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暗中必殺夜狩稼業  作者: 銀狼
【隠密の猟犬】はいかにして生まれたか?
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第十三話:〈狩人〉出陣 【凶剣の黒猫】

 客がいなくなった『バー黒猫』。その居住スペースに入ったフリックは、仕事着のベストと蝶ネクタイを脱ぎ捨てた。クローゼットを開け、入っていた様々なものを身につけていく。

 完成したのは、黒のタキシードに黒のネクタイ、ズボンや革靴も黒という装い。服装で白いのはシャツと手袋だけという全身黒尽くめの格好だ。

 部屋の片隅に置かれていたステッキを手に取り、トップハットを頭に乗せる。やはりどちらも黒色だ。

 (おもむろ)にステッキのグリップ付近を両手に持つ。左手首を少し捻り、右手を動かす。ステッキの中から、細身の刃が現れる。その刃筋を確かめると、先程とは逆の動作で刃をしまう。

「では、参りましょうか」

 変わらぬ微笑を浮かべながら、フリックは店を後にした。




 人気のない路地裏を歩きながら、オーギュストは眉間に皺寄せ考えを巡らせていた。人攫いなどという汚れ仕事、元よりいつまでも続けるつもりはない。次の仕事を済ませて金が手に入ったなら、手を引こうと考えていた。ただそのためには、あの商人や貴族の衛兵が納得出来るような暇乞いをせねばならない。機嫌を損ねるようなことになれば、あるいはいらぬ気を起こさせれば、その瞬間から命を狙われるのは間違いない。

 最悪の想像をしてしまい、思わず身震いする。終わってからの事にしようと思い直し、目の前の仕事の成功を考える。そのために今もこうして、入念に下見をしているのだ。

 人を連れ込みやすいような物影が無いかと、周囲を見回しながら歩いていくオーギュスト。ふと、その視界の端で何かが動いたような気がして足を止める。改めて目を向けてみると、そこにいたのは一匹の黒猫だった。こちらの視線に気付いたのか、そそくさと逃げていく姿を見て眉を顰める。

「黒猫とは、幸先が悪いな」

「おや、これは異なことを仰る」

 唐突に聞こえてきた男の声に驚き、弾かれたように振り向く。そこにいたのは、帽子から革靴まで全身黒尽くめの男だった。

「なっ、いつの間に」

 何処にもいなかったはずのその存在に驚き、オーギュストは疑問の声を上げる。そんな彼に構うことなく、黒尽くめの男が言葉を続ける。

「そもそも黒猫は幸福の象徴。彼らが姿を見せるのは吉兆なのですよ」

「そ、そうなのか?」

「ええ。もっとも――出会ってはならない『黒猫』も、いますがね」

「――!? 何だっ――」

 刹那、目の前にいたはずの男の姿がブレて消える。背面から声が聞こえてきたことに目を見張り、振り向こうとする。

 だがオーギュストの目が、再び男を捉えることはなかった。中途半端に捻った体のまま、オーギュストは倒れた。その首が切り裂かれ、大量の血を溢れさせていたことには、最後まで気付かなかったことだろう。

「――【凶剣の黒猫】。私のことにございますよ」

 仕込み刃の血を振り払い、鞘に納める。不敵な笑みを浮かべたまま、フリックは夜闇に身を溶け込ませた。

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