ネバー・ゲーム ーその5ー
ネバー・ゲームを開始して五日目の段階でレベル50になっていた。
これは、ネバー・ゲームはじまっていらいの快挙だという。
「今度の異世界は、ネバー・ラスペガサスだ。覇者はシグというやつで、ネバー・ゲームで2位の強さをほこる。気をつけろ!」
ネバー・ラスペガサスはカジノ都市で、ビルがたくさん並んでいる。
ここの覇者シグはピストルを使うみたいだ。
これまでも伝説の武器を使いこなしてきたわけだし問題ないとは思う。
ギルド登録もすませて、早々に覇者の元へ向かった俺たちを待ちうけていたのは、金髪ロングヘアーでビジネススーツを着た女性だ。
「バリエット、久しぶりだな」
「あなた、よく懲りないものね。勝ち目はないってわかっているでしょう?」
エミルはユーザーを連れて何度か、シグに挑んできていて、その度に負けて屈辱を味わされているみたいだ。
「ふーん、お前が伝説の武器の使い手か。早速勝負と行こうか?」
シグはやる気マンマンといったところだ。
「そうだ、そうだ伝説の武器を貸してやろう。エミルから奪ったやつだ」
それはただの輪ゴムしか見えない。
ウソだろ……
こんな輪ゴムでどうやって本物のピストル相手にたたかえと?
「ルールは簡単、早撃ちだ。三歩進んで振り返ってバーン」
西部劇でよくあるルールだ。
なるほど輪ゴム鉄砲か……
簡単だ。
しかし勝てるわけないだろう!
「どうした、伝説の武器を使いこなせるんだろう?」
「ああ……でも、タイム!」
俺はエミルに伝説のグローブを貸してくれるように頼んだが、持ってきてないとの答えが返ってくる。
「まあ、頑張れ!」
エミルの心無い一言に俺は怒りが込み上げてきた。
こんちくしょー、どうすりゃいい?
「はじめるよ? やらないんだったら死んでもらうけどね」
シグは銃口を向けてきた。
心臓がバクバクする。
一歩、また一歩……三歩進んでバーン――
輪ゴムはシグの胸をつらぬいた。
シグは倒れこむ。
「なるほどね。伝説の勇者……だ……」
バリエットはパチパチと拍手して、俺に近寄ってきた。
「ふふふ、おめれとう。勇者・拓馬さん。私を好きにしていいわよ?」
「ああ、じゃあ水を頼む。とりあえずのどが渇いた」
俺は水を飲むとバリエットの服を脱がしたが、あまり興奮しない。
慣れというものは怖いものだ。
ついこの間までは童貞で、はじめてやったときはすごく興奮したのに。
「どうしたの、やらないの?」
「ごめん、別の女の子を抱きたい」
エミルのほうを向くと、やっぱり拳が顔面に炸裂した。
「ルールを破ってはいけませんよ。同行人とは男女の関係になってはいけないのです」
毎度のことだがルシアが現れた。
俺はそそくさと服を着てルシアに質問した。
「あのさぁ、ネバー・ゲームのルールは誰が決めたの?」
ルシアとその場にいたものは固く口を閉じた。
やっぱりおかしい。
まあ、検討はついているけど。
「もしかして、ルシアのパパなのかな?」
限界だったエミルが、俺を本気で始末しようとしてナイフを突きつけてきた。
「やれよ、一生そいつにいいようにされてもいいならな?」
いつになく真剣な眼差しにエミルはナイフをおさめた。
ルシアは泣いている。
「本当はやりたくないのこんなゲーム。だけどパパが、魔王がムリヤリやらせるの。命令を無視すれば嫌な、お仕置きが待ってるし」
ルシアはたぶん虐待を受けているんだろうと俺は思った。
それで、魔王を倒せる伝説の勇者を求めていたのだろう。
俺はルシアの頭をなでて、魔王討伐を了承する。
俺は自ら最後の異世界ネバー・ジゴクへと足を踏み入れることにした。




