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冒険者の日常の日々  作者: りゅうけんたろう
第一章 下級下位
12/28

日常11

 煌めく軌道がゴブリンの腹に突き刺さった。


 目を白黒させてゴブリンが倒れる。

 狙ったのは武器持ちのゴブリンだ。三匹の中ではリーダー格で、持っている武器は石槍だった。

 服装はコシミノ要警戒のゴブリンたちだ。


 何事かと残りの二匹が辺りを警戒する。

 痙攣して倒れているゴブリンの麻痺効果が切れるのは二から三分。

 いつもすぐに止めを刺しているので、長時間拘束するほどの麻痺毒を塗布していない。

 それに麻痺毒の強さによって価格が違う。なので、今買えるのはこの一番安い麻痺毒だけなのだ。効果は短いがしっかりと相手の動きを止めてくれる。


 手に持っていた針を筒に入れもう一匹も狙い撃つ。


 辺りを見渡していたゴブリンの脇腹に刺さる。

 痙攣して倒れた。残りは一匹。


 最後の一匹は敵の攻撃が何かわかっていないようだった。


 このままならいけると思い三本目の針を筒に入れようとした。

 しかし、ゴブリンも無い知恵で考えたのだろう。痙攣して倒れている仲間を抱えて盾にした。

 二匹目を倒したときにこちらの位置がばれたようだ。


 仲間を突きつけるようにして近寄ってきている。


 仕方ないので、針は針入れに戻し吹き筒は腰に差す。

 置いていた手斧を掴み草むらから駆け出る。


 駆け出た勢いのまま盾にしたゴブリンの首を切り飛ばす。

 一瞬の強化で片手でも両手で振るった時のような威力がでた。


 脇に両腕を入れて掲げるように盾にしていたゴブリンの顔が、切り飛ばした首ごしに見えた。

 噴き出る血を被り、その表情は恐怖に満ちていた。


 どうやら相手は戦意を喪失しているようだ。

 それならばこのままの勢いで倒してしまいたいところだ。


 怯えたゴブリンは、首のない仲間をこちらに突き飛ばした。

 それを左手の盾で受けとも払いのける。

 噴き出た血で体が汚れるのはお構いなした。


 ゴブリンは怯えながらも、なんとか戦意を奮い立たせたようでしっかりと身構えた。

 お互い見合う。相手に武器はない。一気に間合いを詰めて首を吹き飛ばせば勝てる。


 そう思い一気に踏み込み、首元めがけて手斧を振り下ろす。

 ゴブリンはその行動を読んだのかどうかは分からないが、踏み込むと同時にこちらに掴みかかってきた。

 首を狙ったのだが間合いを詰められたので狙いがずれた。振り下ろした手斧を、手首を引いて何とか刃の部分を相手の肩にあてる。


 ゴブリンは痛み耐え右手で掴みかかってくる。

 それを左の盾でかち上げる。その時、腕を強化する。

 ゴブリンは大きくのけぞった。


 その隙に手斧を両手で持つ。

 相手がたたらを踏んでいる隙に振りかぶった。


 面食らっていたゴブリンはこちらの状況に気付いた時には体と頭は離れていた。



 残りは一匹。


 振り返ると石槍を持ったゴブリンが復帰し始めていた。


 急いで仕留めねば。


 近づくと槍を杖にして立ち上がり、すぐに槍構えて突いてきた。

 槍使いと戦かったことがなかったので間合いが読めない。相手はまだ立っているのがやっとだが、槍を水平に構えて間合いを詰めさないようにしていた。


 残り一体なので時間をかければ倒すことは容易だ。

 しかし、こちらには怪我人がいる。傷の具合も見ていないのだ。早く手当てしないと助からないかもしれない。


 左手で腹のナイフを抜きゴブリン投げつける。

 まだ、麻痺毒が抜けきっていないのかうまく避けれず肩に刺さる。

 その間に盾を前面に突き出して駆け寄る。盾で槍を受け流しながら近づく。

 ゴブリンはニ、三度槍を突いてくるが、肩に刺さったナイフと、麻痺毒のせいでうまく力を込められないのか、はじくたびに槍の軌道が流れていた。


 懐に近づくと身を屈め、盾で槍の持ち手をたたきあげる。

 ゴブリンの両腕は万歳の状態になっていた。がら空きの腹に手斧を叩き込み引き裂いた。

 腹から血と臓物が飛び散る。ゴブリンは手を挙げたまま仰向けに倒れた。



 大きくため息をつく。


 その途端呼吸が荒くなって、腰が抜けたように膝をついた。

 どうやらかなり一杯一杯だったようだ。

 だいぶスムーズに倒せていたが、正直、危なかった。

 本当は三匹とも吹き矢で動きを止めて、弱っているところを仕留める予定だった。

 三匹目が仲間を盾替わりするとは思わなかった。


 ゴブリンとまともに戦うのは駆け出しの時以来だ。あれ以来ゴブリンは一匹づつ麻痺毒で動きを止めてから仕留めていた。

 三匹で戦うの本当にひさしぶりだった。

 何とか倒すことができてほっとした。しかも、無傷で。

 この一年でちゃんと強くなっているのだと実感できた。





 ゴブリンの体に刺さった針とナイフを引き抜きかたずけた。

 ゴブリンの死体をそのままに、怪我人に近寄る。

 どうやら、先ほどまで何とか立っていた冒険者もいつの間にか倒れていた。


 担がれていた男は足が潰れていた。男の服装は部分的に鉄で補強されていた。

 その補強さてた防具をも何ものかに砕かれていた。体も鋭い爪で切り裂かれたような傷がたくさんあった。腕周りは傷は少なかった。盾で防いだのだろうか。

 呼吸を確認したが、残念ながらもう息を引き取っていた。

 血を流しすぎたのだろう。



 もう一人も切り傷だらけだった。

 呼吸はまだあるようだ。

 応急処置の為に鎧を外す。毛で覆われていて、とても傷口が見にくかった。

 取りあえず血が出ている部分の毛を避けて傷口を見る。かなり大きく切れていた。

 胸のポーチに入れている機械を取り出し、もう一つ一緒に小型の缶も取り出す。缶に入った塗り薬を傷口に塗る。この薬は緊急用で傷口の化膿、炎症止めと痛み止めの効果がある。かなり強い薬で塗るとしばらく傷の感覚がなくりその部分は麻痺する。


 すべての傷口にその薬を塗りこみ。大きい傷口にはさっき取り出した機械をあてる。この機械には引き金がついており、引くと傷口を縫合する金属が飛び出す。大きい傷口はこの機械で縫合した後、背嚢の中の布を取り出してジグザグに切り包帯代わりにする。


 腕は折れてるようなので、死んでしまった男の腰の鞘を腕に当て布で固定する。

 一通り応急手当を終えてどうするか迷う。



 死んでしまった男を置いて行っていいものか。

 せっかくここまで、もう一人が連れてきたのだ。最後まで連れて帰ってやるほうがいいのだろう。

 しかし、二人を連れてこの森を抜け切れるたろうか。

 いや、ここまでしたんだ。最後まで面倒を見るしかないだろう。



 マントを脱いで男の下に敷く、マントを体を巻いてしっかり固定する。

 紐を男の脇に通した引きずれるようにする。

 男のマントは体にかぶせてやった。その上に匂いけしの粉を振りかけておく。

 自分も体の血を布で拭きとり匂いけしの粉を全身に塗る。

 もう一人にも匂いけしの粉をつけておいた。

 せっかく買ったばかりの匂いけしの粉がもうほとんどない。


 金が要るのでさっき倒したゴブリンの魔石も取ることにした。

 かなり血の匂いが漂っているのではやくこの場を離れないと他の魔物がきてしまう。

 しかし、金も必要だ。


 魔石を取り終わるり、もう一人は背負ってやることにした。手斧を椅子代わりにして座れるように背負ってやる。

 かなりでかいのですごく重い。

 鎧は重いので、男も背負っている奴の鎧もすべて外した。

 一応近くの草むら隠しておくが、多分なくなってしまうだろう。


 耳を澄まして当たりの気配を注意する。

 まだこの周りには魔物がいないようだ。


 腰に紐を回し、男を引きずる。背嚢は胸に抱えるようにして身に着けて背中に冒険者を背負う。

 人間二人分の重量はかなり重い。魔力を絞って強化する。重いが少しまし程度で歩みを進める。


 空を見上げるとまだ日は高い。

 何とか夕方には帰れるだろうか。



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