↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら最強種だけどレベルが最弱でした。  作者: マッティー
第二章 広がる世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
220/323

第二百二十話 形なき力

目には見えなくても、確かにそこにある力。


その力を扱うための一歩は、決して簡単なものではありません。


それでは、第220話をお楽しみください!

 翌日。


 ユウトは再び、王城から少し離れた訓練場へ足を運んでいた。


 朝の柔らかな日差しが地面を照らし、周囲の木々が穏やかな風に揺れている。


 昨日は魔力を感じ取ることから始まり、最終的には指先へ小さな光を灯すことに成功した。


 あれほど大量の魔力を持ちながら、ほんの僅かな量を操ることすら難しいとは思っていなかったが、確かな手応えはあった。


(……昨日の感覚、忘れてないといいけどな)


 ユウトは自分の右手を見つめた。


 魔力を無理やり引き出すのではなく、身体の中を巡る流れを感じ取り、必要な分だけ集める。


 頭では理解できている。


 問題は、それをいつでも再現できるかどうかだった。


「さて、始めましょうか」


 シエルが一歩前へ出た。


 その声に、ユウトは顔を上げる。


「おう! 今日もよろしく頼むぜ、シエル先生!」


「……その呼び方、まだ続けるつもり?」


「もちろん!」


 ユウトは当然とばかりに頷いた。


「昨日も教えてもらったし、今日も教えてもらうんだから先生だろ?」


「……好きにしなさい」


 シエルは呆れたようにため息を吐いた。


 その様子を見ていたシアが、楽しそうに笑う。


「シエル先生、今日もよろしくお願いするっす!」


「……シアまで」


「ガッハッハッ! 人気者じゃねぇか!」


 リトも豪快に笑い、シエルは額へ手を当てた。


「……あなたたち、真面目にやる気はあるの?」


「あるある! めちゃくちゃある!」


 ユウトが慌てて答える。


「だったら、まずは話を聞きなさい」


「……はい!」


 昨日に引き続き、シエル先生の授業が始まった。


 ◇


「今日は次の段階へ進むわよ」


 シエルの言葉に、ユウトは表情を引き締めた。


「次の段階?」


「ええ。昨日は魔力を感じて、必要な場所へ集めるところまでだったでしょう?」


「ああ。指先に小さい光が出たやつだな」


「そう。それができたなら、今度は集めた魔力へ形を与える練習をしましょう」


「……形?」


 ユウトが首を傾げる。


 魔力そのものに形があるという感覚は、まだよく分からなかった。


 昨日感じた魔力は、身体の中を巡る温かな流れのようなものだったからだ。


「いい? 魔法とは、魔力を思い描いた形へ変える技術なの」


 シエルは自分の手のひらを上へ向けた。


「ただ魔力を放出するだけなら、昨日のあなたにもできたわ。でも、それだけでは魔法にはならない」


「……なるほど」


「炎でも氷でも構わない。まずは、どんなものを作りたいのか、頭の中で鮮明に思い描くことが大切よ」


 そう言いながら、シエルは指先へ意識を集中させる。


 次の瞬間、小さな炎がその先に灯った。


「おぉ……!」


 ユウトは思わず身を乗り出した。


 揺らめく赤い炎。


 その大きさは、昨日ユウトが灯した光と大差ない。


 だが、両者は明らかに違っていた。


「これが、魔力へ形を与えるということよ」


 シエルが軽く指を動かすと、炎は静かに消えた。


「大きな魔法を使う必要はないわ。まずは小さなものを思い描いてみて」


「……分かった!」


 ユウトは力強く頷いた。


 すると、横からリトが口を挟む。


「アニキ、いきなり大火事にはするなよ?」


「するか!」


「昨日のを見た後じゃ、ちょっと心配になるっすねぇ」


 シアまで笑いながら頷いている。


「お前ら、昨日のこと引っ張りすぎだろ!」


「それだけ衝撃的だったってことよ」


 シエルまで平然と答えた。


「先生まで!?」


 ユウトが抗議すると、三人の笑い声が訓練場に響いた。


 もっとも、昨日の失敗を考えれば、心配されるのも無理はなかった。


「……よし。今度こそ慎重にやるぞ」


 ユウトは気を取り直し、右手を前へ差し出した。


 ◇


 ゆっくりと目を閉じ、意識を身体の内側へ向ける。


 昨日は魔力の流れを感じ取るだけでも苦労したが、今日は少し違っていた。


 呼吸を整えると、身体の奥にある温かな感覚が自然と浮かび上がってくる。


(……お、分かるぞ)


 昨日よりも、ずっとはっきりしている。


 魔力がどこにあるのか、どのように巡っているのか。


 すべてを把握できるわけではないが、少なくとも昨日のように手探りではなかった。


「……いい感じね」


 シエルが静かに声を掛ける。


「そのまま、右手へ魔力を集めてみて」


「……おう」


 ユウトは言われた通り、意識を右腕へ集中させた。


 身体の内側を巡る魔力の一部が、ゆっくりと腕を伝っていく。


 肩から肘、手首を通って手のひらへ。


 その流れは昨日よりも安定していた。


 無理に力を込めなくても、魔力が自然と集まってくる。


(……よし、ここまでは大丈夫だ)


 ユウトは小さく息を吐いた。


 以前なら、ここで余計な力を込めてしまい、魔力を一気に放出していただろう。


 だが、今は違う。必要以上に動かさないよう、意識を保つことができていた。


「そのままよ」


 シエルの声が聞こえる。


「焦らないで。今度は、その魔力が何になるのかを思い描いて」


(……炎、か)


 ユウトは頭の中に、小さな火を思い浮かべた。


 赤く揺らめく炎。


 近付けば温かく、触れれば熱い。


 転生前の世界でも、何度となく目にしてきたものだ。


 その形を思い出すこと自体は難しくない。


(……こういう感じだよな)


 小さな炎が、手のひらの上で静かに揺れている姿を想像する。


 燃え上がる火。


 揺らめく輪郭。


 その温もりまでも、できる限り鮮明に思い描いた。


 そして、そのイメージを手のひらへ集めた魔力に重ねていく。


(……頼むぞ)


 ユウトは意識をさらに集中させた。


 すると。


「……っ!」


 手のひらへ集まっていた魔力が、僅かに揺らいだ。


 それまで安定していた流れに、小さな変化が生じたのだ。


(……おっ!?)


 一瞬、何かが起こりそうな感覚があった。


 ユウトは慌てて意識を集中させる。


 だが、次の瞬間には、その揺らぎも収まってしまった。


「…………」


 恐る恐る目を開ける。


 右手の上には、何もなかった。


 炎どころか、昨日のような小さな光すら灯っていない。


「……ダメか」


 ユウトはがっくりと肩を落とした。


 それなりに手応えはあったつもりだった。


 魔力も安定していたし、炎の姿だって鮮明に思い浮かべていた。


 それなのに、結果は何も起こらなかったのだ。


「……なかなか上手くいかないもんだな」


 ユウトが苦笑すると、シエルは静かに首を横へ振った。


「いいえ。昨日よりずっと良かったわ」


「……え?」


「少なくとも、魔力が暴れることはなかったでしょう?」


「……まあ、そうだけど」


「それだけでも大きな成長よ。それに、最後は僅かだけど魔力に変化があったわ」


 シエルはユウトの右手へ視線を向けた。


「まだ形にはならなかったけど、昨日とは違うことができている。それは確かよ」


「……そうなのか?」


「ええ。最初から何でもできる人ばかりじゃないもの」


 シエルの言葉に、ユウトは改めて自分の手のひらを見つめた。


 確かに、昨日と比べれば違いはあった。


 魔力を感じ取るまでに掛かる時間も短くなり、必要以上に放出してしまうこともなかった。


 何より、ほんの一瞬ではあったが、魔力そのものに変化が生じた感覚が残っている。


(……少しは進んでるのか)


 そう考えると、自然と肩の力が抜けた。


「……何か、褒められてるのか慰められてるのか分からんな」


 ユウトが苦笑すると、シエルは即答した。


「一応、褒めてるの」


「一応って何だよ!」


 思わずツッコミを入れると、シエルは小さく笑った。


「だったら、素直に受け取っておきなさい」


「……はいはい」


 ユウトもつられるように笑みを浮かべた。


 そんな二人を見て、シアが楽しそうに口を開く。


「でも主、今日は木が揺れなかったっすね!」


「そこを基準にするな!」


「ガッハッハッ! 昨日は訓練場ごと吹っ飛ぶかと思ったからな!」


「お前らなぁ……!」


 ユウトは呆れたように頭を掻いた。


 だが、不思議と嫌な気分ではなかった。


 昨日はできなかったことが、今日はできるようになっている。


 魔法を使えないことに変わりはないが、少なくとも無駄な努力ではなさそうだった。


 ◇


 ユウトがもう一度挑戦しようとした、その時だった。


 不意に、視界の端へ見慣れた文字が浮かび上がった。


《古代文字解析 84.9%》


《未知魔力解析 80.2%》


《進化条件達成まで、あとわずか》


「……ん?」


 ユウトの表情が変わった。


(……また上がってる)


 昨日の訓練が終わった時点では、古代文字解析率が八十二・一パーセント、未知魔力解析率が七十七・八パーセントだった。


 それが、今では両方ともさらに上昇している。


 特に未知魔力の解析率は、ついに八割を超えた。


(……やっぱり、関係してるのか?)


 ユウトは表示を見つめたまま考え込んだ。


 地下遺跡から戻って以来、新たな古代文字を調べたわけでも、未知の魔力に直接触れたわけでもない。


 やっていることといえば、シエルに教わりながら魔力操作の訓練を続けているだけだ。


 それなのに、解析率は少しずつ上昇している。


 単なる偶然とも思えなかった。


(……俺が魔力の扱いを覚えることも、解析に関係してるのかもしれないな)


 もっとも、詳しい仕組みまでは分からない。


 補佐機構も、具体的な理由については何も説明していなかった。


 ただ、進化条件へ近付いていることだけは確かだった。


(……もうすぐ、か)


 ユウトは静かに拳を握った。


 幼体から幼生体へ進化した時、自分の身体には大きな変化が起きた。


 次の進化では、いったい何が待っているのだろう。


 今よりも強くなれるのか。


 そして、今は使えない魔法についても、何か変化があるのだろうか。


 期待はある。


 だが、それ以上に、早く条件を満たしたいという思いが強くなっていた。


「……ユウト?」


 シエルの声で、ユウトは我に返った。


「……ん?」


「どうしたの? 急に難しい顔をして」


「ああ、いや……ちょっと考え事」


「……また補佐機構?」


「よく分かったな」


「あなた、分かりやすいもの」


「……そんなに?」


 ユウトが苦笑すると、シエルも僅かに微笑んだ。


「それで、続けられそう?」


「ああ、もちろん!」


 ユウトは顔を上げた。


 まだ魔法は使えない。


 魔力操作も、ようやく基本が身に付き始めたところだ。


 だが、少しずつでも確実に前へ進んでいる。


「……よし。もう一回頼む、シエル先生!」


「ええ。今度も焦らず、ゆっくりやってみましょう」


 ユウトは大きく頷き、再び右手を前へ差し出した。


 身体の内側へ意識を向けると、昨日よりも鮮明な魔力の流れが感じられる。


 その感覚を大切にしながら、ゆっくりと目を閉じた。


(……もうすぐ)


 補佐機構が示した二つの解析率。


 そして、進化条件達成まであとわずかという通知。


 すべてが何を意味しているのか、今はまだ分からない。


 それでも、ユウトは確かに感じていた。


 自分が次なる段階へ近付いていることを。

第220話を読んでいただきありがとうございます!


魔力を「感じる」ことから、「形にする」ことへ。


思うようにいかないからこそ、一歩ずつ積み重ねていくことが大切なのかもしれません。


そして、補佐機構が示した「あとわずか」という言葉。


ユウトの新たな力が目覚める時は、もうすぐそこまで迫っています。


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります!


それでは、また次回お会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。