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一休み
⑻
「堅固は、愛とどうやって仲良くなったんだ?」
デパートの休憩スペースにあるソファに座っている章が、欠伸を噛み殺して隣にいる堅固に問いかけた。
因みに、女子勢はまだ買い物の真っ最中だ。
「どうだったかな…」
記憶を探るように腕組みをして唸っていた堅固は、ぽんと手を打った。
「あぁ、そうだった。その日は愛が弁当を忘れてきたんだよ。意地張って我慢してたから、パンを差し出したら目を輝かせてた」
「変わらなさ過ぎだろ…」
どうやらその頃から食い気には逆らえない性分だったらしい。
「話してみれば結構面白いやつだよ、愛は。大概のことは要領良くこなすけど、いかんせん人付き合いだけは苦手らしい」
「なるほどね…」
妙に貫禄があるせいか、堅固はまるで愛娘の話をする父親のように見えて、章は少し可笑しかった。
「もしかしてあいつの事気になってたりすんのか?だったらすごいお似合いだと思うけどな」
少しからかうだけのつもりだったのだが、
「ば、な、ぁある訳無いだろう‼︎」
「いやお前分かり易すぎるよ!」
章の中で堅固のイメージが総崩れした瞬間だった。




