第2話
序盤も序盤なのに話が進まなくて書く側もしんどいですね(^_^;)
よろしくお願いします!
コンコン、と学園長室に着いた俺は扉をノックする。すると
「入りたまえ」
と、厳かな声が聞こえてきたので取手を回して入室しようとすると扉が部屋に俺を招き入れるかのようにひとりでに開いていった。
「失礼します」
と、少し面食らったためか硬い声になってしまった気がする。あまり気にしても仕方ないので入った部屋を見渡すと、そこには学園長のみが座ることを許されているのであろう豪奢な椅子に座りこれまた重厚な作りの机に両肘を立てて指を絡めた上に顎を置いている厳格な雰囲気を醸し出している男性と、その学園長机、と呼んでいいのかわからないがそれの手前に、こちらはよく見慣れた俺の担任であるミリア先生が立っていた。
ミリア・コートレイ先生はコートレイ男爵家の長女で切れ長の目をした美人である。ブロンドの長めの髪を頭の後ろで団子にして、背は俺よりも少し高いので175あるかないかといったところだろうか。黒のタイトスカートをはき、素足は黒のストッキングに覆われていて靴はローファーを、上半身は白のブラウスを着ていて、出来る大人、という印象を受ける。御年26歳。胸が小さいことをコンプレックスにしているようで、調子に乗って揄おうものなら文字通りの地獄を見る、と無謀な経験者が語っていた。独身もタブー。
そんなミリア先生は少し険しい顔をしていた。やはりなにかやらかしてしまったのだろうか。そんなことを考えていると学園長が口を開いた。
「君を呼んだのは他でもない、君の現状についてだ。君は入学の試験時にシエルフィードでも10人といない魔力保有量測定不能という結果を出した。だが君は現在その余りある魔力を魔法の行使において扱えていない。この学校も国営とはいえ、決して慈善事業ではない。この学校の設備や学生の生活費などは国民の税から成っている。だがそれは国民へと還元されるものだ。騎士になったものが国民の安全を守り、魔法を学んだものが国民の生活をより豊かにする、そんな人材を育成するためにこの学校はあるのだ」
学園長の言葉が心に重くのしかかる。確かに今のままでは学園に養ってもらっている穀つぶしみたいなものだ。
「もちろん君が努力をしていないとは思っていない。それは先の定期試験の結果が物語っている」
学年末の定期試験。満点は1000点で、俺の総合点数は500点。丁度半分。内訳は筆記試験500点、実技0点という極端な結果だ。所謂頭でっかちというやつだろうか。何故自身が魔法を使えないのか、授業外でも学園の王城よりも巨大な図書館に籠って調べたり、何度も授業で習ったところを復讐して実践したりした結果である。だが実技がからっきしであるため、学年内では最下位だったりする。筆記試験だけで見たら同率一位ではあるのだけど。ちなみにもう一人の一位は総合980点を叩き出しているこの国の第二王子様だ。しかも噂では剣術にも秀でていて、当初は騎士科に入るだろうと噂されていたのだが、実際には魔法科に在籍している。
そして、学園長の言葉は続く。
「そこでだ、君には2年次生に上がるための課題をクリアしてもらいたい。その課題とは、魔法科なら誰もが得ている使い魔を召喚することだ。これが出来たら、将来性があるとして2年次に上がってさらなる努力に励んでもらいたい。だが、もしできなければ……、この学園を去ってもらう」
「そ、んな……」
伝えられた内容に動揺が隠せず、言葉が全然出てこない。
「我々教育者側としても非常に心苦しい。何も学園とて退学させたいわけではないのだ。魔力保有量の測定不能者はそう簡単に現れるものではない。こちらとしても是非魔法を使えるようになってほしいのだ。しかし、このままでは他の学生、ひいては国民に示しが付かない。今回の課題は学園側も全力でバックアップする。ミリア君」
「はい」
今まで学園長の言葉に口を挟まなかったミリア先生が返事をして自身に俺の意識を向けさせた。そして俺の緊張を解す為か、先ほどとはうってかわった微笑を浮かべ、俺に話し始める。
「実は、すでに召喚の為の陣を描く場所を準備してあるの。陣を描くのに使用する魔法液は授業の実習用に使う一般的なものじゃなくて学園が用意できる最高級のものを用意しているわ。陣自体私が描いてもいいけど、どうする?」
「いえ、自分で描きます」
ミリア先生が俺に提案してきてくれたが、断った。これが最後、になるかもしれない。なら、なにか一つでも言い訳や後悔の要素になりそうなものはしたくなかった。全て自分でやって失敗するならば納得も出来る、と思う。
「そう、それじゃあ移動しましょうか。学園長、失礼いたします」
そういってミリア先生は学園長に頭を下げ、俺に付いて来てというような視線を向けて廊下へと通じる扉を開けた。
「わかりました。学園長、失礼いたします」
俺も学園長に頭を下げミリア先生が待つ廊下へと足を向ける。そして室内から出ようとしたとき学園長が
「ラルク君、健闘を祈っている。良き報告を待っているぞ」
と激励の言葉をくれた。
「ありがとうございます。頑張ります!」
俺は再度学園長に頭を下げ、今度こそ廊下へ出て扉を閉めた。そして移動し始めたミリア先生の少し斜め後ろを歩いて付いて行く。
「召喚を行う場所は学園の許可がないと学生は立ち入れない場所なの。この学園がこの地に建てられた理由の一つでもあるわ。そこは普通の場所よりも魔素が濃い場所の。だからより精霊を呼びやすいはずよ」
「そんなところがあったんですね。知りませんでした」
「当たり前よ。生徒には公開されてない情報だもの。もちろんこれには守秘義務があるから。何があっても人に話してはダメよ」
「はい」
神妙に頷いて、その後もミリア先生の後に続く。そんな話も相まって俺の緊張はいやがおうにも高まっていった。
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「さて、我が主、先ほどの少年は如何でしたかな?」
場所は学園長室。そこで先ほどまで学園長として敬われていた男が虚空へと話し掛ける。そこには誰もいなければ物も何もない空間。
その場所が突如歪んだかと思えばその歪みから一人の少女が姿を現す。幾重にもフリルのついた豪奢なドレスを着た、人形と見まがう程整った顔立ちでワイン色をした髪をツインテールにしてカールがかかっている。
「そうね、一言でいうなら、規格外かしらね」
少女から紡がれた声はとても可愛らしく、幼さを含んでいた。しかしその声とは裏腹に少女の醸し出す空気はどこか妖艶さすら感じるほど大人びたものだった。
「それはいったい、どういう意味でございましょうか?」
長年少女に仕える男をして、少女の真意を測りかねた。魔法を一つとして行使できない少年。それを自らの主ほどの人物がそう評す。よもやマイナスな意味での評価ではあるまい。
「私と比べても規格外、そういう事よ。久々に魂が震えたわ」
そう言った彼女は戦いているのか、興奮しているのか。
「こんな面白そうな人材、退学なんて勿体無いわ。いざとなったら何か適当な理由を付けて学園に在籍させなさい。久方ぶりに楽しめそうだわ」
そういって自分に学園長という立場を押しつけている少女が微笑みを浮かべているのを見て、学園長は波乱の予感を感じるのであった。
お読みいただきありがとうございました。
もっとテンポ良く書きたい。あと執筆スピードも。
この文章量でこんなに時間掛かるってorz




