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防衛侵略論

作者: 潮路

 正体不明の円盤が地球に着陸したのは、ある夏の日のことだった。

 円盤から現れたのは、まぎれもなく宇宙人であった。宇宙人は地上に降りたつと、このように述べた。


「こんにちは、地球人の皆様。早速で悪いのですが、さっさと支配されてくださいませんでしょうか」


 その声を聞いて、地球の人々は大いに騒いだ。地球の言語が喋れるということは、相当に高度な知能と文明を持つのだろうが、発言の内容から察するに、友好的な態度ではない。あくまで他の星を植民地にしようという考えのようだ。

 その国の外交官は彼らに頼み込んで、三日の猶予をもらった。彼らは去り際に、外交官に対してこのように発言した。


「武力行使は無駄ですよ。私達の文明は、貴方達の文明よりもはるかに進んでいますからね」


 世界各国から首脳が集まり、宇宙人侵略対策会議が始まった。この時ばかりは国の面子など気にしてられない。

 協議の結果、宇宙人とコミュニケーションを取るべきだという穏健派と、宇宙人など武力で排除してしまえという過激派に分かれた。

 そして三日間の舌戦の末、遂に首脳陣は結論を出した。


・・・・・


 約束の時間ちょうどに、宇宙人は三日前の場所に降り立った。

 首脳陣から選ばれた、世界一優れた外交官達は汗を滝のように流している。


「それで、結論はどうなったのですか」


 地球の外交官達は、我々は貴方達と惑星間で友好を取りたいという旨を伝えた。

 しかし、宇宙人はまったく意に介さない。あくまで、無条件降伏を命じてくる。

 続いて外交官達は、妥協案をいくつも出した。これでも苦渋の策だったのだ、許してくれ、と言わんばかりに。

 それでも宇宙人はぴくりとも動かない。目的はすべての支配、アリ一匹すら逃さない、と言うのだ。

 外交官達は悩みに悩み、そして。


 スイッチを、押した。


・・・・・


 こうしてめでたく、この惑星は、我々β星人が獲得しました。

 惑星の原住人であった「ヒト」と呼ばれる生物には、早々にロケットで、宇宙へ退避していただきました。

 まあ、定員を遥かに超えていた上、燃料もほとんど入れてはいないので、どうなったかは分かりませんが…


 しかし、あの時の彼らの驚く様は凄かった。あのミサイルの爆発の後、傷一つ受けていない私の姿を見て、シェルターの中に逃げ隠れた彼らは、泣き叫ぶわ、怒り狂うわの大騒ぎ。

 そんなに、最終手段が効かなかったのが悔しかったんでしょうかね。

 あの後、彼らはあっさりと降伏して、この惑星のすべてを我々に譲っていただけました。


 この惑星は、過去侵略してきた場所の中でも、最高の場所になるでしょう。

 資源は豊富にあるし、我々よりもはるかに知能の高かった「ヒト」が残していった文化は、とても快適な生活を我々に提供してくれるでしょう。 


 こんな惑星が手に入るから、侵略は止められません。

 これからも、どんどん侵略活動を行っていきましょう。

 なに、大丈夫ですよ。心配いりません。

 我々が数十年の時をかけて完成させた、この「どんな攻撃すらも弾く素材」さえあれば、他に何もなくとも、勝手に自滅してくれるのだから。


高知能なほど、こういう類に引っ掛かりやすい気がする。

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