆の声が漏れる。そして僕は僅かに疲労を感じる足でカウンターへ向かう。


「本日はどういったご用件でしょうか?」


 ダンジョン探索の帰りなのか幾人かが傷ついた武器防具を身につけてカウンターで話し込んでいたので偶然一つだけ空いていたカウンターに行くと、中々の美人なお姉さんが対応してくださった。いや、よく見てみるとカウンターにいる受付は美形が多いような気がする。もしかしたら上がそういう人を募集して受付に据えたのかもしれない。


 そして二十代前半ほどのアイドルもかくやという美人受付嬢と相対して僕のテンションは爆上がりである。


 というかめちゃくちゃ緊張している。


「え、えと……ドロップ品の買取を、お願いしたいんですが……」


 予想通りというかなんというか、ものすごいどもってしまった。普通にキモいわこれ。インキャ臭が漂いまくってるよ。


「では、ライセンスと売却するドロップ品をこちらにお願い致します」


 そんな風に心の中で卑下しまくっていると受付嬢さんは嫌味を感じさせないニッコリ笑顔で口を開いた。ああ、心が浄化されるようだ。


 僕は彼女の言葉に従ってライセンスを提出し、カウンターの上に出された台に大量の魔石とその他ドロップ品を出す。


「け、結構多いですね……」


 驚愕に目を見開く受付嬢。さっきまでの余裕のある表情が崩れた。


「そう、ですかね?」


 僕にはそこまで多いという感覚はなかった。前回熊野さんと共に四人で行ったダンジョン探索では今回の数倍、いや十倍近い収穫があった。今日は様子見で済ませたのであまり戦利品は多くないと思っていたのだが、彼女の反応を見る限りそうでもないらしい。


「査定に少しばかり時間がかかってしまうかもしれませんのであちらの椅子にかけてお待ちください」


 手で示された先はカウンター前に並べられた待合席。それにわざわざ逆らうこともないので「わかりました」と了承の意を伝えると、指示に従い椅子に腰掛ける。


 それから待つこと五分。名前を呼ばれてカウンターに向かうとトレーに結構なお金と内訳の書かれた紙が置かれていた。


「おまたせいたしました。こちら、今回のドロップ品の買い取り額の明細です。ご確認ください」


 僕はトレーに乗せられた明細書に目を通す。


 ゴブリンの魔石一個五百円×十五個。ゴブリンの小角五十円×十個。スライムの魔石一個六百円×五個。強酸性スライム二百円×二個。

 合計一万一千四百円。


 ちょっとしたお小遣いと考えればいい値段だ。でもこれからもっと上に行けば更に大きく稼げるようになるはずだ。夢が広がっていくな。


「えと、こちらの値段でよろしいでしょうか」


 妄想に浸っていた僕をお姉さんの声が現実へと連れ戻す。


「あ、はい。構いません」


 値段に全く不満はない。でも、疑問がある。本当に気になることがあるんだが……これは聞けば教えてくれるものなのか。


 僕はダメ元で受付のお姉さんに質問する。


「あの、これってどういう基準で値段をつけているんですか?」


「ドロップ品ですか? それは簡単ですよ。【鑑定板】を使って鑑定しているだけなので」


 その回答は予想したものよりも遥かに簡単なものだった。というか僕は【鑑定板】を自分のステータス確認くらいにしか使ったことがないからか思い至らなかった。


 若干の恥ずかしさを覚え、頬が僅かに熱を持つ。受付のお姉さんはふふっと上品に笑うと「そんなこともありますよ」とフォローしてくれた。ええ人や。


 そんなこんなで僕は彼女と二、三言葉を交わして売却金を受け取り、そういえば今月の家賃まだ払ってなかったなと思いながらギルドを去った。


受付がジジババだとなんかやる気出ないよね……


やっぱ受付嬢は美人設定にしたかった(願望)

異論は認めない。ちなみにヒロインじゃないですよ?

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