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異世界ギルド創始譚  作者: イワタニ
第二章 ポロロッカ編
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第031話 方針会議

「母さん!」


 エリアはマリアの姿を見つけると、思い切り飛びついた。


「エリア!? なんでここに!?」


 マリアは娘が魔物に包囲されているこのエレルに現れたことを、当然驚いていた。


「西方軍と一緒に来たのよ! 無事で良かった!」

「この子は……なぜそんな危ないことをするの!?」

「え、怒られるところ!? お母さんやみんなが心配で戻ってきたのよ!?」


 口を尖らせるエリア、そして口では怒っているが、それでも目は怒っていないマリア。

 そんな親子の水入らずに入るわけにはいかず、ユートは他の三人とともにふらりと街を見て回ることにした。



 街は色濃く戦いの気配を湛えていた。

 いつもならば狩人(ハンター)や他の冒険者たちの笑い声が絶えない大通りも閑散としており、エリアと頬張った串焼き屋の屋台も今日は出ていない。

 漆喰に黄色や赤色を使っている家もあり、黒の筋交いと相まって意外とカラフルで綺麗なエレルの街並みも、夕暮れであることを差し引いてもどこかどんよりと暗い陰があるように見える。

 そして、数少ない道を行く人の顔にも、いつものような明るさはなく、陰鬱な暗さが張り付いていた。


(それもそうか)


 ユートは一人で納得した。

 何せ包囲され始めてからもう十日近くになり、その間、魔物の攻勢にさらされていたのだ。

 日常的に命のやりとりをしているユートですら、“ポロロッカ”から逃れる時は心身ともに疲労したのだから、そうでない街の人たちが精神的に参るのは当然であった。


「おいおい、こんなのエレルの街じゃないぜ」


 アドリアンも不満げに言う。


「あちきはあまり来たことないからわからニャい」


 レオナは面倒くさそうに言った。


(それなのにここまで付いてきているのだから、いい奴なんだよな)


 ユートはそんなことをふと思った。


「とりあえず状況がわからないから、パストーレ商会に行きません?」


 ユートの言葉にアドリアンとセリルも異存はないようだった。

 レオナはちょっと小首を傾げる。


「西方軍には行かないのかニャ?」

「ああ、西方軍は夜の会議には出てくれと頼まれている」

「また会議に出なきゃなのかニャ……本当、あちきらの微妙な立場はニャんニャのニャ!?」

「何言ってるかわからん……」

「うるさいニャ! これは北方訛りだニャ! たまに出るのはしょうがないニャ!」


 常に語尾のニャは出ているのだが、と思ったところで、北方訛りということは、北方では男も語尾にニャをつけているのか、と考えてユートはぞっとした。


「おい、早く行こうぜ!」


 呆然とするユートをアドリアンが急かした。




 パストーレ商会は意外なまでに喧噪に満ちていた。

 大勢の人夫たちが、あちこちでなんやかんやの荷物を捌いている。

 そして、その指揮を執っている山賊のような巨漢はよく目立っていた。


「プラナスさん!」


 ユートが声を掛けると驚いたように振り返った。


「何をやっている!?」

「今日、エレルに戻ってきたんですよ」

「まさかと思うが、西方軍にくっついて戻ってきたのか?」

「そうです。司令部付、ということで同行させてもらえました」

「司令部付に何人か冒険者がいる、ということは聞いていたが、まさかお前たちとは……わざわざ死に戻ってくるほど馬鹿とは思わんかったぞ?」


 口では呆れてものも言えない、と言いながらもプラナスは笑った。


「ところで何の騒ぎですか? パストーレ商会の隊商着いてないんですよね?」

「ああ、今日まで防戦していた警備兵大隊は輜重部隊を持っていないんでな。ちょうど経理や輸送に明るい者が多いうちが手伝ってたんだ。で、輜重段列が来たからお役御免、というわけだ」


 腹が減ってはいくさは出来ぬ、という通り、輜重というものは重要だ。

 それを統括する機関は西方軍司令部しかなく、そしてその西方軍司令部と連絡が取れなかった以上、どこかが代行する必要があることはユートにも容易に想像がついた。


「まあ一般向けの配給はうちがやるがね」

「配給?」

「そうだ。食糧に限りがあるので、市中に出回っている食糧は全部適正な価格で回収の上、うちが再配分している」


 貴重な食糧を効率よく配分するためには最良の措置なのだろう。

 しかし、同時に道行く人の顔が暗かったのも、最後の楽しみであるはずの食事すら制限されみすぼらしいものになっていることもあるのではないか、ともユートは思った。


「あ、すいません。忘れるところでした。これ、パストーレさんからの書状です」


 そう言いながらパストーレから預かった書状を渡す。


「おう、エリックのボンからか」


 そう言いながら書状を開く。

 本来ならばマナーとしてはどうなのか、という話なのだが、緊急時、ということなのだろう。


「ひどいな……」


 すぐに読み終えたプラナスはそう呟いた。


「え?」

「うちの被害だ。お前は半分身内みたいなもんだから言うが、隊商のかなりの部分が行方不明だ」


 行方不明――つまりは死んだということなのだろう。


「うちから出した奴ら、そしてうちに向かってた奴らで、助かっているかも、と思った奴らはほぼ行方不明だ。全く……残酷だ……」


 ほんの数日前に知り合ったカーライルが死んだだけで、ユートはあれほど動揺した。

 長い付き合いの冒険者も多かっただろうプラナスからすればもっとショックだっただろう、と考えると何も言えなかった。


「……そういえば、お前ら前々回に来た時はルーカスが手伝ってたよな?」

「ええ、良くしてもらいました」

「……あいつも行方不明だ。まあ行方不明になった場所が少し特殊な場所だから、一人も避難してきていないし、もしかしたら籠城してる可能性もあるけどな」

「ルーカスの奴……」


 アドリアンはぼそりとそう言った。

 その表情は、暗かった。




「ユート、プラナスさん元気だった?」


 エリアの家に帰るとエリアは開口一番そう言った。


「プラナスさんは元気だったよ」

「プラナスさんは?」

「結構死者が出た、らしい」

「まあそうよね。あたしたちであれだけ危なかったんだから、死者が出てもしょうがないと思う」

「あとルーカスさんも……」


 告げようかどうしようか迷っていたことをユートは告げる。


「そっか……」


 エリアはそう呟くとじっと数秒、瞑目する。

 そして、目を開くと、ユートに言った。


「ユート、あんた絶対に気を沈ませちゃダメよ! 今日はカーライルさんも戦死したし、あんたのことだから気に病んでるのはわかるけど、沈んじゃダメ。空元気でもいいから、絶対元気にしてなさい」

「おいおい、エリア……」

「あんたはパーティのリーダーだし、絶対に沈んじゃダメだからね」

「……わかった」


 エリアの言葉を胸に刻む。


「そういえば他の人たちは?」

「マーガレットさんとドルバックさんの店に顔を出したんだが、両方とも閉まっていたな。まあ配給制になんだから店を開けるどころではないんだろう」

「ランデルさんは?」

「時間なくて行ってない。あっちはあっちで忙しそうだったからな」

「ああ、確かに防具の修理の仕事も入ってそう」


 エリアはそう言って笑った。




「ともかくエレルが無事でよかった。間一髪であったが。各隊の奮闘に感謝する」


 夜の会議はサマセット伯爵のその一言から始まった。


「アンディ――アンドリュー・カーライルは残念でした……」


 騎兵大隊の大隊長であり、カーライルの旧友でもあったアーノルド大隊長がそう言って目を瞑った。


「彼を失ったのは痛恨の極みだが、我々は彼の死を乗り越えて前に進まねばならない。以後の軍方針に関して、しっかりと考え、彼の死を無駄にせぬことが我々に出来る唯一最大のことだ」


 サマセット伯爵はそう言って全員を見回した。

 全員の目から闘志が消えていないことを確認すると、ゆっくりと話し始める。


「軍として取り得る方針は二つある。一つはこのまま籠城し、王国各軍――といっても即応できるのは中央軍くらいだろうが――の後詰めを待つ。もう一つは積極的に迎撃し、魔物どもの長を倒す」

「糧秣はどうなっておるのですか? 馬どもにちゃんと秣を食わしてやらねば、我々は動けません」

「アーノルドの懸念はもっともだ。その点はパストーレ商会のプラナスが纏めてくれているが、騎兵の馬に関しては優先的に(まぐさ)を補給させるので、その点については心配しなくてよい。問題は人間の方だ」

「やはり食糧が足りないのですか?」

「ああ、エレルの民と西方軍合わせて五万を超える。我々の輜重段列と市中の食糧を合わせて、節約に節約を重ねてようやく一ヶ月、だろうな」


 サマセット伯爵はそう言って頭を振った。


「つまりは、我々が取り得る選択肢は堅く守ることより、積極的に打って出ること、ですかな?」

「そういうことだ。とはいえ、エレルが壊滅してしまっても意味は無い。ゆえに守りながら攻める、という困難な任務にあたることになる。アーノルド大隊長はどう見る?」

「ご存知かも知れませんが、騎兵は籠城戦には向きません。歩兵主体で守るしかないでしょう」

「いや、私は士官学校を出ていないのでな。参考になる。ということは守りに関しては歩兵と法兵頼みか?」


 サマセット伯爵の視線を受けて歩兵大隊のピーター・ハル大隊長が答える。


「我々混成歩兵に関しては軽歩兵が多い編制ですので、弓でどうにかするしかないか、と。ただ、弓では大型の魔物に関しては威力不足です」

「ということは大型の魔物を相手にするのは法兵、ということか? 法兵中隊長……いや、先任小隊長はどうだ?」

「えっと……そうですね。一個小隊でかかれば一頭は相手に出来るかと……ただ、魔羆(ダーク・グリズリー)でしたっけ? ああいう特殊な魔物だと厳しいですが……」


 ウォルターズが歯切れ悪く言う。

 慣れない会議なのか、カーライルを亡くしたことなのか、カーライルの死因が自分を庇ってのことを気にしているのか。

 そちらも気になったが、ユートはもう一つ言うべきことがあることを感じた。


「あー、発言いいですか?」


 ユートの挙手に、参加者はみなびっくりしたような顔をする。

 これまで参加はしていても積極的な発言はほとんどなかったからであり、かつ今話し合っていることは純粋に軍事的なこと、専門教育を受けていないユートにはわからないのが一般的だからだ。

 何か剣呑な視線も混じっていたのは、門外漢のユートが出しゃばるのか、という視線か――


「ああ、構わんよ。司令部付で扱いは中隊長待遇であるから君にも発言する資格はある」


 一呼吸置いてサマセット伯爵が許可を出した。


「えっと、自分たちは大型の魔物と戦う時、前衛に槍や剣を使う者を置いて食い止めながら、後ろから魔法で掩護しています。こういう戦い方をすれば魔法――法兵一個小隊を使わなくても大型の魔物と戦えるのではないですか?」

「私の方からも意見があります。ユートの……失礼、ユート殿の言う通り、冒険者はそのように戦っておりましたし、それを見ている限り、有効と見ました」


 聞き慣れた声が聞こえる。

 見るとエレルにいた頃、街を出る時に気さくに声を掛けてくれていた門番でありエレルの警備隊長だったヘルマン・エイムズだった。

 ユートは知るよしもなかったが、ヘルマンは警備兵大隊の中隊長であり、大隊長が空席となっていることから先任中隊長として参加していたのだ。


「ほう、こちらでは冒険者は防衛戦に参加していたのか」

「……といいますと……?」


 サマセット伯爵の言葉にヘルマンが怪訝そうに答える。


「いや、なんというかな……実は在レビデムの冒険者にも義勇兵を募ったのだが、今回応募してくれた者は一人もいなかったのだ。みな、命が大事なのはわかるが……ユート殿、気を悪くしないで欲しいのだが、正直、西方軍を含む総督府の一部からは冒険者は利己的で唾棄すべき存在だという意見も強い」


 そのサマセット伯爵の言葉にユートも何も言えず、一瞬気まずい空気が流れた。

 ただ、先ほどユートが発言しようとした時に感じた、剣呑な視線の意味だけはわかったが。


「とんでもない! こちらでは有り難い戦力でした。我々だけですと法兵が全くいなかったので壊滅していたでしょう」


 ヘルマンは何を言うのか、と言わんばかりに頭を振った。


「そのようだな。では本題に戻ろう。ウォルターズ中隊長はユート殿の意見をどう考える?」

「……難しい問題ですが、法撃出来る時間が延びるならば、それにこしたことはないです」


 だが、そこでアーノルドが挙手する。


「総督、それはかなり難しいかと」

「なぜか?」

「歩兵は戦列を組んで戦うもの、とされているからです。ゆえに如何に戦列を崩さず戦うか、に重点が置かれて訓練されております。例えばそこら辺の新兵に戦列を組ませてもすぐに崩れるのと同じように、歩兵に冒険者の真似事をさせても上手くはいかないと考えます」

「ふむ……」

「それに私も戦いながらユート殿や法兵中隊の戦いぶりを幾度か見ましたが、ユート殿のように剣と魔法の双方に優れた者、少なくとも法兵も白兵で戦うことをある程度前提にした戦術のように見えます。ただ、我が軍の法兵は白兵に関しては素人よりはまし、という程度でしかありません」

「申し訳ありません、私も部下にそれをさせられるとは思えません……」


 アーノルドの説明に続いて、本職の歩兵であるハルが申し訳なさそうにそう言うと、それが決定打になったようで、サマセット伯爵は諦めたように言った。


「では法兵は今まで通りの集中運用としよう。次に持ち場だが……」




 会議が終わったのは夜更けだった。

 明日からのエレル防衛を滞りなく行うため、ようやく入城できた後だというのにサマセット伯爵以下、指揮官は疲れた身体に鞭打って会議を続けたのだ。

 会議が終わった後、ユートは遅くなった、と思いながらもエリアの家に帰ろうと司令部となった建物を出たところで後ろから呼び止められた。


「ユート殿! 先ほどは申し訳なかった」


 アーノルドだった。

 どうやら先ほどのユートの提案を拒否したことに対する謝罪らしい。


「貴君の提案は実にもっともなものであった。貴君の提案には落ち度はない」

「いえ、僕も軍の実情を知らずに発言しましたし……」

「いやいや、外部からの意見、というものは非常に貴重なものだ。それを無碍にせねばいかんかった上、総督閣下の冒険者に対しての評価の話が出た後でのことだったので、な」


 要するに意趣返しではない、ということを言いたかったらしい。

 軍内部における感情的なしこりを残してはならない、と上級者でありながら率先して動いたアーノルドの心遣いにユートも感謝する。


「お心遣い、ありがとうございます」

「それと一つ聞きたかったんだが、ウォルターズのことだ」

「さっきの会議も上の空でしたね」

「ああ、あいつは神経が図太いと思っていたのだが、アンディが戦死しただけであそこまで気を落とすとは……」


 アーノルドは小首を傾げる。

 ユートはそれほど長い付き合いではないが、行軍中のウォルターズの態度を見ていれば普段から破天荒で軍人らしくない性格であることくらいはよくわかっていた。

 そんなウォルターズがカーライルが戦死しただけでああも上の空だったのは腑に落ちないのだろう。


「実は……カーライルさんが戦死したのは……」


 ユートはそう言ってカーライルの最後の模様を話す。


「なるほどな。それではあのウォルターズでも落ち込むだろう。私も気に掛けておくが、ユート殿も気に掛けておいてやってくれ。あいつは軍内でもそこまで付き合いの深い者はおらん」


 要するに浮いているのだろう。

 まあ上官であったカーライルに対する態度といい、軍人としては褒められた態度ではなかったのでユートにもそれはわからなくはなかった。


「明日からは騎兵と冒険者は総予備だ。同じ部署の仲間として、よろしくお願いする」


 そう言うと頭を下げた。

 会議の結果、組織だった戦いが出来ない冒険者と、防衛戦には向かず“ポロロッカ”の元凶である魔物を捜索する第二騎兵大隊、そして大型の魔物が出た時の切り札である軍直属法兵中隊は軍の総予備扱いとなっていた。

 従騎士のアーノルドが頭を下げるのを見てユートも慌てて頭を下げる。


「こちらこそよろしくお願いします」

「ではまた明日な。今日はゆっくりと休めよ」


 それだけ言うと、アーノルドはきびすを返して司令部へと戻っていった。




 エリアの家に帰ると、もう寝ているだろうかと思ったがそんなことはなかった。


「おい、何やってるんだ!?」

「何ってお酒飲んでるのよ!? 見てわからないの?」

「アドリアンさんとセリルさんも?」

「ああ、俺は家がなくなっていたんでな」

「え?」

「魔物の攻撃なのか、半壊してやがった。で、マリアさんにお願いしてここに泊めてもらうことになったわけだ」

「ちなみに配給の食糧も届いたわよ。人数間違ってるんじゃないかってくらい」


 そう言いながらエリアはキッチンの近くに置かれた木箱を指さす。

 確かに五人分としても相当な量だった。


「あたしたち、士官待遇らしいからその増加食に戦闘要員の増加食で増えたみたい。こんな食べるとかおかしいでしょ」

「まあ少ないよりはいいだろ」

「そうなんだけど、釈然としないわ」


 そう言いながら、果実酒が次がれているらしい木のカップをあおる。


「ふー、美味いわ」

「ああ、この一杯のために生きてるって感じだな」


 そんなおっさんくさいことを言うアドリアンとエリア。

 まあアドリアンは年齢相応と言えば年齢相応なのだが。


「まあ明日どうなるかもわからない、となると一杯二杯くらいね」


 そう言いながらセリルも酒をあおった。


「ユート、あんたも飲みなさい」

「はいはい」


 そう言いながらユートも木のカップを取った。


「そういえば明日の俺たちはどこで戦うんだ?」

「あー、他の冒険者と一緒に総予備となりました」

「総予備か。エレルの危機にぼけっとしとけってのは性に合わんが、まあ本職連中がいるんだからしょうがないわな」

「そういうことです。ああ、でも魔法使いは掩護に出る可能性結構あると思いますよ」


 そう言いながらもう一杯あおる。

 よく考えればちゃんと夕食を摂っていないので思い切り回った。


「弓はどうするニャ?」

「ああ、そういえばレオナには俺の短弓をやったんだ。セリルでも引けない弓だったのに、こいつあっさり引きやがる」


 弓というものは熟練に時間のかかる武器の一つである。

 単に引くだけでも強い弓になれば素人には引くことはできないし、ましてそれを実戦的な速さ、精度で射るとなると訓練の必要性が高い。


「そこは獣人の力でカバーだニャ。獅子の子を舐めるんじゃないニャ!」


 レオナはそう言って胸を張る。


「……どう見ても猫だよな」

「うるさいニャ! あちきは獅子の子だニャ」


 他愛ない会話をしながら時間が過ぎていく。


「明日もこんな風に飲めたらいいのにね」


 誰にも聞こえないように、エリアがぽつりとそんな言葉を漏らした。



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