22話
会議室から出てそのままギルドを後にする
冒険者にはなったのだが依頼を受ける前にすることがまだまだあるのだ。
今日はこの後ニックスさんにある相談をしに行き、服と武器を手に入れにいきたい。
特に服は今無地の白Tシャツと黒のジャージだ。色合い的には目立たないのだが生地的にこの世界には無い物なので、見る人が見ればわかってしまう。早急にこの世界の服装に変えるべきだろう。武器に関しても、魔物が持っていた比較的ましな物がいくつかあるのだが、命を預ける武器なのでまともなのが欲しい。防具も当然手に入れるつもりだ。
今日の予定を考えギルドから出たところで鐘の音が聞こえてきた。今は12時らしく予定通り2時間程で終わったようだ。まずは昼食をとる事にする。ギルド周辺にはいくつかの屋台が出ており、そこで簡単に食べればいいだろう。
やっぱりまずは串焼きだろう
串焼きを売ってる屋台はいくつかあるみたいだが、そのうちの一軒を適当に選び一本買う事にした。屋台のおじさんに声をかけ300z支払い一本受け取る。何の肉か聞くとホーンラビットの肉だそうだ。食べてみると宿で食べたのと同じようにあまりクセのない肉だ。塩のみで味付けをしてるみたいだが、十分に美味しく食べれた。クセが全くなく、肉質も柔らかく食べやすかった。万人受けする肉だと思う。日本でよく俺が食べてた100g100円の肉なんかとは比べるまでもなく美味い。
それなりに満足はしたがまだ十分に食べれる為、他の屋台を見てみる。選んだのはクレープを厚めに作ったような物だ。中には刻んだ野菜が入っており、その上に赤いソースをかけて巻いてある。トマトに似た赤い果実みたいなのを潰し作ってるソースみたいだ。それに加えて果実を絞ったジュースも売ってたので両方買う事にした。500z支払い屋台のおっちゃんに聞いてみるとナゴルと呼ばれる食べ物みたいだ。ジュースはレゴンの実を絞ったものらしい。一口飲んでみるとかなり酸っぱいが甘みも少しあり後味がよく美味しいジュースだった。早速ナゴルとやらを一口かじってみる
「辛っらぁぁぁぁっぁ」
慌ててジュースを飲む。すると辛さを全く感じなくなる。むしろ辛さの中にある旨味がわかるようになった。
「わはははは、トガの実は初めてか?」
「かなり辛いだろ、けど慣れてくるとそれがクセになるんだ。レゴンのジュースと合せれば辛さも無くなるからな。どうだ?」
たしかにひと口目は油断してた事もあり叫んでしまった。その後気を付けながら食べるとたしかに辛いのだが後をひく。ジュースを飲めば辛さを洗い流し、口の中には旨味だけを感じる。食べ続けてるとたしかにクセになるな。
「最初はビックリしたけどかなり美味いよ。ご馳走さん、また買いに来るよ」
「だろう?いつもここで焼いてるからまた来いよ」
今度は叫ぶなよっと言われ、苦笑しつつ屋台を後にした。
お腹も膨れた事だしニックスさんの店へ早速行く事にした
まずは東門まで行き仮証を返す。昨日の人はいないみたいだ。今日いる門番の人に声をかけ仮証を返した。その際ステータスプレートを確認され冒険者ギルドに登録してるのを確認されただけで簡単に手続きは終わった。これで何の問題もなく街に滞在することができる。
東門からまっすぐ中央の大通りまで続く道を歩いて行く。この道の左手側にニックスさんの店があると聞いたのだが中々見つからない。そろそろ中央の大通りが見えてきた時だ。1つの店の前を掃除している女性がいた。その女性には見覚えがあり、馬車に乗っていた20歳前後の美人さんだった。おそらくはあそこがニックスさんの店なんだろう。無事に目的の場所が分かり安堵した。中央の大通りにほど近い場所に店を構えてるとは、ニックスさんは結構やり手なのかもしれない。
店の前まで行き、掃除している女性に声をかける
「こんにちは、ニックスさんいらっしゃいますか?」
「あ、昨日の」
昨日一言も話す事はなかったが、どうやら顔は覚えていてくれたようだ。
「少しお待ちくださいね。今呼んでまいります」
美人だし声も綺麗だ、だが若干だが表情に翳りが見える。家から出される事になったのだからわからないでもないが。
少し待っているとニックスさんを連れてきてくれた
「これはタクヤ様、早速のお越しありがとうございます。それで本日はどういったご用件でしょうか?」
「こんにちはニックスさん。今日はですね少しご相談したい事がありまして伺いました。」
「左様でございますか。こんな所で立ち話もなんですので、こちらへどうぞ」
話は聞いてもらえるようだ。ニックスさんに案内され店内の奥にある部屋まで案内される。
「そちらへお掛けください」
おそらくは商談でもする部屋なんだろう。部屋の中央にあるテーブルにも装飾が施されており、3人は座れそうなソファーが両サイドに置かれている。部屋もそれなりに綺麗だ。ソファーに腰を下ろす、日本人の俺から見ても悪いソファーではない。この世界では高級品かもしれないが俺には分からない。
俺がソファーに座ると、表を掃除していた女性がお茶を持ってきてくれた。ニックスさんと俺の前にお茶を置くと一礼して出ていく。
「昨日迷宮都市より持ち帰ったお茶です。よろしければ試してください」
そう言われ口をつける。お茶と言われているがこれは紅茶だ。香りがかなりよく、紅茶自体もかなり濃い。
「自分はお茶に詳しくないですが、香りもよく美味しいですね」
思った事をそのまま伝えるとニックスさんは嬉しそうな顔で
「わかりますか。実はこのお茶かなりの人気商品でして、今回ようやく仕入れる事ができたんです」
「いやぁ、苦労しましたね。しかし苦労しただけの価値はあったと思います」
どうやら今回馬車で迷宮都市まで仕入れに行っていたらしい。その目玉商品がこのお茶みたいだ。俺には価値はよくわからないが、これだけ喜んでいるのだから売れる商品なんだろう。そしてその帰りに俺を拾ったって事だね。
お互いお茶を飲み一息ついたとこで聞いてきた
「それでご相談があるとの事でしたがどういった事でしょう?」
簡単にいくとは思っていないが、頼みたい事を伝える事にした
「実はですね、馬車に乗ってた3人の女性がいましたよね。その3人を引き取らせていただけませんか?」
今回ニックスさんに相談があると言ったのは馬車にのってた3人の女性を引き取りたかったのだ。決してやましい気持ちがあって引き取りたいわけではない。全くの0とは言わないが、なんせ昨日見た3人共可愛かったしね。
少し考えるそぶりをみせ
「たしかタクヤ様は冒険者になる為にこの街に来られたとお聞きしましたが?」
「おかげ様で今日無事に冒険者になる事ができました」
そう言ってステータスプレートを出しニックスさんに見せる
ニックスさんはプレートを見て何やら驚いたみたいだ
「無事に冒険者登録を済まされたようで安心致しました」
「しかし、いきなりEランクしかもレベル20ですか。いやはや森の中で暮らしてたと聞きそれなりの実力はあるのだと思っていましたが、予想以上でしたね」
プレートを返してきたニックスさんは申し訳なさそうに
「ですが、彼女達をお売りするわけにはいきません。彼女達はあくまでも店の従業員として引き取りました。引き取った以上は責任もございます。冒険者のような命の危険がある仕事をさせるわけにはいきません」
どうやら勘違いさせてしまったようだ。彼女達を引き取るのは冒険者になってほしいわけではないのだ。
「すいません説明不足でしたね。彼女達に冒険者の仕事を手伝ってもらいたいわけじゃないんです」
ニックスさんにわかるように詳しく説明することにした
「実はですね、冒険者になったのはあくまでも手段の1つなんです。冒険者として稼いだらある商売をしたいと考えているんですよ。その時の従業員として彼女達を引き取りたいんです」
ニックスさんはある程度納得したようだが、まだ疑問もありそうだ。少し考えた後聞いてきた。
「一点お伺いしたいのですが、それはかなり先のお話ですよね。なぜ今この話をされたのですかな?」
当然の疑問だろう。まだ冒険者になったばかりで今店の従業員として引き取りたいと言っても謎しかないよね
「ニックスさんに相談したいのはまさにそれなんです」
「その事を相談する前に1つ教えてください。彼女達1人につき一か月どの程度の維持費がかかります?彼女達に支払う賃金も合せて教えてください」
怪訝な顔をしつつも、一応は教えてくれた。大体だが1人あたり3万zあれば食費から賃金まで賄えるそうだ。
「そうですね。それでしたら一月当たり10万zをニックスさんにお支払いしますので、彼女達3人に簡単な読み書き、計算、接客の仕方を教えていただけませんか?」
そう聞くと、どうやら納得はいったようだ。この話はニックスさんにとっては得な事しかないと思っている。店内に案内された時に分かったのだが、必要以上に人がいすぎる。店内はそれなりに広いのだが明らかに過剰な従業員がいたのだ。見ていない場所にもおそらく人はいるだろう。馬車の中で聞いたようにニックスさんはお人好しすぎるのだろう。これだけの人がいればいくらそれなりに稼いでいると言っても奴隷達の維持費でかなりの利益が無くなっているだろう。そのことからこの提案はすぐに受けるかとも思ったが、まだ思案中みたいだ。おそらくは引き取った責任感があるからだろう。昨日会ったばかりの俺に信用がないのもあるんだろうな。そんなわけで更に条件を付けたす事にする。
「それに加えて更に条件を付けましょう」
加えた条件は最低でもCランク冒険者となる事、月の初めに10万zを支払いそれが一度でも払えない事があればその時点でこの契約はなくなる事、ただし依頼等で街にいない可能性がある為毎月5日までに支払う事にした。そして最長でも3年間で
この契約は消える事を条件として提示し、更に彼女達が望まなければ引き取る事はできないと条件を加えた。
「タクヤ様その条件はこちらにとって有利すぎませんか?」
「何も問題ないですよ。こちらとしてもあらかじめ読み書き、算術のできる従業員を確保できると考えれば十分なメリットがありますので」
ニックスさんもこの条件にはなんの問題もなく後は彼女達が同意すればいいそうだ。彼女達と話をさせてもらう為、部屋へと呼んでもらった。どの程度の期間かわからないが最速でも1年はかかると思っているだろう。その間の維持費をこちらが支払い、読み書き等を教える。契約が途中で破棄となっても読み書き、算術が使えれば従業員としても今後役立つであろう事をニックスさんはきちんと認識してるはずだ。
待つこと数分
彼女達をニックスさんが連れてきてくれた。彼女達は意味がわからず不安そうな顔をしていたので座ってもらい早速説明することにする。ニックスさんと取り決めた条件面を丁寧に話したとこで、一度ニックスさんには部屋をでてもらった。おそらくニックスさんがいれば本音で話せないかもと思ったからだ。
「そんなわけで時期的にはいつになるか分からないが、3人をいずれ従業員として雇いたい。どうだろうか?」
かなりの時間悩むと思ったのだがすぐ返事があった。
「その申し出ありがたくお受けしたいと思います。ご挨拶が遅れましたが私は「あ、まだ自己紹介はいいですよ」」
一番年上の美人さんが了承の意を示し、自己紹介しようとしてきたのを遮った。
「俺は冒険者としてこれからお金を稼ぐ事になる。その気はないが途中で命を落とす可能性もあるだろう。なので今は3人の名前すら聞かない。数か月で契約が切れたとしてもお互い名前も知らない方が気にせずにすむだろう。どの程度先になるか分からないが、商売の準備が整った時にもう一度3人の意思を再確認したいと思う。その時うちで働いてくれる意思があるならその時に名前等、皆の事を教えてもらいたい。それでどうかな?」
3人ともそれで問題ないらしい。そして先ほどすぐに了解の意を示した事の理由と聞くとニックスさんに引き取られたはいいが、店につけば予想以上の人がいて自分達がかなりの負担となってる事がわかったそうだ。それで3人ともこの店にいるのが少し気まずいらしい。今回の話を受ける事でニックスさんの負担が確実に減る事になるので、すぐさま了解したようだ。
なんにせよ、今回は一応の同意を得られたので良しとしよう。3人との話を終えたのでニックスさんを呼んでもらう
3人が出ていきすぐニックスさんは戻ってきた
彼女達と一応の同意をしたことを伝え、アイテムボックスから大銀貨2枚を取り出し渡した。プレートのスキル欄はすでに隠してあったのでアイテムボックスのスキルを所持してる事に多少は驚かれはしたが。
「冒険者になったばかりなので来月くらいまでは色々と忙しくなると思います。なので来月分も今日支払っておきますね」
「かしこまりました。今回の話は私にとっても大変助かりました。今後ともよろしくお願いいたします。それで将来何の商売を行うか聞いてなかったのですが、お聞きしても宜しいでしょうか?無理にとはいいませんので」
特に知られて困るような事はないので教える事にした
「ホテルってわかりますか?」
「高級な宿って事ですよね」
どうやらホテルで通じるようだ。日本では宿(旅館)とホテルには法律により明確に違いがあるのだが、この世界ではどうなのかわからない。高級な宿をホテルと呼ぶなら問題ないだろう(どういう違いがあるのか気になる人はググって調べてみてほしい)
「えぇ、ホテルを経営したいと思ってます。どうしてかというのはちょっと説明できないんですけどね」
あくまでも興味と彼女達への責任感から聞いただけみたいだ。変な商売だとさすがにニックスさんも困るだろう
その後お互いにこれからもよろしくと挨拶をかわし、ニックスさんの店から出る事にした。
ホテルの経営に動くにはまだ早すぎるが、従業員の確保くらいなら問題ないだろう。読み書きや計算を教えといてもらうのは決して無駄にならないだろうしね。この世界の識字率はかなり低いというのを前に聞いていた為、今回ニックスさんに相談させてもらったのだ。読み書き、計算のできる奴隷を一定数集めるのも大変そうだしね。最初の従業員として10人は確保したいのだ。そして俺の持つホテルの異常性を考えると奴隷以外の従業員は難しい。今後も時間をかけて従業員として雇う奴隷を探していきたい。
ニックスさんの店を出て中央の大通りへと向かう。中央の大通りには様々な店が並んでおり目的の店がすぐ見つかると思ったからだ。まずは目についた服屋へと入り、適当に服を買う。服を選ぶセンスなど持っていない俺は店員さんにお任せだ。上下共に5着づつ買う事にした。色だけ指定して後はお任せだけどね。黒と白をメインで選んでもらった。この服はいずれもグリーンキャタピラーと言われる虫系の魔物から取れる糸で作られた服だそうだ。この世界ではそれなりに一般的な物となるらしい。この上位種にレッドキャタピラーがいるらしいのだがこちらから取れた糸は高級品らしい。わずかだが魔法耐性の付く服が作れるみたいだ。また他にも絹の服も置いてあったが、絹は肌触りはいいのだが外で活動する冒険者には似合わない。一部の金持ちとかが着る高級品だ。なんにせよこれでこの世界の服を手に入れた。一般的な物といっても新品の為5着で20万もしたのだが。一般的には古着を買う人が多いのだそうだ。現代日本に生まれた俺はなんとなく古着は嫌だったので、高いが新品を買った。必要経費として割り切ろう。
その後目についた武器屋で剣とフォレストベアーの皮を鞣した鎧とブーツを手に入れた。今回はあまり質は考えず、必要最低限としたため一件目に入った店で適当に選んだのだ。かなりいい品もあったのだが今の所持金では手に入れる事もできなかった。なので今回は最低限の装備としたのだ。次装備を買う時には質にもこだわり店を探そうと思う。剣は両刃の片手でも両手でも使えるバスタードソードと呼ばれる物を選んだ。質はそれなりだが今まで使っていたものよりはかなりいい物だ。防具については全く分からない為、動きやすい物を頼んだらこれを選んでくれた。最低限の装備でも値段はかなりした。剣が剣帯もつけて36万、鎧とブーツで25万だった。かなりの出費だがこれで見た目は一応冒険者と見える事だろう。
全ての買い物が終わった頃にはすでに辺りは暗くなってきてたので、適当に目についた宿に泊まることにした。
HTP 1318/30000
所持金 21万9000z




