その1
週も開けた月曜日、校門に着いた俺の目には相変わらず光彩が見える。
休みのうちに来ることも考えたけど狙われた理由が分からない以上、1人で学校に行くのはやめた方がいいだろうから結局行かなかった。光彩相手に使える防犯ブザーとかあればいいなと思ったけどあるならとっくに渡されてるよな。
「見えるの?」
「うん、はっきり」
教室に入っても光彩はよく見える。素通りはできてもその先は見えない。球体の光彩に人が隠れてぶつかりそうになったことが何回もあった。授業中でも前が見えないから上体を左右に動かし過ぎて笑われたこともある。勘弁してほしい。
「舞さんは平気?」
「私は気配だけにできるから」
「できるの?」
初耳だ。聞いてない俺も悪いっちゃ悪いんだけど。
「ごめんね。久君がどのくらい見えるか知らなかったから」
ここまで顔に出やすいのはどうかと思う。
「私も昔そうだったんだよ」
「舞さんも?」
これが続いたらどうしようか思ってたから安心した。
「うん。里緒さんは最初からできたって言ってたけどね。個人差があるんだよ」
個人差かぁ。見えるようになったのが先週の木曜日、今日が月曜日だから今日で5日目。早くできるようになりたい。
「コツとかない?」
ダメでもともと。聞いてみた。
「自転車ってコツをつかむと簡単に乗りこなせるでしょ、あんな感じ。見ている内にできるようになるよ。心配しないで」
そのうちできるのを待つしかないってことね。
相変わらずといえば舞さんだ。目の前の舞さんを見ていると光彩に関することすべてが初めからなかったみたいに思える。
もちろんそんなことはない。単に俺が意識しすぎなだけかもしれないことも分かってる。ただアレがアレだけに聞く自信がない。時間がたって落ち着いて、変わった出来事として記憶の中にあるだけなのか。
もしかしたら舞さん自身は人助けの延長にしか思ってないのかもしれない。それはそれで複雑だ。とにかくこれは心の片隅に置いていこう。
「ちょっといい?」
昼食を終え友人の瀬島と昼休みの残り時間を持て余していると舞さんに声をかけられた。多分、光彩がらみで何かあるのだろう。
「行ってくる」
「ああ」
隣に座る瀬島に一言言ってから席を立つ。舞さんは彼女と2年連続で同じクラスで友人の萩野さんに手を振ってから廊下に出て行った。追いかけると教室の扉に外側から手を当てている。
手を離すと扉には光彩のカードがシールみたいにはられていた。
「見せたいものがあるから一緒に来てほしいの。いい?」
周りには雑談をしている生徒が大勢いる。わざわざ移動するってことは人に聞かれたくない話、光彩がらみで何かあるんだな。
「いいよ」
舞さんの髪は1つにまとめられている。もったいないと思うけど何かあったとき邪魔にならないよういつもああしてるんだろうな。
うん、この前のベッドでの姿は思い出さないようにしよう。
彼女は手に持った光彩のカードを飛ばして廊下に浮かぶ光彩を切り裂きながら歩いている。切られた光彩は透明になり消えていった。1度見たことがある光景でもその手際の良さには感心してしまう。
授業中、光彩のせいで黒板がろくに見えずにいた俺に気付いた舞さんはカードの光彩を飛ばして教室中の光彩を消してくれたのだ。
「カードをぶつけると見えなくなるんだよ。明日には元に戻ってるけどね」
その光景について聞いた時、彼女はそうはにかんでいた。その舞さんは文化系部活の部室が並ぶ廊下まで歩いている。
「見せたいものってそのカードのこと?」
舞さんはここに来るまで通った全ての教室や部室の扉にカードをはっていた。
「1つはね。あれは実体化した光彩が扉を開けた時にそれを教えてくれるブザーみたいなもので、だから保健室の時も気付けたの。3日に1回ははり直さないと消えちゃうけどね」
ああ、部長がこの辺で舞さんが1人いるを見たのってこれが理由なんだな。
「それ、俺にもはれない?」
「人の体に触れると消えちゃうの」
だから扉の端や隅にはってたのか。
「もう1つは?」
「文芸部の部室に光彩の塊があるの。学校の上に浮いているものを小さくしたようなのがね」
今すごいことを聞いてしまった気がする。違う。気がするなんてもんじゃない。
部室の中に光彩の塊があるって?
「だから、しばらく部室には入らない方がいいよ」
近づかない方がいいのは分かる。けど部長に一言言った方がいいよな。
「なら部長に一言言っていい? しばらく部活に来れないって」
「理由はどうするの?」
「親の引っ越し先の荷物整理。引っ越してから1年になるし、処分してもいいものとそうじゃないのを分けるためとかどう?」
「……よく思いついたね」
「でしょ」
部長のことは気になる。けど今すぐどうにかしなきゃいけないくらいやばいなら部長にだってとっくに何か起きてるよな。
「いつにするの?」
「今すぐ。昼休みも部室にいるんだ。いなくても塊ってのがどんなものか見ておきたい」
「分かった。なら私も一緒に行くよ」
舞さんが一緒に行くって言うことはただの塊じゃないってこと? 聞いておこう。
「舞さんは部室にある塊が何かしてくるかもって思ってるの?」
「念のためだよ。保健室の時みたいに襲われたら久君だって嫌だよね?」
確かに。でもまー、何かあったらあったで俺がエサになればいいか。頼んだよ舞さん。
文芸部の部室の扉の前に着いたのはいいんだけど何だか不安になってきた。
「開けたらいきなり襲われる、なんてないよね」
「あるかも。私開けるね」
あるのか。
舞さんは左手にカードを出し、右手で扉に手をかけた。獲物を狙う動物のような目つきをしている。戦闘モード。そんな言葉がぴったりだ。だけど彼女が扉を開けられない。カギがかかっていた。
「カギ、閉まってる。持ってない?」
そうだった。カギは部長が持ってていないと開かないんだ。
「何してんの」
「うわぅ」
後ろからの声のせいですっごい情けない声が出てしまった。後ろを向いて確認する。この部室の主だった。
「部長かあ」
「久ちゃん驚きすぎ。昼休みに来るなんて珍しいじゃん」
「連絡したいことがあって……」
「藤崎さんも一緒に?」
あー、何て言おう。考えてた言い訳が完全に頭の中から抜けてしまった。
「いいかな?」
ナイスです。
「いーよー。カギ開けるからちょっと待ってて」
部長はカギを開ける音が聞こえ、ドアを開けて中に入っていった。
「どうぞ。座って座って」
俺達を手招きしている。
「2人で来るなんて珍しいじゃん。初めてかも」
「うん」
生返事だけど変な声を出さずに済んだのをほめてほしいくらいだ。
俺の目は部室の中のあるモノにくぎ付けになってしまっている。舞さんに制服の袖をひっぱられるまでそのまま立ち尽くしていた。
「もう、カギ閉まってるなら先に言ってよ」
小声でつぶやかれる。
「ごめん」
放課後部室に直行したことなんてなかったから完全に忘れていた。カギの持ち主である文芸部の部長は部屋に1つだけの旧式のパソコンがある机の椅子に座っている。
「見える?」
小声のまま舞さんはそのあるモノを目で指した。
「見える」
嫌なくらいはっきり見える。この部室には大きな光彩があった。
蛍光管に重なり合うように存在し今まで見た光彩とは違い繭のような形をしている。大きさが1メートルはありそうなその繭からは太い糸のようなものが伸び、天井から繭を支えていた。
「しばらくデートで休みます。なんて言うなよー」
「どういうこと?」
「舞さんって部活やってないのにこの辺にいたことあったよね。この前部長が俺とこっそり会うためじゃないかって言ってたから多分それが理由」
「……そうだったの」
伝わったようだ。
「とりあえず、誤解だって伝えておく」
「座んないの?」
部長が振り向いた瞬間、何かが床に落ちる音がした。
「え?」
天井の繭から落ちたてきたものの見た目はただの女子高生、制服もこの高校のもの。けどその背中まで伸びた長髪は光の加減で金髪にも黒髪にも見えた。そしてそいつの手元には光彩の光がある。
間違いない、あいつの同類だ。
舞さんのカードはすでに向かっている。けどそれは女子高生までたどり着かない。その前に紐のような形の光彩を鞭のように使ってたたき落とされてしまった。
「うわっ」
もう1本の紐が俺の腕に巻きつき、無理やり部室に連れ込まれる。
「……久ちゃん?」
部長の声におびえと戸惑いがある。彼女の視点じゃ俺が何もないのに引っ張られるように部室の中央まで動いたんだから当然だ。
けれど相手の光彩がどんなものか間近で見ることはできた。俺に巻きついている紐の様に見えた光彩は紐より太く、ちょうどベルトくらいだろうか。厚さは無く包帯みたいで引きちぎれそうなのにどうにもならない。
「無駄です」
声の主は俺の側にいる。正確には俺が隣まで引きずり込まれた。その張本人はあの繭から落ちてきた女子高生だ。
声の方向を向くとそいつは立ち上がって舞さんを見据えていた。保健室にいたやつと違い無表情で何を考えているかは分かりそうにない。
「高瀬久弥だけではありません。藤崎舞、私は貴方にも言いました」
舞さんの両手にはカードがある。彼女は女子高生の発言を無視してカードを飛ばした。3枚のカードは上右左の3方向から女子高生の方向へ向かったが女子高生に当たることなく途中で大きく方向を変えることになる。
理由は簡単だ。こいつは俺を盾にしやがった。俺に当たるのを避けるためカードは方向を変えたのだ。
俺を引っ張ってドアの向かい、窓のある壁を背にした女子高生はもう1度舞さんを見据えた。舞さんはさっきから何もしようとしない。正確にはどうすればいいか分からないって感じなんだろう。
「部長」
今起きていることに関して彼女だけは無関係だ。そんな人をこれ以上巻き込むわけにはいかない。
「部長!」
ようやくこっちを向いた。
「先帰ってよ。今度説明するから」
彼女に今の俺はどう映っているのだろう。変な奴に見えるだろうか、それともかわいそうな人間に見えるだろうか。
「それでいいよね?」
「……うん」
返事はすぐに帰ってきた。部長へのフォローは後で考えるとして今は目の前の現実だ。
「ほら部長、早く帰んなきゃ」
いつも通りの話し方をしてみた。上手くやれている自信はない。自分でも声が上ずっている感じはする。
首を縦に振った部長が見えた。よし。
パソコンは部室の窓側にある。ドアから左斜めの方向だ。部長はそこから少しずつ壁に背中をくっつけて俺達から距離を取りつつ移動している。
「ごめん部長」
ドアの方向だけを見ていた部長が俺の方を向いた。
「カギ借りていい?後で閉めとく」
「でも……」
やっと口を開いた。少しはこの状況に慣れて余裕ができてきたってトコだろうか。
「その辺置くだけでもいいから」
「……わかった」
部長が床にカギを置こうとしている。
「つぅ」
右腕に痛みが走る。お前が何もしないで見逃すとは思っちゃいねーよ。対策何も無いけどな。
「喋りすぎです」
紐の縛りがきつくなった。血圧を測る時みたいな痛みが腕にある。舞さんは両手にカードを出したまま女子高生を睨みつけている。俺がいなければとっくに仕掛けているだろう。
「逃げられると思いますか」
女子校生の意識は部長に向かっている。
「小和田春香、あなたは光が見えていますね」
見えている? 部長が?
「分かるでしょう? 高瀬久弥に何が起きているのか」
「これ、見える?」
「……うん。藤崎さんの手に何かあるのも、見える」
部長は人魂を見た子の話をしていた。あれは自分のことなのかもしれない。
「私はあなたをここに縛りつけることもできます。それをしないのはなぜか、分かりますか?」
縛りが緩くなったんだろう。痛みが和らいできた。
「藤崎舞をこの部屋に連れ込んでほしいのです。それができるのならこの部屋から出るのを許します」
こいつ。
「彼女がこの部屋に入らない理由を私は知っています。私に縛りつけられるかもしれない、そう警戒しているからです」
今度は舞さんだ。
「あなたの光は手に持っていないと力を発揮できない、そうですね」
保健室の女子高生も投げた光彩じゃすぐに立ち上がっていた。教室や部室の扉にはった光彩のカードはブザー程度にしかならないらしい。こいつの言っていることはきっと正解だ。
「小和田春香、私はあなたに指示通り動くことを望みます。」
脅しだろう。俺を縛った光彩と同じものを部長の左右にぶつけた。もちろん壁自体には傷1つついていない。
けど本人はどうだ。どんな気持ちになる。舞さんが何もしない理由も分かってきた。俺がいるからだけじゃない。ベルト状の光彩に投げたカードは通用しない。相手に届く前に叩き落とされる。離れていたら何もできないし近づいて俺のように縛りつけられたらおしまいだ。
「何もできないのならそこでおとなしくしてください」
今だ。
「良い子にしてください」
少しでも抵抗しようと左腕を動かしたけどダメだった。もう部長を見てもいない。動こうとしない部長にうんざりしたのだろう。
部長は自分のカバンを抱えたまま座り込んでいる。何を考えているのか。表情からは分からない。
「理由もなく人を傷つけたくありません」
「してるだろ」
「あなたがそうさせるのです」
動かした瞬間、左腕も縛りつけられた。こいつの左手から出ている光彩が2つに分かれて両腕とも縛られてしまった。両腕に重いものが乗っているみたいで立ちあがることもできない。これは多分、マズイ。
「どうしますか。藤崎舞」
来るな! なんてカッコイイこと言ってみたいけど今の状況じゃ無理だね。俺にも光彩が使えないだろうか。試しに何か出ろと思っても何も起こらない。
「来ないのならこちらにもやり方があります」
今度は首だ。首を絞められて喉仏が押し込まれる感覚がする。俺の両腕を縛る光彩が3つに枝分かれして両腕だけじゃなく俺の首まで絞めてきた。呼吸ができないってわけじゃないけどキツイ。
「光に人を傷つける力はありませんが使いようはあります。縛ることができるということは絞めることができるということです」
舞さんは動かない。動けないに決まっている。こいつらからしたら舞さんが自分達の邪魔をする厄介な存在でしかないことぐらい想像つく。
「いつまでそこにいるのですか。あなたも冷たい女ですね。助けたいと思わないのですか」
首を引っ張られて地面に叩きつけられた。
「目をそらさないでください。これを見ても何も思わないのですか」
叩きつけられたのは俺だけで部長には何もしていない。彼女は人質として価値がないと考えているのだろうか。だとしたらその点はラッキーかもしれない。
「仕方ないですね」
こいつは大きくため息をつくと俺を目の前へ引き寄せた。また何かされるのかと身構えたけど何もされない。正確には何かする余裕がなかったのだろう。俺には一気に駆け出す舞さんが見えた。こいつの意識は舞さんに向いているんだ。
「馬鹿にするな!」
振り向くと部長が体当たりをしている。
こいつは右手の光彩でいつの間にか舞さんが出していたカードを弾き落とすのに精一杯のようだ。もう1つ気付いたことがある。両腕は縛られたままだけど俺は今体を自由に動かせる。チャンスと考えて体当たりでバランスを崩した女子高生の足めがけて転ばせるように足を出してみたけど失敗、ジャンプして避けられた。
「良し!」
威勢のいい声が聞こえ部長のガッツポーズが見えた。
ジャンプして光彩を伸ばす女子高生。右手を上に向けている。舞さんは天井に貼りついたのだ。同じ様な事をして逃げるつもりだろう。俺を縛っていた光彩もなくなった。けどもう遅い。舞さんはすでにそれに合わせている。
さっき投げた光彩には下敷き程の大きさのものがあり、空中で固定し踏み台にする。そうやって逃げようとする女子高生に手が届く距離まで近づいた。
「このっ!」
舞さんは右手に持った光彩のカードを女子高生にぶつけている。
あの時は良く見えなかった、けど今なら分かる。カードを2重3重に重ねていたんだ。確かにこれなら飛ばしたカードより力があるだろう。力を発揮するというのはこういうことなのだろうか。
「やってくれますね」
舞さんは左手で女子高生の腕をつかみそのまま着地と同時に壁に押し付けた。そのままカードをぶつけた手でも右腕を押さえている。
「何のつもり」
「何がですか」
「とぼけないで。どうしてこんなことをしているのか聞いているの」
「教えると思いますか」
俺は部長を手招きして舞さんの後ろに隠れた。
「おお怖い。そんな顔をしていいのですか。愛しの彼が見てますよ」
「ふざけないで」
「なら私を消せばいいでしょう。あの時みたいに」
「質問に答えたらね」
「……あのさ」
部長が恐る恐る舞さんに声をかけた。
「どうしたの?」
さっきまでとは違う。顔は分からないけどいつもの舞さんの声だ。。
「藤崎さんはさっきのカードみたいなやつを出してた方がいいんじゃない?」
「大丈夫、すぐ出せるから」
「……じゃ、何かやれることある?」
「無駄ですよ」
「それを決めるのはこっち、あんたじゃない。ココで何やってたのかウチも知りたいし。聞かせてもらおうじゃん」
良かった。いつもの部長だ。
「高瀬久弥からまた光がもらえるなら考えてもいいですよ。光彩、と言えば分かりますか?」
女子高生は俺を見ている。顔自体は真剣に見えるが本気なのか、それとも何かの例えや駆け引きをやりたいのかまでは分からない。
「憶えてないのですか。私は貴方が忘れられないのに」
「……変な言い方するな」
ということはあのときの女子高生と同一人物? いや人じゃないから人型光彩? どういうことだ?
「何の話?」
部長が俺を小突いてくる。
「後で話すよ」
「味のことだよね」
舞さんまで加わってきた。
「多分」
「もてる男はつらいですね。ちゃんと可愛がらなくてはいけませんよ」
「お前に言われたくないね。憶えてないのかって言ったな。お前はあの時の女子高生とどういう関係なんだ?」
「何も知らないのですね」
見下した言動と表情、こういう人を露骨に見下す奴は嫌いだ。
「何をする気」
舞さんが何かに気付いたみたいだ。
「時間切れ、ですよ」
俺と部長は目を合わせた。部長も何が起きているのかわからないらしい。もう1度女子高生を見てやっと理解できた。
「待ちなさい」
少しずつ、けどはっきりと薄くなっている。女子高生の後ろにある窓と壁が見えてきた。
「嫌ですよ」
消える気だと分かった時にはもう遅い。保健室の時のように消えてしまった。部長は茫然とこの光景を見ている。
「……これ、現実だよね」
「うん」
舞さんは床や壁を調べている。女子高生の痕跡を探しているのだろう。
「俺達、廊下に出てるよ」
「先に帰らないでね」
こっちを見てはいないが手を振っている。オーケーということだろう。
「行こ、部長」
許可も出たので部長を廊下へ連れていく。
「……いつもこんなことしてるの?」
廊下に出た所で部長が口を開いた。
「舞さんはね。俺は先週から」
今さらごまかす必要もないだろう。
「部活、来なかった時?」
そっか。光彩が見えるならあの時の女子高生も見えてたってことだよな。
「見えてた?」
「人の姿をしているのを見たのは初めて。気のせいだと思ってた」
「まー、そうだよね」
頭をかきながら部長に同情した。
「何も知らなくて害もなきゃそう思うのも当然だよ」
見えてたってことはあの女子高生だけじゃなく光彩を使う舞さんも見たかもしれない。部長は舞さんをどう思うだろうか?少なくとも怖がっているようには見えない。
「どうだった?」
舞さんが来たので状況を聞いてみる。手には部長のカバンと部室のカギがあった。
「ダメね、何も残ってない。小和田さん」
「ほい?」
「これ」
舞さんはカギとカバンを手渡した。
「ありがとー。どっかの気の利かない部員と違って優しいなー」
「ここまで連れてきてあげたじゃないですか」
「久ちゃんを見守ってたんだよ。部員の面倒を見るのも部長の仕事だしね」
ニシシという感じの笑顔を浮かべている。
「でも藤崎さんを連れてきてくれたことには感謝してる。いなきゃ今頃どうなってたか分かんないしね」
部長は受け取ったカギで扉を閉めた。
「部長はどうする?」
「どうって?」
「アレが何なのか。興味ない?」
「当然聞く。ごまかすなよー」
さすが部長。
「場所どこにする?部室は使えないでしょ」
あんなことがあった直後じゃね。
「家で良ければ開いてるよ」
「いいの?藤崎さん家行っちゃって?」
「いいよ。ちょっと歩くけど光彩が見えなくなるから安心できると思う」
「コウサイ?」
「あの光のことだよ」




