ネバー・ゲーム ーその4ー
ネバー・ゲームをはじめて四日目パソコンを立ち上げ受信メールを開くと、またネバー・ゲームのお誘いがきていいた。
今回は俺が率先して、第三異世界ネバー・チャイナンへと向かうことにする。
「ふーん、少しは自信がついてきたようだね」
エミルは少し笑みをこぼす。
到着すると、そこは中華風の街並みだ。
ここでのギルドは武闘家系だ。
「この世界素手で戦わなければいけないあるよ! 武器使っちゃダメね!」
武器を使えない?
はぁ――
……って、今まで俺はエミルの武器を頼りにしてたのにか!?
「最悪だ!」と心の言葉が口に出てしまっていた。
「ただし、グローブならオーケーね」
「グローブならオーケーか……はは……」
俺はもう死を覚悟した。
「安心しろ、あたしがなんとかしてやる」
エミルのなぐさめをありがたくちょうだいすることにして、問題は素手で戦うという困難。
どう立ち向かっていけばいいのかわからない。
今から特訓したって間に合わないし、俺は正直第二異世界で満足しておけばよかったと後悔の念でいっぱいだ。
「グローブならオーケーなんだから、そう落ち込むな」
「なぐさめはいいよ……」
それにボクシングとかのグローブって言ったてたいした攻撃力にはならない。
むしろ攻撃力がダウンしそうだし。
ここは素手で戦うしかないようだ。
足取りは重く、覇者のいる道場に向かう。
到着するなりエミルが門の前で大声をだした。
「頼もう、道場破りだ!」
「おーい、挑発してんじゃねー!」
「大丈夫だ、勝てる」
どこからそんな自信がわいてくるんだ?
つーか、戦うのは俺だし!
「来たアルね、入るよろし」
「久しぶりだな、アール」
(この子がここの同行人か、中華風でかわいいな。チャイナドレスがまた良いではないか)なんて考えてたら、覇者が出てきた。
拳法の達人みたいな風貌、それなりの服装をしていて師範て感じだ。
強そうだ、勝てないよな。
俺はここで人生つんだと確信した。
「ワシは、デッド・フォーだ。準備はよろしいいか?
「あのちょっとまだ……」
エミルのほうを見ると、何かを投げつけてきた。
「それで頑張れ!」
俺は度肝をぬかされる。
よりによって野球のグローブとは、どういうことですか?
「ははは、こっけいな。それでよろしいかな?」
「いや、ちょっとタイム」
「問答無用」
デッド・フォーは重いパンチを繰り出してきた。
俺はとっさに野球のグローブでパンチを防いでいた。
「重てー」
一瞬だがグローブは鉄のようになった。
「ぬう、まさか伝説のグローブとは、お主やりおる」
次から次へとくりだされる攻撃をグローブで防ぐ。
それは最強の盾と言っていいほどだ。
「ならば、うけてみろ。最強奥義・龍刀拳!」
「なんか、必殺技出してきたしー!」
死んだ――
そう思ったがグローブはその技までも防ぐ。
「ふ、まさかこの奥義も防がれるとは思わなんだ。ワシの負けよ」
デッド・フォーはいさぎよく負けを認めた。
「おっさん、いいのかよ。負けたら死ぬんだろ?」
「ワシの命は長くない。実は、ワシは老いぼれじゃて。この世界では若く見えるがな」
「おっさん、死ぬなよー!」
そうしてデッド・フォーは消えていった。
「悔しいけど、私を好きにしていいアル」
「いや……じゃあ、肩をもんでくれ」
「そんな、命令でいいアルか?」
俺はやれる気分じゃなかった。
おっさんは少なくともわざと負けていた感じがしたからだ。
「お前は託されたんだ。これ以降の戦いを任されたんだよ」
「それは、どういう?」
「私が説明しましょう」
管理人ルシアだ。
「この世界を作ったのは、私のパパです。この世界でパパは好き勝手やって自分の欲を尽くしているんです。私は必死に倒せるユーザーを探していました。それがあなたなのかもしれないのです」
ルシアはそっと俺の手を握りしめてきて目を潤す。
「それってつまり俺が伝説の勇者的な?」
「そうです。ここまで伝説の武器を使いこなしたのは拓馬さんがはじめてなのです」
俺はどうやら期待されているらしい。
そしていつもの質問がくる。
「次へ行きますか?」
「いや、断る。もうやめた」
俺は無情になるしかなかった。
命をかけてまで世界を救いたくはない。
「仕方ありません。脱落とみなし死んでもらいます」
無情だったのはルシアのほうだった。
どっちにしろ「死ぬ」運命にある。
「どうせ死ぬならとは思わないのか?」
確信めいた質問をエミルがしてくる。
仕方ないので俺は、しぶしぶ次の第四異世界ネバー・ラスペガサスへと進むことにした。
「ふーん、強いんだそいつ?」
「はい、伝説の武器を3つも使いこないたとか」
「面白そうだね、バリエット」
「はい、シグさま」
またもや、拓馬をまちうける覇者が怪しく笑う。