表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嗚呼、これが幸せな人生  作者: 杉岡昌明
3/4

杉田庄助、授賞式で殺意を向けられる。

 佳作を受賞した笹口健太のスピーチが終わった。

「続きまして、優秀賞の柿本水樹さん、前へ」

 水樹は緊張しながら席を立った。

「カチコチだな。勃起してんのか」

 庄助が水樹に速攻でセクハラをかます。水樹は無視を決め込み、壇上に上がった。

「皆様、早速ですが、ここで私の決意を述べたいと思います」

 少しばかり、どよめきが起こった。

「私、柿本水樹は……」

 後ろを振り向いて庄助を指さす。

「この男、杉田庄助を作家の世界から消すために、絶対に大物になりたいと思います」

 会場が困惑している様子だ。

「杉田という男は、クソ野郎です。こいつは、作家になってはいけない人間です。ですから、私が大物になって、この男を抹消します。削除します。デリートしてみせます」

 大きな拍手が沸き起こった。おそらく、会場にいる人間は、何かの余興だと思っているのだろう。

「今回、この場にお集まりいただき、誠にありがとうございました」

 水樹は席に戻った。

「言うねぇ、みーずきちゃん」

 水樹は、やはり無視だ。

「では、最後に大賞を受賞した杉田庄助さん」

 庄助は壇上に上がって、息を吸い込み、そして。

「俺は、大作家になる!」

 どこかで聞いたことがあるニュアンスの言葉を叫んだ。

 それだけ言って、庄助は席に戻った。

 会場では笑い声が起こっている。

 庄助は、水樹を見た。そして、唇を突き出す。

「君に惚れたぜ。チューして、お願い」

 それでも、水樹は無視する。庄助の方を見ようともしない。

「お前は、売れんぞ」

 庄助は突然、真顔になって水樹に言った。

「お前は、真面目過ぎる。馬鹿な方がいいんだよ」

「クソにお前呼ばわりされたくねえし。お前は潰れるんだよ」

 水樹は、庄助を見ずに言った。

 その言葉に、庄助は珍しく反論しなかった。

 

 授賞式が終わり、庄助は、担当編集者の小坂と今後の打ち合わせをすることになった。

 もちろん、二人の受賞者が庄助に会うことはもうないだろう。

 こうやって、庄助は孤独になっていく。認めてくれるのは、両親だけ。

 友もおらず、恋人もできたことがない。カラオケには、一人でしか行ったことがない。

 居酒屋で、ワイワイと騒ぎながら飲んだ経験なんて一切ない。

 だが、庄助は昔は、こんな男ではなかった。

 少なくとも、小学校を卒業するまでは。

 小学生の庄助は、天真爛漫、純真無垢な子供だった。中学に上がってから、今の庄助の原型ができた。もちろん、いじめが一つの原因であることはたしかだ。

 実は、それ以外にも、庄助がこうなった理由がある。

 だが、庄助の昔話は、またいつかの機会にしよう。

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ