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混沌とした世界の中でSS~静寂のアンダーワールド~

珍客と恋物語

作者: 山本正純

『全体の90%以上が恋愛を描いた小説』が恋愛小説であるとのことなので、ジャンルを恋愛にしました。


 2012年9月17日。午前10時。三連休最終日。その日公安調査庁長官秘書の遠藤アリスは自宅で休日を過ごしていた。

 その日はいつもと同じ休日になるはずだった。思わぬ珍客が来るまでは。

 突然遠藤アリスの自宅のインターフォンが鳴った。訪問客とは珍しいと思ったアリスは玄関口に向かう。


 玄関のドアを開けると小柄な女性がおろおろとしながら立っていた。髪型は黒いショートボブ。顔は童顔で見た目10代にしか見えない。

「久しぶり」

 その女性は大荷物を抱えて挨拶した。

「篠原さん。その荷物は何ですか。それと訪問の理由は何でしょうか」

「泊まりに来た」

 彼女の名前は篠原真純。裏社会では別の名前『地獄の商人シノ』という名前があるが、遠藤昴の元カノである。

 突然兄の元カノが妹の自宅に泊まりに来る。このことは遠藤アリスを動揺させる出来事だった。


「三連休最終日に泊まりに来る人はいないと思いますが。しかも元カレの妹の家に」

「昴君。捕まっちゃったでしょ。だから泊まる所がなくなったから」

「他に友達はいないのですか。ホテルなどの宿泊施設もあると思いますが」

「一人だとさみしいから」

「分かったから上がってください」

 仕方ないと遠藤アリスは思った。篠原真純は小さく頷き玄関から彼女の家に入る。

 こうして兄の元カノと妹との奇妙なお泊り会は始まった。

 

 遠藤アリスは紅茶を注ぎながら呟く。

「何でこんな内気キャラをお兄様の元カノなのでしょうか」

「昴君は私のもう一つの顔を好きだったと思う。私。二重人格者だから。内気な方は嫌いだと思う」

「前から気になっていたけど、本当に二重人格者なのですか」

 篠原は小さく頷く。

「うん。今日はこんな感じだけど、仕事着だと結構しっかりするんだよ。本当は仕事着で泊まりに来たかったけど、生憎クリーニング中で。でも仕事着でもちょっとしたことでこんな感じに戻っちゃうの」

「分かった。これから東京拘置所でお兄様の面会に行くけれど、一緒に来ませんか。お兄様は知っているでしょう。あなたが本当は内気な性格であること。だったら気になるでしょう。内気な部分も好きであるのか」

 遠藤アリスの一言を聞き篠原は顔を赤くした。

「私は元カノだよ。未練がないと思う」

「でもあなたには未練がある。だったら確認するべきだと思いますが」

 

 午前11時。篠原真純は遠藤アリスに付き添われ東京拘置所にやってきた。

 2人は受付を済ませると面会室に通された。

遠藤昴が面会室に現れるまで2人は会話を続ける。

「楽しんでいるよね。ラブコメ展開」

「突然泊まりに来た腹いせです」


 その時面会室のドアが開き、遠藤昴が阿現れた。ガラス越しの再会。遠藤昴は珍客に驚いている。

「珍しいですね。篠原とアリスは一緒に面会に来るとは」

「私のこと。どう思う」

 いきなりかとアリスは思った。アリスは篠原に耳打ちする。

「その前に聞くことがあるでしょう。刑期がどのくらいになるのかとか」

「早く聞かないと忘れそうだから」

 小声で会話する2人を見て昴は微笑む。

「どうと言われても答えようがありませんが」

「内気な私をどう思う」

「そっちの方が好きですが。仕事着のあなたは強いでしょう。それに比べて今は守りたいと感じる弱さがある。そこが好きです」


 篠原真純は顔を赤くする。

「それ。告白だよね。縁り戻したいと考えているの」

「これまでの恋愛で篠原との恋愛が一番楽しかった。だから刑期が終わる4年間。待っていてくれないか」

「それ。本当。でも浮気はしないで。浮気したから刑務所にいるのでしょう。次に浮気したら許さないから」

 

 そうして短い面会時間は終了した。東京拘置所の玄関前を遠藤アリスと篠原真純は会話をしながら通り過ぎる。

「よかったですね。縁りが戻せて」

「うん。これから定期的に面会に訪れる予定」

 篠原真純は笑顔になった。4年間という長い期間を彼女は待ち焦がれる。

 この日から篠原真純の口癖は『早く4年経たないかな』になった。

 


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