第6話
初めて感想を頂きテンションがうなぎ上りです。
次はさらに短いスパンで投稿できるようモチベーションを維持していきたいと思います。
ただ勢いに任せて書いた部分もあるので文脈やキャラの性格がぶれているかもしれませんがご容赦を
理事長の言った言葉にまだ理解が追い付かない。
確かに使い魔召喚は、使い魔と契約し、魔力を譲渡することでその使い魔の力を借りるというものである。
しかしそれが一体どうして『精霊界からの精霊の召喚』から『現世界からの人間の召喚』になってしまうのか。こんな現象は実技ができない分沢山の書物を読んできた俺だけど、全く欠片も触れたことがない。
「ふむ、そういった契約なのか。なるほど」
もう一人の当事者である王女殿下は俺とは逆にとても冷静そうに見えた。いくら王族だからといっても落ち着き過ぎではないだろうか。
「あの、王女殿下はどうしてそんなに泰然としてられるのでしょうか?」
思わずそう尋ねてしまっていた。今更この王女殿下が許可も無く質問したことに、「不敬だ」なんて言わないということは想像に難くないのだが、本来であれば生涯言葉を交わすことのない相手であっただけにどうしても畏れの感情が出てきてしまう。
しかしそんな俺の感情とは裏腹に、王女殿下はその端正な顔に微笑を浮かべながら
「なに、つい先ほどまで何も成せぬままゆっくりと死に近づいていく恐怖と諦観に苛まれていたことに比べれば、このような状況、些事、とは言わぬが随分と良くなったというものだ。それよりもそろそろ王女殿下と呼ぶのはやめにしないか?言ってみれば私とラルクは主従の関係ということになるわけであるし、別に私に遜る必要はないぞ?遠慮なくアリスと呼んでくれて構わない」
いやいや、いくらなんでも呼び捨てなんてできるわけがない。流石に不敬だと感じるし、事情を知らない者は俺が王女様を呼び捨てにしている途轍もなく不敬な奴に映るだろう。
「それではアリス様とお呼びしてもよろしいでしょうか?流石に対外的に敬称をつけないのは問題があると思いますので」
「確かにそれもそうだな。私自身が気にしなくても周りの目から見ればラルクが悪く見られるのは本意ではない。それで我慢するとしよう」
アリス様と呼んでもかなり敬意的なものが足りない気がするが、何とかアリス様に納得して頂けた。少し不満げなお顔ではあるが。というよりもアリス様自身が妙にフレンドリーなので距離感が掴みにくいといかなんというか。
「では、お互いの距離が一歩近づいたところで、早速アレ、言ってみましょうか!」
「アレ?」
ニコニコと、相変わらず満面の笑みのままの理事長が俺に期待のこもったような眼差しを向けている。何の期待かは考えたくないが。
「アレっていうのは一日に一度の命令に決まっているじゃないですか!いったいラルク君はアリスティア殿下に何を命令するのでしょうね?服従するしかない殿下にあーんなことやこーんなことを命令するのでしょうか!」
あーんなことや、こーんなこと!それを美しき戦女神の如きアリス様に!いや、いやいや、それは考えるだけでも不敬だろう。たとえをそれが男の性だとしても。
というか理事長、めちゃくちゃ生き生きとしているな。間違いなく俺たちの状況を楽しんでいる。そりゃあ傍から見れば面白可笑しくても、当事者である俺としてはあまりに困惑が大きいって話だ。
「ティーラ理事長殿がどんなことを想像しているのかわからないが、私からも一つラルクが私にする命令の内容について言及したいことがある」
あ、エッチなのはダメってことですね、わかります。というかアリス様、理事長の想像したことがわからないってどれだけ心根が真っ直ぐな方なのか。もちろん究極的には人の想像していることなんてわからないものだけど。こう、ニュアンス的に想像できるというか。
「私から言いたいことは一つ。私にする命令はラルクにとって褒美となるようなものにしてくれ」
どういうことだろうか?既にアリス様の側に侍っているということ自体が最上の栄誉であるみたいな感覚なのだが。などと、あまり理解を示していない顔をしていたのだろう。アリス様がさらに言葉を続ける。
「例えばだが、ラルクが私に右手を上げるよう命令したとするだろう?すると私は命令を遂行するために右手を上げて、それで命令が完了する。しかしその行為にはラルクに益となるものがないであろう?それでは私がラルクからもらっている魔力というものの対価にはあまりに不十分、ということだ」
なる、ほど。俺のアリス様への魔力譲渡を『王族の命を救っているという功績』として捉えると、それに報いなければ王家としての面子に関わる、ということだろう。確かに、王族の命、ましてやアリス様から見れば自身の命の対価として右手を上げてもらうだけ、というのは自分の命の価値が俺にとってその程度でしかない、と受けとることも出来て釈然としないだろう。
「ラルクは知っているか?魔力を即時回復する薬がどれだけ高価なのかを。魔力を100回復する薬が金貨10枚もするし、同じ量で1000回復する薬はその百倍の白金貨1枚だ。そして私はその1000回復する薬をここ最近は毎日飲んでいた。王家とは言えそれほど高価な薬を毎日用立てるのは大変なはずだというのに、それを言っても一向に父上は薬を用意するのをやめてはくれなかった」
この国では最小のお金が銅貨1枚から始まり、銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、そして金貨1000枚で白金貨1枚という比率になっている。白金貨のその金貨1000枚で白金貨1枚という性質上一般の平民が使うことはなく、というより一度も見ることなく生涯を終えるものがほとんどだろう。商いをしているものでさえ、名の知れた大商人か貴族の屋敷を扱う不動産の商人くらいしか扱ったことはないだろう。という感じのことを図書室で読んだことがある。
何故魔法に関係のない知識があるのかと言われれば、一時期自棄になっていたことがあり、ジャンルを問わず知識を蓄えていた時があったんだ。まあ流石に途中でこんな関係のない知識を覚えても魔法を使えるようになるわけないと正気を取り戻したんだけど気が付いたら2か月経っていたのはびっくりしたな。
また、魔力回復薬は一度に飲める量の上限が決まっている。一度にある一定以上の量を飲むと中毒症状が出てしまう。そのため一度により多くの魔力を回復できる魔力回復薬は一段と高価になってしまう。またより多くの魔力回復薬を作るには魔力保有量の多い薬師でもかなりの時間がかかってしまう。そのためそもそもの流通量が少ないことも高価な理由の一つに数えられる。これは授業でも習うことで学生であれば騎士科も魔法学科も知っていることだ。
「それに、だ。私自身が私の命を今も魔力を譲渡し続けて救ってくれているラルクに報いたいのだ。もちろん私に出来ることに限りはあるがなるべくラルクの願い、もとい命令を聞きたいと思うのだ」
ああ、本当にこの方は心根の真っ直ぐな方だ。そりゃあこれだけ気高く美しいなら国民の人気が高いのも頷ける。こんな会って間もない男に、言わば自分の生殺与奪を握られ、さらに一日に一度どんな命令をされるかもわからないのに自分のことではなく俺のことを考えてくれている。俺が、相手が王族だからと遠慮することなく悪辣な命令をするかもしれないのに。
「わかりました。それでは今日のお願い、もとい命令なのですが、恐らく王城で起きているであろうアリス様失踪事件を私の命と自由があるよう王様たちに説明してもらってもよいでしょうか?これでお互い命を救ってもらう同士になったので対等ですよ」
命令できる、と聞いた時からいの一番にお願いしようと思っていたことだ。なにせ王女様を誘拐した、となれば間違いなく処刑、それもすんなり首を切られるだけならまだましで拷問されてどんな手口でさらったのかとか自白させられる、なんて悪い想像までしてしまっていたのだ。
まあ今や俺の命とアリス様の命はつながっていると同義なのでそこを説明できれば命だけは助かるだろうが下手な説明をしようものなら一生牢獄で文字通り日の目を見ない人生になってしまうかもしれないのだ。
けど今度はそれを聞いたアリス様がきょとんとした顔をしたかと思えば
「ふ、くくく、あっはははははは!」
と大笑いしだしたしまつ。そのことにまたまた俺が面食らった顔でいると
「ふふ、そんなことは当たり前だろう?それで私がラルクの命を救ったとは到底思えることではないな」
とおっしゃった。それにしても先ほどまでの凛とした姿の微笑もとても綺麗なものだったけど、今の笑顔はより自然というか、さらに可愛さが足された感じというか、見惚れて顔が熱くなってきているのが自覚できるのに全く目を逸らすことができない。
そんなポーっとした俺の耳に、笑いを堪えているのか頬がピクピクとしている理事長から爆弾が落とされた。
「呆けているところで悪いですがあなたたちに伝え忘れていることがありました。契約の中に制約があって、一つはアリスティア王女殿下はラルク君に危害を加えることができないというもの。もう一つはラルク君とアリスティア王女殿下は3メートル以上離れることが出来ないというものです」
え?
お読みいただきありがとうございました!
終わり方をもう少し引き延ばすか考えたのですがひとまずこの形で。
話のつなぎ方ひとつとってもやはり小説を書くって難しいですね。日々精進!




