第二十八の神話
『夢』と言う言葉には、様々な意味、想いがある。
目を瞑り、健やかなる睡眠の果てに飛び立つ深層心理の中に広がる世界の夢。
まだ見ぬ未来、そして、希望が創り上げる将来の自分を描く世界の夢。
そして、現実とは違う、仮想の中に広がるワンダーランドたる世界の夢。
ここにあったのは、最後者となる仮想の国の様な世界だった。
地面は綿菓子の様なふわふわの雲。並ぶ街並みはみなお菓子で出来た家々。そして、中央に聳えるのは子供達の願いを材料に、オモチャやゲーム、ぬいぐるみ等を作る巨大な工場。
工場の煙突からは、何故かドーナツ状のピンクの煙が立ち上っていた。
「うわぁ〜……すごか!」
まさに、どっかの舞浜辺りにある、三木さん家のお城がある国みたいな世界に目を輝かせるクリスと珠雲。
ここはサンタ界。子供達の夢と、ヒゲと脂肪にまみれたおっさん達の世界。
そんな夢物語の世界に到着してからと言うもの、ずっと2人のリアル幼女ははしゃぎっぱなしだ。
「おーい、あんっまり離れ過ぎんなよー。あったしもこの世界詳しくねーんだからよー」
引率の偽幼女が2人を諌める。見た目は可愛らしい少女3人組だが、やって来た目的は捕らえられたサンタの救出、及び子供達やカップルの幸せを壊そうとする不埒な輩の殲滅だ。
あまりはしゃぎ過ぎるわけにはいかない。
「えと……はぁい」
「おぉ、来られましたか! さあ、こちらで救出部隊が待っております!」
先に部隊編成の為戻っていたジョナサンが、クリス達助っ人一行を見つけてやって来る。
どうやら既に出撃準備は整っている様だ。
「はっやいなー、さっすが一晩であらゆる異世界の子供達にプレゼント送るだけあるぜー」
サンタはクリスマス・イブの夜、異世界と言う異世界にプレゼントを配って回る。
配達時間が23時頃から翌日5時までの約6時間での配達となる為、正サンタだけでなく、人材派遣会社やアルバイト等、各世界から募って行われている。
無論、サンタ界自体にもあらゆる異世界のサンタ界があり、各世界の個人宅から子供達の手紙や願いをクリス達が見たオモチャ製造工場である『トナカイ・ターミナル』に集荷される。
そして、配達エリア毎にプレゼントが各亜空間にあるサンタ営業所に分けられ、先程の派遣やアルバイトを含む『セールス・サンタ・ドライバー』がトナカイとソリを操って配達が行われていく。
また、場合によっては親からの希望での時間帯お届けや、自宅以外にお泊まりをしている場合の配達場所指定等も受け付けている。
サンタとは、時間との勝負でもあり、体力との勝負なのだ。
近年はオモチャがゲーム等の軽貨物ばかりになってはいるが、やはり大変な業種だ。
「ただ、近年は自衛能力等も必要とされていますからね……そこで、神界としても異世界の平和を守る為に、こうして第二神位様に御足労願っていたのです」
説明をしながらトナカイ・ターミナルの広場へと足を運ぶ一行。
道中巨大で幾つものパイプに繋がれた、妙なデフォルメをされた機械からがっしょんがっしょん音を立てて次々包装されたプレゼントがベルトコンベアに乗って流れる風景や、可愛らしいミニサンタの人形やらがプレゼントを運ぶ、非現実的な夢の姿と共に、柱に掲げられた『納期厳守』や『私達は夢とプレゼントと笑顔を運びます』『ソリの速度厳守、安全運転を守りましょう』等の、現実的な社訓なんかが書かれたり、アルコール検知やソリ運転免許の提示、日報記載中のサンタがいたりと、妙に現実的な部分まで見えたりの、サンタの裏側まで知る羽目になったが。
因みに、幾度かクリスが包装前の人気のゲームソフトが流れるベルトコンベアを見つけた時は、まるでトランペットを欲しがる少年の様にガラス窓にへだりついたりもしていた。
そうして、トナカイ・ターミナルの広大なソリの駐車場に辿り着いた一行の眼前に広がるのは、整列した30名程の赤い赤い太った集団。
だが、個々から放たれる異様な殺気、赤い服から時折聞こえるモーターか何かの様な高音。そして何より、殺気が漏れながらも皆一様に優しい微笑を絶やしていないのだ。
明らかな異常、明らかな異形。だが、それが当たり前の様に、彼等は並んでいたのだ。
「見事にサンタばっかりたいね…サンタ、サンタ、サンタ、サンタ、サンタ、ゴリラ、サンタ、サンタ、サンタ……ゴリラ!?」
整列したサンタの集団を指差しながら数える最中に見つけたのは、列に何故か混ざっていた1頭のゴリラ。
誰もゴリラには気にも留めず、ただ並んでいた。
「あぁゴリさんですか。いやーゴリラによく似てますし、妙に毛深いからみんなゴリさんって呼んでるんですよ」
「ウホッ」
「いやどぎゃん見てもゴリラたい!! 天然由来100%ゴリラじゃなかね!? ナックルウォークの体勢で気付きなっせよ!!」
御丁寧に皆微動だにしない中、胸を叩くドラミングまでしてる、どう見てもゴリラ以外の何者でもないのに呑気に話すジョナサン。
「ちょっと落ち着きのない性格ですが、仕事は真面目なんですよ」
「ウホウホ、パクッ、もっちゃもっちゃ……」
「バナナ食うとる!! みんな並んどる中、バナナ食うとる!! 3秒前の『仕事は真面目なんですよ』ば取り消すなら今よ!?」
自由過ぎるゴリラのゴリさんまで雇用しなければならない程に、サンタ業界は人材不足なのだろうか?
食べ終わったバナナの皮を、前に並んでいたサンタの帽子を剥ぎ取って代わりに乗せたりしている、フリーダム過ぎるゴリラ。
「なあー、そんなんいいからよー、そろっそろ作戦開始の時間じゃね?」
「おぉ、そうですな。では……」
イリアに促され、腕に巻かれた時計を見るジョナサン。時刻は間もなく23時。サンタの活動時間だ。
ジョナサンがサンタとゴリラが並ぶ列の前に出ると、張り詰めた空気が一気に辺りに伝染する。
「全員揃っているな? ……よし、では皆に紹介する! こちらは毎年お会いするので知っている者も多いが、今回も肉体強化薬品や戦闘用改造ソリ等を提供して下さっている第二神位、イリア・キリスト28世様。そして、神界から助っ人として来てくれたタマモ・ヤナギくんとクリスティーナ・ローズマリー・ドラグマンくん。どちらも神獣を使役している、心強い仲間だ!」
『メリー・クリスマス!!』
壇上に上がり、ジョナサンの紹介にサンタ達が一同に声を張り上げる。
「今回の作戦概要は我等が仲間、ジョセフ・サンタクロースの救出だ! 諸君等の健闘を祈る!」
『メリー・クリスマス!!』
まるで軍隊か何かの様な規律と統率。
一同はジョナサンの号令に呼応すると、すぐさま隊列の後ろに並んだ物々しいジェットエンジンと主翼が取り付けられた各ソリへと搭乗を始める。
「さって、そんじゃ、あったしも始めるか」
そう言ってイリアが取り出したのは、度数がキッツイ日本酒の一升瓶。
それを、フタを開けた途端、グイグイとラッパ飲みし始める。
「えと……お……お酒……?」
「あったしさー、くぴくぴ……っかぁー! 作業する時に酒飲まないと、手ぇー震えんだよねー! あっはっはっ!」
「それ、依存症じゃなかね……」
プルップルに震えている指先を見せながら、高らかに笑うイリア。可愛らしい外見で一升瓶をまるで水の様に飲む姿は、中々にシュールだ。
「んじゃっ、あったしは対サンタ狩り用に開発した兵器の組み立てやってっから、あんた等は救出部隊の手伝いしてきなー」
「えと……いきなり……実戦……?」
「戦術ば乱したりせんね?」
コウから戦いの何たるかを訓練の際に教わってきた珠雲とクリス。
その時に、ただ闇雲に集団で突撃するのではなく、きちんとフォーメーションを組み立て、役割を以って戦うのだと教えられていた。
その為、コウが前衛、クリスが中衛、珠雲が後衛と基本フォーメーションでの訓練もかなりの数練習していた。
「あぁ、いーんだよ、あんた等は自由に動ける様に戦うよう、あったしが指示しといたから」
果たしてそんな適当な事で果たして大丈夫なのかと問いたいところであるが……。
「ウホッ」
親指を立てて聖女達に見せるゴリラを見る限り、大丈夫らしい。
「君達の能力については、既に第二神位様から資料を頂いて、全員が把握している。好きに動いて構わないよ」
更にはジョナサンからのお墨付きまでもらえたならば、問題はないだろう。
「えと……それなら……」
「ああ、それと、一応サンタとしてこちらの衣装に着替えてから出撃をしてくれるかな?」
そう言って、ジョナサンが渡したのは赤いサンタの衣装だ。
「分かった、じゃあ行こう、クリス」
「えと……うん……!」
こうして、サンタの一員として救出作戦に参加する事になったクリスと珠雲。
目指すは彼等が潜伏しているとされる神界の『焼肉屋すじこ』
コウ達にお仕置きをするべく、衣装に着替えに走る彼女達だった。
★★★★★
ソリは流石の天才科学者イリア・キリスト28世の作品とあり、免許を持たない彼女達でも問題なく進む様に自動操縦機能まで搭載されていた。
主翼に取り付けられたブースターが、音速すらをも超える力を持っているにも関わらず、G・キャンセラーと呼ばれる、加速や方向転換によって発生する重力加速度を無効化する装置まであり、全くGがかからない。
更にはソリを引っ張るトナカイもよく調教、強化されているおかげか、暴れる事なく化物の様なスピードを引き出すソリを安定させている。
ソリはそれ程までに素晴らしいものだった。全くソリに関しては文句はない。
そう、あくまでソリに関してはだ。
「えと……! す、スカート……! めくれちゃう……!」
「あんのスケベサンタあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
渡されたサンタの衣装……。それは、非常にスカートが短く、この音速に近い猛スピードで神界の夜空を駆け抜けるソリの上では、それはもうはためくと言うよりめくれ上がる様な状態だった。
しかも、真冬の衣装である筈なのに肩は開いておへそは丸出しと、防寒? なにそれ? おいしーの? と言わんばかりだが、きっちりと服の裏地に発熱、保温素材が使用され、どういう仕組みか剥き出しの足や肩までポカポカだから、近未来的テクノロジーの無駄遣い以外何物でもなかった。
「ウホッ、ウホウホ、ウホッ」
月明かりと発展の象徴たるビルの山々から溢れる光やネオンの輝きを見下ろし、見上げれば満天の星空輝く冬の夜空を飛び交うサンタ達の行軍の中、ゴリさんが指差すのは神界中央公園。
広大な敷地内の中央に位置する噴水広場にいる人物に、サンタ達の意識が集中される。
「ジョセフだ! 総員降下!」
スピードを殺す為に数度旋回し、噴水広場へとソリを降下させようとするサンタ達。だが、それこそが敵の罠。旋回の無防備を誘い出す為のものだ。
途端、周囲の木々から飛び交う自動小銃の鉛玉のシャワー。
木々に、闇夜に隠れた敵の襲撃は、もう始まっていたのだ!
「やばかっ! 神獣合身!」
ソリには強度な空間展開型の球体バリアの発生も可能としているが、このまま降下を強行するわけにはいかない!
珠雲がキュウビを合身し、やたら露出度の高いサンタミニスカドレス姿から巫女服狐尾の神獣鎧へと姿を変え、ソリの上で舞い踊り、闇夜を白い霧の世界へと塗り替えていく!
「夢幻!!」
珠雲の振り抜いた鉄扇から巻き起こる索敵破壊の白い霧。狙いを定める事が出来なくなった自動小銃の弾丸がまさにこの闇夜の様に闇雲に放たれていく。
「えと……皆さん……今のうち……えと……公園の駐車場に……!」
霧に紛れ、弾丸を回避すべく31台のソリを降下していくに最適な駐車場へと移動を始めるサンタの軍団。
まさに雲消霧散、弾丸を回避して次々と隠密に降下し、駐車場へと降り立つサンタと聖女とゴリラ。
ソリから下車と同時にソリの影に隠れて周囲を哨戒するサンタ達。
日中は子供連れのファミリー層やランニング、運動を楽しむスポーツを趣味とした人々。ちょっとお仕事をサボり中のサラリーマン等、多くの人々で賑わい、夜は本来ならばカップルが愛を囁き合う。そんないつでも人が多く訪れる神界中央公園だが、今は人の気配が全くない。
ここはもう戦場なのだ。サンタと、モテない男達の仁義なき戦いの舞台となっているのだ。
「よし、周囲には誰もいないな。いくぞ」
恐らくリーダー格なのだろう。サンタの帽子に何故か赤いツノがついた指揮官らしきサンタの号令に29人のサンタと2人の聖女と1頭のゴリラが公園の通路を歩き始める。
ガシャン!
突如、サンタ達の足下から金属音が聞こえる。
「あぐぅっ!!」
「シィィザーーァァァッ!? しまった! 罠か!?」
サンタの1人であるシーザー・サンタクロースの足に喰らいつく顎たる罠、トラバサミ。
定番中の定番な罠であるが、機動力を奪い、更には脱出が困難である事から罠として非常に有効だ。
「見ろ!あちこちに仕掛けられているぞ!」
通路にライトを照らしてみると、これまたびっしりと仕掛けられたトラバサミの巣窟状態となっていた。まさに足の踏み場もないくらいにだ。
「あっぶな……! どぎゃんしようか……!」
「お嬢ちゃん、何も通路通りに行く事はない。こちらの茂みから行こう」
サンタの1人がそう言って茂みの中へと飛び込む。その僅かな時が流れた後だった。
「ギャアアアアアアアアアアッ!!」
茂みの中へと進んだサンタの断末魔。
「ま、まさか茂みの中にまで罠が!?」
急ぎ状況を確認すべく、サンタ達が茂みの中へと入る。そこで見たのは、世にもおぞましいものだった。
「どうゆうらいくわっちんみぃ?」
強化され、象が乗ろうがどっかの物置の会社の社員が100人乗っても大丈夫な強度を誇るサンタ服をいとも容易くその持っている霧吹きの液体によって溶解し、裸体となったサンタの身体中に呪いの刻印の様に真っ赤な唇のマークをつけまくった、金髪でメガネで巨乳でミニスカでニーソで絶対領域でメイド服の……どうみても60代を過ぎた女性。
彼女こそ、この茂みの中の番人……。
「茂み……怖いでしょう……」
サンタの1人がポツリと呟くと、一目散に茂みから逃げ出す救出部隊。
彼は……彼女の餌食となったサンタは、犠牲になったのだ……。
「くっ、どうやら我々はここにおびき出されたという事か……!」
ツノ付きサンタ隊長が、忌々しいと言った口調で吐き捨てる。
恐らくまだまだ罠は大量に仕掛けられているのだろう。既に2人の隊員を失った。ジョセフの元に辿り着いた時には、一体何人のサンタが残っているのか……。
「…………………………」
「ど、どぎゃんしたとね……? クリス?」
これまで沈黙を守り、何かを考える様に顎を指で支える姿勢のクリス。
「えと……これ……私……突破……出来る……かも……」
「なんと!? どういう事かね!? 薔薇のお嬢さん!?」
何かに気付いたのか、ポツリと呟くクリスに、サンタ隊長が思わずクリスに向かって叫んでしまう。
「ひゃいっ!? あ、あの……え、えと……スタート地点の……トラバサミと……正規ルート以外を……通ると……現れる……茂みの……えと……番人……多分……この……えと……トラバサミの……抜け方は……」
そう説明しながら、トラバサミだらけの通路を右にステップ。左にステップ、また右へとジグザグに飛んでみせる。
そうして、見事一度もトラバサミに挟まる事なく、隣の遊具エリアに辿り着いたクリス。
『おぉー……』
「そして……えと……ここで現れるのが……2軍落ちした……中日ド○ゴンズの……外国人……内野手の……素振り……トラップ……!」
通路側を向いていたクリスの背後から襲い掛かる、外国人野球選手の素振りをそのまましゃがんで回避するクリス。
「えと……ごめんなさい……! えと……神獣……合身……!」
ミニスカサンタからゴシック・アンド・ロリータへと変化したクリスの指先から茨の鞭が伸び、外国人選手の身体に絡みついていく……!
「えと……更に……えと……このトラップの後に……出てくる……のが……えと……巨大な……渡る世間が……鬼しかいなかった……中華屋さんの……長男の……頭部……!」
遊具エリアから飼い犬を開放して自由に走り回る事が出来るドッグランエリアへと続く長い坂道から、クリスの宣言通りに転げ落ちてくる巨大な人の頭部!
『そんなこと言ったってしょうがないじゃないか』『そんなこと言ったってしょうがないじゃないか』『そんなこと言ったってしょうがないじゃないか』『そんなこと言ったってしょうがないじゃないか』
無数に転げ落ちるそれを、捕まえた外国人内野手に次々打ち返させながら進撃するクリス!
完全にトラップの内容を理解し、予測できているクリスに追随するサンタ一行。
「クリス……な、なんでそぎゃん分かるとね……?」
「えと……この……罠の……仕掛け方……これ……えと……私がプレイした……『ディープ・アンダーグラウンド』って……えと……ゲームの……ステージの……罠と……えと……まったく同じ……!」
敵は恐らくゲームに精通した者だろうが、まさかサンタ側にもゲーマー、それも天才的才能を持った者がいるとは思わなかったのだろう。
更に襲いかかる、ドッグランから噴水前への階段にそびえる大砲から降り注ぐ、どう見ても尻にしか見えない砲弾を、そばに繋がれていた漠然とした不安感を煽る巨大な謎の生物にまたがって回避していく!
「えと……お願い……! ローゼス……ウィップ……!」
そうして大砲を茨の鞭で破壊、沈黙させた事によりサンタとゴリラと珠雲も階段を昇りきって、いよいよ噴水前へと到着する!
「ジョセフ! 助けに……うっ!!」
「えと……ひどい……!」
辺りは静寂だった。
人の気配、いや、生き物の気配すらなく、ただ噴水から広がる水のハーモニーが奏でられるだけだ。
そんな静寂の中で、ベンチに四肢を繋がれていたサンタは……見るも無残な姿で、彼等の前に晒されていた。
「くっ! ……間に合わなかったか……!」
「こぎゃん……こぎゃん酷か……この世で最もお母さんに見られたら恥ずかしい姿に……!」
そう、捕らえられたサンタは……ジョセフは、でっぷりとしたお腹に隠れる様な状態まで無理矢理神界で人気の女児向けアニメ『まじかる☆ぷりんせす♪くーみん』と言う変身魔法少女のキャラクターパンツ(無論女児用)を穿かされ、股間にはどっかの原住民みたいなカラフルな男性のあれを収納するカバーが雄々しく聳え立ち、腹には『長野県産ハナモゲラ』と謎の言葉を油性ペンで書かれ、何故かニーソックスまで履かされており、背中には天使族の様な翼を肩掛け式に背負って『天まで届け、ぼくらの性欲!』と書かれていた!
しかも御丁寧に、顔面はセロハンテープで無理矢理アヘ顔、両手はテーピングでギッチギチにピースサインをさせてだ!
「血も涙もない連中め……! 悪魔族でも、こんな凶悪な事は思いつかんぞ……!」
血が出る程の力で自らの拳を握り締めるサンタの隊長。
納めることが出来ない怒りが、彼の身体を駆け巡っているのが、見て取れる。
「まさかサンタ軍の中にディープアンダーグラウンドのプレイヤーがいたとはな……いいだろう、ここまでサンタ軍の数を減らせなかったのはいささか計算外だったが……まあいい。喰らえ! リア充の眷属どもめ!」
何処からともなく聞こえてくる声。
敵の奇襲! そう思った時には、既に無数の弾丸が四方八方から飛来する!
「ぐわあぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ぬぅっ!!」
回避行動すらままならず、為す術もなく凶弾に倒れるサンタ達。
「えと……! お願い……! ローゼス・ホーゲン……!」
咄嗟にクリスが茨の壁を生み出し、前面からの弾丸を遮るも、後方は剥き出しのまま。
尚も弾丸はサンタ達に降り注ぐ!
「うわぁっ! ど、どぎゃんしよう!?」
既に囲まれたこの状況では、夢幻で索敵破壊をしても間に合わない。
狼狽える珠雲の前に、サンタの隊長が立ちはだかる。
「ここは私達に任せてもらおう。サンタ軍、戦闘形態!」
『メリー・クリスマス!!』
隊長の号令で、サンタ達が一斉にサンタ服の第二ボタンを押す。
途端、サンタ達の眼が紅に染まり、たっぷりと蓄えられた腹が引き締まり、全身が膨張。筋肉と言う鋼の鎧と武器を手に入れ、猛獣の如き様相へと変貌していく……!
「ふしゅるるるるるるる……!」
歪。それ以外にどうにも例えようがない程に、彼らは歪な姿へと変容した。
よいこの絵本から飛び出したような太った白髪におひげの姿から一転、逆によいこが見たら泣いておしっこちびってごめんなさいを繰り返しかねない程に凶暴な雰囲気を纏った強化サンタ27人が、次の瞬間にはクリスと珠雲の眼前から姿を消す。
……正確には、姿を消したのではない。隠れていた敵に向かって散開。
異常な程に強化発達した嗅覚と聴覚、視覚によって闇に紛れて潜伏していた敵を次々と捉え、各個撃破していたのだ!
「うっうわあああああああああああっ!!」
タラタタタタタタタタタッ!!
恐怖に顔を歪ませた敵が混乱のままに銃を乱射する音で、ようやくそれを聖女達が理解した時には、既に強化サンタ達が複数の敵を捕らえ、屈服、戦闘不能へと追いやっていた!
「う、ウチら……いらんかったとじゃなか……?」
獰猛性と強靭な肉体を手にしたサンタの猛攻に、珠雲が呟く。それほどに、サンタ達は圧倒的に強かった。
「くそ……っ! 今年も強すぎる……! 化け物どもめっ!!」
隠れていた木の上から降り立ち、撤退しながら自動小銃を放つ敵の1人。
まるで特殊部隊の様な黒ずくめのBDUと呼ばれる戦闘服にひじやひざのプロテクター。タクティカルベストに顔全体をすっぽりと覆う目隠し帽のバラクラバにヘルメット姿。
じりじりとサンタに追い詰められ、自動小銃を放ち続けるが、獰猛性と以上発達した肉体を手にしたサンタは、あろうことか連射で放たれた銃弾を素手で全て掴み取り、握られた掌を広げるとパラパラと潰れた鉛玉をその場に幾つも落ちていく!
「くっ! このままやられると思うなよ……! 消し飛べ靴下野郎!」
追い詰められた男がタクティカルベストのポケットから取り出した小型のリモコンのスイッチを押すと同時に、サンタの真横にあったベンチが、サンタ毎爆炎と轟音を巻き起こして吹き飛ばす!
どうやら事前に仕掛けたC4爆弾を起動させたらしく、サンタをリタイアへと追い込んでしまう。
「よくやった、我等自宅警備部隊はただではやられんぞ、サンタども!」
新たに増援と共にやって来たのは、50人程の応用の装備を施した武装集団を率いる赤いベレー帽の男。
ほぼ統一された同じ装備であるが、布団たたきを手に赤いベレー帽と、1人だけ特殊な装備をしている事から、この男が指揮官なのだろう。
これで26人のサンタと1頭のゴリラ対100人はいるだろう敵の自宅警備部隊の大乱戦へと発展。数の上ではサンタ軍が半数程と不利ではあるが、イリアによる強化のおかげか、人間離れした力を以て、次々と敵を駆逐していく。
だが、彼等もまたサンタ狩り平和隊の精鋭部隊。怪物と化したサンタを相手に連携し、地雷やC4爆弾を仕掛けたエリアに誘導しては、爆ぜる爆炎へと怪物サンタを誘い込む等、的確な戦術を駆使する!
パラタタタタタタタタッ!! ゴキャッ!
銃が、肉体が、己の敵を討たんと奏で躍動する中……。
「よ、幼女だ! 幼女タンがいるぞ!」
「やばっ!? ウチらも狙われた!?」
自宅警備員達にとって、最大の天敵の1つである幼女を発見した赤いベレー帽と布団叩きの指揮官。クリスと珠雲は彼等にとって畏怖すべき、そして愛すべき存在だ。
「総員! 幼女を発見! 幼女を発見! 決して手出しはするな!」
『イエス! ロリータ! ノー! タッチ!!』
なんかどっかのガチヲタ神が言っていたような事を叫ぶ、自宅警備員達。
どうやら、彼等の様な二次元をこよなく愛する者達にとって、鉄の掟らしい。
戦いながらもしっかりガッツリ、珠雲とクリスを撮影しちゃってるあたり、彼等も十分化け物だろう。
「ふしゅるるるるるるる……やはり手強い……!」
強化された防弾サンタ服がボロボロになりながらも善戦し続けるサンタ隊長。
既に戦闘は双方の兵力も随分減少し、決着の時は近づいていた。
「赤い化け物どもめ……! だが我等は負ける事はない! この守るべき自宅と! 守るべき他人に見られたら色々とマズいHDDがある限り!」
自宅警備隊の指揮官が吠える。
100人いただろう警備隊も、最早残りは3割程度。
対してサンタ部隊の兵力は残り17程。圧倒的な差がここまで肉薄しながらも、未だ闘志が消える事はない自宅警備部隊。
「守りたい家がある! 守りたい二次元の嫁がいる! それが俺達の強さの秘訣だ!!」
『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!』
普通ならば戦意喪失してしまうであろうこの場面で、的確に味方を鼓舞するこの指揮官は、非常に優秀な人物なのだろう。
隊員の誰1人たりとも、敵前逃亡等する事なく立ち向かう!
「えと……あの……」
「ちょっとよかね……?」
自宅警備員達にポーズを要求され、右足を上げて左腕を後頭部に回したポーズで臨時の撮影会をしながら聖女達が盛り上がる自宅警備隊に割って入る。
「なんだね? 幼女タン達」
「ここ……公園たいね?」
「えと……みなさんのおうち……えと……ここに……えと……ないですけど……」
『…………………………』
「そうだったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
今になって、ここが自宅ではない事に気が付いた自宅警備部隊の指揮官!
彼等は自宅を警備してこそ最強の存在であるだけに、宅外派遣ではその力を発揮できない!
それは言うなれば、顔が水に濡れて力が出なくなるアンパンで出来た謎の生命体のようなもの!!
「ま、守る自宅やHDDが無ければ……我々の力が発揮できない……!」
気づいちゃいけない事実に気付いてしまったせいか、先程までの燃え上がる程に高い士気が一気に下落し、へなへなとその場に座り込んでいく自宅警備員達。
「あ、隙有り。夢心地!!」
「えと……! お願い……! ローゼス・バイト……!」
そんな中、情け容赦なく舞を踊ってクリスを4人に分裂させて放つ茨の杭による一撃が、すっかりやる気をなくした自宅警備員達をぶっ飛ばしていく!
『まそっぷ!!』
妙な叫び声と共に夜空の向こうへと消えていく自宅警備隊の面々。
「自宅警備部隊……恐ろしい敵だった……」
しゅるしゅると元の太ったヒゲ面のサンタへと戻って呟くサンタ隊長。
辛くも勝利したとはいえ、ジョセフは無残な姿に晒され、味方も甚大な被害を受けている。
「なんか……戦いの割にはしょーもなか気がするばってん……」
こうして、救出作戦の一夜は終わりを迎えたが、救うべき仲間は辱めを受け、多くの戦闘不能者が出てしまった。
改めて敵の恐ろしさを見せつけられたサンタ軍。決戦は、これ以上の恐怖と残酷さが待っているだろう。
「ウホ、ウホウホ」
彼等の一団から離れた位置でゴリさんがスマホをいじる。
同時に、既にサンタ狩り平和隊は暗躍を続けていた……。
★★★★★
「さ、作戦参謀! 自宅警備隊が!!」
「もう間者からの連絡で知ってるじぇ。敵の新戦力についても判明した」
所変わって、ここは焼肉屋すじこ。
敵をおびき出す作戦自体は成功したが、戦力を削る事が出来ず逆に自宅警備隊がやられてしまったとの報告を部下の男から聞くも、慌てる様子のない作戦参謀。
既に同様の内容を間者から連絡を受けたであろうノアの方舟をテーブルに置いて、ゆっくりと息を吐き出す。
「ほう、kwskだお」
傍にいた最高司令官が問う。
「敵は、クリスと珠雲を引き込んでいた。恐らくヴァルハラの差し金だじぇ」
「珠雲たんとクリスたんもかお!? くっ……漏れと嫁達を引き裂くだなんて……!」
「うん、とりあえずトヨ……じゃない、最高司令官、おま~ブン殴らせろ」
『しっと』と書かれたマスクに表情が隠れた状態でも、怒りの様相がよく分かる作戦参謀。
「やだなぁ、そう怒らないでほしいお、お義兄さん。ひでぶっ!」
作戦参謀の右拳が最高司令官の頬にクリーンヒットする。
「とにかく、決戦まであと2日。準備を急ぐじぇ。間者から来たメールからは『サンタ軍はイリア・キリスト28世によって、対サンタ狩り最終兵器の組み立てを開始、警戒されたし。また、新たに聖女2名が加入。我が軍の作戦参謀及び最高司令官への対策と思われる。十分警戒されたし』とある。こっちもその対策会議をすぐに始めるじぇ」
自宅警備部隊を失ったとはいえ、各自サンタ狩りの武装は充実してる。高速サンタソリに対抗した航空支援も可能な程だが、やはりサンタ軍各自の野獣の様な強さの他にも懸念事項が増えたとなれば、対策を講じないわけにはいかない。
「わかったお、早速冷麺を食べながら会議するお」
そう言って、2階の個室へと移動する作戦参謀と最高司令官。
残されたのは報告に来た部下と置きっぱなしのノアの方舟のみ。
「………………」
こっそりノアの方舟を覗いてみる部下の男。
『ウホッウホホッウッホホホホウッウホウホウホッウホッウホッウッホウッホウッホッチーズ蒸しパンになりたい』
「書いてある内容ぜんっぜん違う!!!」
間者のゴリさんから届いたメールに思わず叫ぶ部下の男。
決戦まで準備を急ぐ両軍。今宵も、冷たい神界の風が、夜空を薙いでいた。
★★★★★
~2日後~
いよいよ訪れた決戦の時。サンタ界のトナカイ・ターミナルには、先日の救出部隊の比ではない、大量のサンタ軍の本隊が整列していた。
無論、ゴリさんも相変わらずバナナを食べながらだ。
「いよいよ決戦たいね……」
「私の部下、諸君らが愛してくれたジョセフ・サンタクロースは恥ずかしい恰好をネットにばらまかれて社会的に死んだ! 何故だ!! 戦いは一昨日よりやや落ち着いた。諸君らはこの戦争を対岸の火と見過ごしているのではないのか? しかし、それは重大な過ちである!」
ジョナサン・サンタクロースが演説する中、演台の後ろに幹部クラスのサンタ達と共に並ぶクリス、珠雲、イリアの3人。
いよいよ決戦、コウやトヨフツにお仕置きをするべくヴァルハラに命じられた戦いが、いよいよ幕を開ける。
いささかしょうもない戦いな気がするが、それでも互いに本気でぶつかるのだ。
あの強いコウと。そう思うと、なんだか身が引き締まる。
ワアアアアアアアアアアアアッ!! ジーク・サンタ! ジーク・サンタ!!
巻き起こる大歓声に、脳内の世界から現実へと引き戻される。
「さって、ほんじゃあ、珠雲ちゃんよー、あんたも演説しなよ」
「はぁ!? な、なんでウチね!?」
ジョナサンが演台から下がったと同時に、イリアに急に振られて困惑する珠雲。
「そっりゃー神界から来た助っ人だしー? あったしじゃ下ネタしか言わねーし、クリスちゃんじゃー喋れねーだろ?」
「え、えと……は、はい……」
確かに、ただでさえ口下手はクリスがこんな大舞台に立てるとは思わないし、かと言って、イリアも大概な理由だ。
だが、確かにここで神界からの代表で演説を行えば、サンタ軍の士気も上がるだろう。
ジョナサンも、珠雲に期待しているのか、目線を向けて待っている。
「~~~~~~~っ!! わ、わかったたい! もう! やってやろうじゃなかね!!」
そう言って、大股で演台に向けて歩く珠雲。
演台から見るサンタの大群は、まさに赤い海の様だった。皆、新たに演台に現れた少女に視線を集中させていた。
それを全身に感じて一瞬身体が強張るのも、深呼吸をして緊張をほぐし、口を開く。
全てはサンタ軍が勝利する為に。全てはアホな兄をお仕置きする為に。
「同士諸君。一昨日、サンタ救出隊が襲撃ば受けた。 ばってん、予定に変更は無か。全て想定どおりたい。 現刻より状況ば開始する。……勇敢なる同志諸君。 ジョセフ・サンタクロース上等兵は、かけがえのない戦友だった。鎮魂の灯明は我々こそが灯すものたい。(社会的に)亡き戦友の魂で、我らの銃は復讐の聖女となる! 辛子レンコンの裁きの下、5.45ミリ弾で奴らの顎ば食いちぎれ!!」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!
うねりを上げて天にまで昇る大歓声。サンタ軍の士気は最高潮にまで膨れ上がった。
敵はカップルや家庭の幸せを壊そうとするモテない武装集団。夢と希望を守る為、サンタ達がクリスマス・イブの夜空へと、舞い上がった。
★★★★★
時を同じくして、焼肉屋すじこ。
モテない男達もまた、最高司令官の前に並び、決戦への士気を高めていた。
カウンター席を演台とし、最高司令官が口を開いていく。
「諸君、私は萌えが好きだ。諸君、私は萌えが大好きだ。ツンデレが好きだ、ヤンデレが好きだ、幼女が好きだ、ツインテールが好きだ、メイドが好きだ、スク水が好きだ、JKが好きだ、魔法少女が好きだ、ひんぬーが好きだ。アニメで、漫画で、ラノベで、メイドカフェで、ゲームで、夏コミで、冬コミで、原画展で、秋葉原で、同人ショップで、この地上で存在するありとあらゆる萌えキャラが大好きだ。
朝寝ている時に隣同士の家の、窓から窓へと移って部屋にやって来て優しく起こしてくれる幼馴染好きだ。
幼女が上目遣いで潤んだ瞳で小さく『おにいちゃん』とささやく様に呼びかけられたら心がおどる。
敵幹部の操るヒロインを愛の力で正気を戻させ、必殺の合体攻撃で敵幹部を撃破するのが好きだ。
悲鳴を上げて、オークに捕らえられた女騎士が『くっ…殺せ!』と言う瞬間など胸がすくような気持ちだった。
エロ同人誌制作で推しキャラを蹂躙するのが好きだ。
恐慌状態のヒロインが既に息絶えたライバルを何度も何度も刺突して『やっぱりウソだったんじゃないですか……中に誰もいませんよ』と、のたまう様など感動すら覚える。
スクールアイドルプロジェクトで推しメンを吊るし上げていく様などはもうたまらない!
泣き叫ぶケモミミ少女達が私のマウスに振り下ろした指先とともに金切り声を上げるBGMにばたばたとエロCGをギャラリーに刻んでいくのも最高だ。
哀れなひんぬー達が雑多な小さなお胸で健気にも立ち上がってきたのを89センチの巨乳キャラにプライドを木端微塵に粉砕された時など絶頂すら覚える。
年上のお姉さんキャラに滅茶苦茶に叱られるのが好きだ。
この幼女キャラは純潔を散らしてはならないと必死に守るはずだったがエロ同人誌で蹂躙されレイプ目で犯され殺されていく様はとてもとても悲しいものだ。
背中に物量のあるおっぱいを押し潰されて『あててんのよ』と囁かれるのが好きだ。
ラッキースケベが発生した後、被害にあった女の子達に追いまわされ害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ。
諸君、私は萌えを極楽の様な萌えを望んでいる。
諸君、私に付き従う大隊戦友諸君。
君達は一体何を望んでいる? 更なる萌えを望むか?
現実をふと見た時、情け容赦のない糞の様な絶望を見せるリア充を望むか?
鉄風雷火の限りを尽くしバカップルどものラブコメを殺す嵐の様な闘争を望むか?」
『戦争! 戦争! 戦争!』
「よろしい ならば戦争だ。我々は渾身の力をこめて今まさに振り降ろさんとする握り拳だ。
だがこの暗い闇の底でリア充どもが合コンやらサークルだとかと行うのを年がら年中堪え続けてきた我々にただの戦争ではもはや足りない!!
大戦争を!! 一心不乱の大戦争を!!
我等はわずかに一個大隊、千人に満たぬ現実に敗けた敗残兵に過ぎない。
だが諸君は一騎当千の古強者だと私は信仰している
ならば我らは諸君と私でネットの中では総力100万と1人の軍集団となる。
我々を忘却の彼方へと追いやりラブホとか言う都市伝説の施設で眠りこけている連中を叩き起こそう。
脇の毛をつかんで引きずり降ろし、眼を開けさせ思い出させよう。
連中に恐怖の味を思い出させてやる。連中に我々のカチャカチャカチャ……ッターン! の音を思い出させてやる。
ネットと現実のはざまには、奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる。一千人の働いたら負けの戦闘団で、世界を燃やし尽くしてやる
『最後の大隊指揮官より全萌え擬人化艦隊提督へ』
目標神界本土ユグドラシル上空!! 第二次サンタ狩り作戦、状況を開始せよ!」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!
最高司令官の号令と共に、雄叫びを上げて焼肉屋から飛び出す武装モテない男達。
よいこがプレゼントを待ちわびて眠るクリスマス・イブの夜。
サンタとモテない独身男性達による、仁義ない戦いの火蓋が、今まさに切って落とされた……!




