淡い残灯に身を委ねて
吐く息は白く、意識はただ揺蕩うばかり。
定まらぬ眼にはボンヤリと淡い赤と白とが映るのみ。
ああ、どれほどの時間が経ったのだろう。
のっぽであったロウソクは今やすっかりとちびてしまった。
人生幾ばくぞ。齢三十にして失せる灯火は、今や未練の『み』の字も考えるほどの余裕もない。
ただ、揺らぐ炎が私の命の手綱であることは、足りぬ思考でも理解してしまう。
ああ、もはや数刻と持たぬ私の身に、いったい何ができようか。
だが、自ずから決めた山という道。こうなることは承知だったはずだ。
されど、なれど——今は、どうしても死が恐ろしい
失せる灯火が永く居てくれたらと。
今が、夢であればと。
そう思わずには居られない。
ああ、呪うべきは我が浅慮。
単独でかの山脈の登頂など、夢見るべきではなかったのだ。
自業自得。因果応報。身から出た錆。
枯れた語彙の中で巡る言葉は、どれも酷く憂鬱とさせる。
滑落した身体は存外に動き、洞穴まで来たまでは良かった。
だが、手に残った物はロウソクとマッチの一本、そして少しの食料のみ。
耐え忍ぶには難しく、されど身を捨てる覚悟もできぬ程には少しの光を抱いていた。
ああ、されどその希望の光すら、ついに絶えようとしている。
儚きかな我が人生。
生の終わりは、こうも呆気のないものなのか。
いや、むしろ私にはこれくらいが良かったのかも知れぬ。
友人の警告も聞かず、一人で冬の山に登るとは、今考えても、いや今考えるからこそ、愚鈍なものだ。
若気の至りとはいうけれども、そろそろ落ち着きたい年頃であろうに。
ああ、やはり、私はどこまでも幼かったのだ。
十八に家を飛び出してから、何も変わっていなかった。
どこまでも夢を見て、どこまでも幻想に辿り着きたかった。
——だが、それこそが私の人生であった。
愚かで、身勝手で、欲のままに生き、そして欲のままに死ぬ。
ああ、望むべきは我が人生かな。
この人生を歩めたことに私は喜ばねばならなかったのだろう。
なれば、今喜ぼう。
あとわずかの残灯に喜びという燃料を焚べて
ああ、あったかい




