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いちご惑星  作者: 水菜月
シーズン1
1/5

苺型ロボット

苺を想うなら、時が止まってもいい。


 ぼくの誕生日は、あろうことかバレンタインデー、2/14だ。


「母よ、せめてあと一日、ぼくを押し込めておくことはできなかったのか」

「自分が嬉しくなってあわてて出てきちゃったくせに、よく言うわよ」

 めっちゃ軽くあしらわれている。


 男がこの日生まれっていうのは、なんとも複雑だよ。いらぬ同情を買うんだ。どことなく哀れが滲んじゃうんだよね。



 さあ、またこの日がやって来た。

 ひとつもチョコをもらえなかったぼくが意気消沈して家に帰ると、いつものように小包が届いた。

 都会に住む母方のおばあちゃんからの、律儀なバースデープレゼント。

 ぺこり。ぼくは、おばあちゃん家の方角に向いて頭を下げる。


 今年は、有名な高級フルーツパーラーの箱だ。

 まず、包み紙を丁寧にはずす。テープで紙をビリっと破いてしまうと、なんだか不吉だからね。

 それに、後でブックカバーにするんだから大事にしないと。包むのはラノベだけど。もちろん自宅専用のだけど。

 フルーツ柄のしおりも一緒に作ろうか。乙女か、ぼくは。


 箱を開けると、整然といちごたちが並んでいた。

 おお、それぞれが、右斜め45度の角度できっちり整列している。

 4×8=32個の大粒の苺。一糸乱れぬいちごの兵隊みたいだな。宝石のように美しい。


 まだ誰も帰ってこないけど、ぼくの誕生日だし、いいか。

 ひとつ取り出して齧ってみる。まだ、ちょっと堅い。

 でも、いちごのシャーベットみたいで、味は濃厚。うわ、おいしい。

 ぼくは残りを箱ごと、冷蔵庫にしまった。


 今思えば、確率は32分の6。32のうち26があいつらだったから、たべられるカモフラージュ苺は6個だけだったことになる。


 夜ごはんの後に、デコレーションケーキが登場したこともあり、結局家族はその夜はそのいちごに手を付けなかった。



 夜中に水を飲みに行ったら、冷蔵庫の中から、がさがさ音がするんだよね。

 なんだろうと、扉を開けてみたら……。

 何粒か、いちごたちが歩いてた。足がありやがる!


 のん気に歩いていたが、こちらの視線に気付いて、あわてて足をひっこめてそのまま動かなくなった。

 でも、揺れてるよ。「だるまさんがころんだ」で止まりきれなくて、ぐらぐらしてる小学生みたいだ。

 上段や下段に、いちごが分散している時点で、ごまかそうとしてもおかしいだろ。


 一つをサンプリング。

 手のひらにのせてよくよく観察していると、めちゃくちゃ汗をかいている。

 頬赤らめてるのか、妙に熟したみたいになってるぞ。おい。


 いちごのほっぺには、アルファベットが刻印されてる。こいつはBか。

 じぃーっと見つめる。ぼくの視線の強さに限界に到達したらしく、あわてて箱の中に逃げていった。

 他のいちごたちも、急いでイン。みんなで力を合わせて、箱のふたをよいしょよいしょと閉めている。


 そう、こいつらは、実は送り込まれた苺型ロボット(刺客)だったのだ!

 宇宙からの(かどうかは甚だ謎だが)の使者!


「おやすみなさーい」

って合唱する声が、聞こえた気がした、深夜0時。




挿絵(By みてみん)

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