ぼくのかんがえたりそうのせかい
この世界には筋書きがある。一人ひとりの人生は生まれたときから決まっていて、僕らはそれに従って生きている。
ごく稀にそれに反抗する人がいるけど、僕にはその気持ちが分からない。全てが決められている、それに従いさえしたらいい、そんな素晴らしい世界に、どうして反旗を翻そうとするのか。こんな、何の責任も生じない素晴らしい世界に。
自分で決断することなんてなに一つなく、「神」の決めた筋書き通りに生きていたら幸せな生活を送れる。ああ、なんて良い世界なんだろう。
筋書きは「神」が決めている。
僕らは生まれたとき、特殊な脳波が発生して頭の中に死ぬまでの筋書きが浮かんでくる。「神」とは、その特殊な脳波のことだ。
それに従えば、犯罪をおかすこともなく幸せな人生を手に入れることができる。全ては決められていることで、それから外れることなどありえない。
「神」に反抗する人たちは、皆一様に「自分達は自由に生きるのだ、人形などではない!」などと主張しているらしい。
何を馬鹿なことを、と笑いたくなる。そもそも、その特殊性から勘違いされることが多いが「神」とは自分の脳波だ。つまりその筋書きは自分で考えていることと同じだ。それを「自由に生きる」? 「人形ではない」? そんな主張、片腹痛い。
僕はこの世界が好きだ。頭の中に浮かぶ筋書き通りに行動するだけで、幸せな人生を送れる。それは社会全体にも良い影響を及ぼすことになり、つまり僕らは生きるだけでこの社会に貢献することができる。これほどまでに素晴らしい世界が存在するか?
貧困も、争いも、なにもない。あるのは幸せな人生と、平和な社会。僕の理想の世界そのものだ。
僕はこの理想の素晴らしい世界を、心から愛している。
本当にこんな世界なら良かった。




