杉田庄助、授賞式で殺意を向けられる。
佳作を受賞した笹口健太のスピーチが終わった。
「続きまして、優秀賞の柿本水樹さん、前へ」
水樹は緊張しながら席を立った。
「カチコチだな。勃起してんのか」
庄助が水樹に速攻でセクハラをかます。水樹は無視を決め込み、壇上に上がった。
「皆様、早速ですが、ここで私の決意を述べたいと思います」
少しばかり、どよめきが起こった。
「私、柿本水樹は……」
後ろを振り向いて庄助を指さす。
「この男、杉田庄助を作家の世界から消すために、絶対に大物になりたいと思います」
会場が困惑している様子だ。
「杉田という男は、クソ野郎です。こいつは、作家になってはいけない人間です。ですから、私が大物になって、この男を抹消します。削除します。デリートしてみせます」
大きな拍手が沸き起こった。おそらく、会場にいる人間は、何かの余興だと思っているのだろう。
「今回、この場にお集まりいただき、誠にありがとうございました」
水樹は席に戻った。
「言うねぇ、みーずきちゃん」
水樹は、やはり無視だ。
「では、最後に大賞を受賞した杉田庄助さん」
庄助は壇上に上がって、息を吸い込み、そして。
「俺は、大作家になる!」
どこかで聞いたことがあるニュアンスの言葉を叫んだ。
それだけ言って、庄助は席に戻った。
会場では笑い声が起こっている。
庄助は、水樹を見た。そして、唇を突き出す。
「君に惚れたぜ。チューして、お願い」
それでも、水樹は無視する。庄助の方を見ようともしない。
「お前は、売れんぞ」
庄助は突然、真顔になって水樹に言った。
「お前は、真面目過ぎる。馬鹿な方がいいんだよ」
「クソにお前呼ばわりされたくねえし。お前は潰れるんだよ」
水樹は、庄助を見ずに言った。
その言葉に、庄助は珍しく反論しなかった。
授賞式が終わり、庄助は、担当編集者の小坂と今後の打ち合わせをすることになった。
もちろん、二人の受賞者が庄助に会うことはもうないだろう。
こうやって、庄助は孤独になっていく。認めてくれるのは、両親だけ。
友もおらず、恋人もできたことがない。カラオケには、一人でしか行ったことがない。
居酒屋で、ワイワイと騒ぎながら飲んだ経験なんて一切ない。
だが、庄助は昔は、こんな男ではなかった。
少なくとも、小学校を卒業するまでは。
小学生の庄助は、天真爛漫、純真無垢な子供だった。中学に上がってから、今の庄助の原型ができた。もちろん、いじめが一つの原因であることはたしかだ。
実は、それ以外にも、庄助がこうなった理由がある。
だが、庄助の昔話は、またいつかの機会にしよう。