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第19話 もう控えの世話役には戻らない

査問会の翌日、祝宴局から復職打診が届いた。


 局長代行名義の文書には、席次台帳官としての原職復帰と、希望すれば前面補佐への昇格も検討するとある。丁寧な文面だったが、読み終えた瞬間にわかった。彼らは空いた穴を埋めたいだけだ。


 私は返答を保留し、王宮大広間の最後の帳尻を確認した。査問後の席札回収数、返送招待状、酒器破損一覧。すべてを閉じてからでなければ、次へ進めない気がした。


 夕方、ゲルハルトが最後の面会を求めてきた。中庭回廊で向き合った彼は、ようやく疲れた顔をしていた。


「本当に北辺へ行くのか」


「ええ」


「王都でやり直せる」


「あなたとではありません」


 彼は痛そうに目を伏せたが、私はもう同情しなかった。痛いのは、私が席を奪われたあの日に済んでいる。


「君は支える側に向いていた」


「だから利用しやすかったのでしょう」


 私は復職文書を折りたたんだ。


「でも、もう控えの世話役には戻りません。私は自分で席を決める側にいる」


 その夜、王都を発つ前に大広間へひとり立った。空の卓を前にすると、奪われたと思っていた時間が、少しだけ違って見える。私はあの頃も無駄だったわけではない。どの席が危ういかを知るために、必要な年月だったのだ。


 翌朝、正門に出るとヨナスがすでに馬を整えていた。


「見送りに?」


「違う。帰る」


「どこへ」


「君の席がある場所へ」


 北辺侯は相変わらず無口だった。でも、その言葉だけで十分だった。私は王都を振り返らない。もう戻るとしても、呼ばれて末席へ座るためではないのだから。


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