第1話
小説読むのは簡単でも書くのは難しいですね(^_^;)日進月歩で頑張りたい。
それではよろしくお願いします<(_ _)>
そもそも、どうしてこんなことにことになったのか、今日一日を思い返してみる。
起床はいつも通り学園に通う一時間前で場所もいつも通りの学園生に宛がわれる寮だった。
体を起こしたら洗面所に向かい、顔を洗って歯を磨いた。学園から支給される歯ブラシは魔法がかかっていてさっと磨くだけで口内の歯を綺麗にし、口内の病気を予防するという優れものらしい。この歯ブラシを製作した魔法具師はとても偉大だと思う。
そのあと手早く制服に着替えを済ませ、魔法科生の証であるマントを羽織り、寮の食堂へ朝食を摂りに行く。
支給された朝食をこれも普段と変わらず一人で食べる。食べ終わって食器を返却しよう席を立とうとしたところで、ここ数日は絡んで来てなかったチョロゲイ・ハゲットとその取り巻き二人の計三人で僕を囲った。
「よう、誰かと思えば落ちこぼれのラルクじゃないかぁ。まだこの学園に居たのか?いい加減お前のように魔法を使えない出来損ないにはこの学園に居場所がないってことを自覚しろよな!」
そう嫌味たっぷりに言い放ち、全体的に太っているせいであまりよくない顔立ちを歪ませ醜悪と形容するしかない笑みを形作った。取り巻き二人もニヤニヤしながら「そうだそうだ!」と煽ってきて、それを見ている他の学生も今まで何回も同じ光景を見てきたせいか誰も止めようと動く者はいない。
俺はいい加減毎度同じことを宣うチョロゲイに辟易しつつも口を開くことはせず、通行の邪魔だという意思を乗せた視線を送るだけに留める。まともに相手をしたらチョロゲイはますます調子づいて時間を取られるというのは今までの経験則からわかり切っていたからだ。
このチョロゲイという男、自分が侯爵という貴族階級の出身という事を笠に着て、自分よりも身分の低いものには高圧的な態度を取ることが数多くあった。逆に自らより立場の強いものには媚びへつらい、実は周りから顰蹙を買っているという事に取り巻きともども気づいていない残念な奴らなのだが、とりわけ俺はよく奴の標的に選ばれている。
「全く、いったいどんなイカサマをしてこの学校に入ってきたんだよ。入学試験時の魔力測定で測定不能をだしたってのもなにかの間違いだろ。だってお前、魔法全然使えねぇもんなぁ!使い魔すら召喚出来ていないし。ほんとに魔力持ってるのかぁ?」
それ以上うえがあったのかとさらに顔を歪ませながら嫌味の続きを言い始めた。
確かに俺は魔力の保有量が多い。というのは実はこの学園に来る前に、村で成人の儀の際に計測したことで学園の試験と同じ結果だったことで確かであるはずだ。その結果を見て村の皆がこれなら魔法の才があるに違いないから王都の学園に通わせてやろうと寄付を集めてくれて、俺を送り出してくれた。
シエルフィード王国は国力を上げるための一つの政策として、王都の郊外に唯一学園を作り、そこで才能ある者を育成するという施策を100年前から続けていて、そのおかげか3大国のひとつとしてグランチュールの人々に認識されている。
このシエルフィード王立学園には2つの科があり、騎士科、魔法科に分かれている。一年に一度、4の月の初めに15才から17才の間に試験を受けることが出来、騎士科は戦闘力を、魔法科は魔力保有量を測り、それぞれが基準以上のものだと認められれば晴れて入学が認められる。
魔力は大なり小なり誰しもが持ってはいるが、基本的にはその身に宿している魔力量は少ない人間が多く、しかも遺伝しない、と学術的にはとらえられている。なので貴族や大商家など、裕福な家は学園に入学させるために、家庭教師を雇って自分の子供に魔法を覚えさせたり戦闘訓練をさせていたりする。この学園に子供を通わせるのはその家にとってのステータスになるからだ。しかし魔力保有量というのはお金ではどうにもならず、逆に何の訓練や教えを受けていなくとも、魔力保有量という一点のみで学園に入学できる平民もいる。
魔法科の合格基準値は公表されており、1000をラインとしている。魔力保有量はどれだけ訓練しても持って生まれたものより100以上限界値が増えることはないというのはこの世界で暮らしている人々の間では周知の事実で、これに満たないものはすぐさま魔法科に入学するのは諦めるという。余談だがこの魔力保有量を測定する魔道具は10000までしか測定できず、それ以上は測定不能となるため、10001だろうがそれよりももっと桁が上だろうが同じ測定不能とみなされるらしい。どちらにせよ世間的には雲の上の存在という認識。
なので魔法科の学園生は騎士科よりも少ないのだが、騎士科も圧倒的に数が多いというわけでもない。騎士科の卒業者は極一部の例外を除いてシエルフィード王国騎士団に入団することが出来るので入学の段階から厳しい選別が行われているという。また、魔力保有量が魔法科の基準である1000を超えていても騎士科に入学するものもいるので特別魔法科生が騎士科生よりも格が上というわけでもない。
もちろん魔力保有量の少ない者でも、剣術や体術、攻撃魔法等を組み込んだ総合的な戦闘力を高めることで十分入学できる可能性があることはこれまでの歴史が証明しているので、普通の平民が騎士団への入団を夢見て、実際に合格することもあるので富裕層ばかりが在籍しているわけでもない。魔法科の方は完全に各人の潜在能力なので富裕層と平民の割合は半々くらいである。
平民もそれなりに居るため、かつ国の施策という事もあり(金銭的な問題で才能が育たないのは問題であると国は捉えているのだろう)学費は基本的になく、それどころか学園に在籍している3年間の生活も保障してもらえる。試験を受ける際に銀貨が1枚必要であり、よっぽど貧乏でなければ用意できる金である。まあうちはそのよっぽどの内に入っていたんだが。
少し話は逸れたがそんな俺が試験の際に魔力測定で計測不能を叩きだし、鳴り物入りで入学したのだが蓋を開けてみれば一年たっても使い魔の召喚や魔法の行使も出来ない落ちこぼれっぷりを晒したわけで。
それはそれは格好の獲物に見えたことだろう。入学して1月経ち、俺だけ使い魔を召喚出来ていない現状が知れ渡れば、魔力保有量に引け目を感じていたであろう(嫌味を言う際にことあるごとに大きな魔力を持っているにもかかわらず魔法が使えないことを揶揄してきていたので)チョロゲイはその時期から頻繁に俺に絡んで嫌がらせをするようになってきた。
最初は俺も悔しくて言葉を返していたが(もちろん相手は貴族なので不用意なことは言えなかったが)、それが何回も繰り返されていくうちに一周回って冷静になるというか、どうでもよくなるというか。そんなことよりも如何にして魔法を使えるようになるか、使い魔を召喚できるようになるかを考える方がはるかに建設的であったので嫌がらせが始まって1ヶ月で折り合いを付けることが出来ていた。
そうはいってもこの現状、座っているところを囲まれているので身動きが出来ない。どうしたものかとおもっていると、
『魔法科1年ラルク、今すぐ学園長室に来なさい。繰り返します、魔法科1年ラルク、学園長室に来なさい』
という放送が響きわたった。 何事だろうか。特になにかしたというわけでもないはずだが。
「おいおいラルク、とうとう何かやらかしたのか?それとも入学時の不正がばれたんじゃないか~?」
にやにやした、正直な気持ちを表すなら気色悪い顔を浮かべているチョロゲイ。腹は立つが呼び出しを受けた以上行かなければならないので立ち上がる。
「そこを通してくれないか」
「はあ!?おまえ誰に向かって口聞いてるんだよ!敬語をつかえ!この平民風情が!」
「この学園では貴族も平民も関係ないと学園長は入学時に仰っていたが?それとも学園長に反意があるのか?それならチョロゲイが邪魔して遅れたことと一緒に報告させてもらうが」
「ちっ!口答えしやがって!行くぞお前たち」
「へい」「でゲス」と二人の取り巻きも去っていくチョロゲイに追従していく。へい、とでゲス、も敬語ではないと思うがそれは許容できるのか。
なにはともあれ、学園長室へ向かおう。どんな話なのか今からドキドキするが話を聞かねば始まらない。願わくば、良い話でありますように。
お読み頂きありがとうございました!