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私達が暮らすこの国の名前はノヴァリース。
王都ノーヴァに王城が構えられ、ノヴァリース王家が統治している。
現国王陛下は賢王として有名で、安定した政治が行われ、王妃様もお優しくお美しく、国民から慕われている。
そんなお二人には王子殿下と王女殿下、二人のお子様がいる。
子供の頃に聞いた話なのだが王子殿下が大変お身体が弱く生まれてしまわれたということだ。
たしか、今年20歳になるはずだが、健康になられたという話は聞かない。
その為に婚約者を定めることもできず、王女殿下が婿を迎えることが濃厚だと考える者も多い。
ただでさえお身体が弱い殿下が呪いなんて受けてしまったら命が危ぶまれるのも頷ける。
「大変なことだわ。でも猫さん、私に何か出来ることはありますか?
私は子供の頃から幽閉されていて、デビュタントも済ませていません。
王城に知り合いもおりませんから、取り次ぐことは不可能に近いです」
私の家族に猫さんの話をしても一蹴されるでしょうし、そもそも私が呪いそのものだと思っているのでより恐怖の対象として認識されてしまうだろう。
【シャルロットさん、貴女には特別な力がある。ご自分でも少しは自覚されているのではないですか?】
「ええ、まぁ。動物さんたちの傷を癒すことは出来ますが……」
【それも素晴らしいことですが、貴女は光の魔力をお持ちなのです。
生命の傷を癒すことだけではなく、呪いを解くことができるのです】
「ほ、本当ですか? 私が呪うのではなく、私は呪いを解けるのですか?」
【はい。ですから貴女の家族はとんだ見当違いをして、貴女に対してとんでもなく失礼なことをしているのです。
本来、貴女は大変貴重で尊い存在。王子に降りかかりそうな呪いも貴女ならば祓えるはずです】
猫さんの話が本当ならば、王族をお助けするのは貴族の務め。
私にできることならば王子殿下をお助けしたい。
しかし、脳裏を過るのは子供の頃のおばあさんの幽霊の姿。
「子供の頃に会ったおばあさんの幽霊が私の家族を襲ったのです。
それに、その寸前まで幽霊が見えていなかった家族にも幽霊が見えてしまった。
私に光の力があるのだとしたら、何故家族を襲ったのでしょうか……」
【そのおばあさんの幽霊は貴女を助けたかったのではないですか?
今の状況から察するに、昔から貴女の家族は貴女に対して酷い仕打ちをしてきたように思えますから。
力のある霊は自分の姿を人に見せることが可能です。私も同じように本来見る力がない人間に姿をみせることも可能です。
まぁ、人間と関わり合いになりたくないので、基本的にはしませんがね」
そうか。おばあさんの幽霊は私を助ける為に……。
思い起こせば、私が嘘つきだと家族に罵られた後に、おばあさんの幽霊は家族に襲い掛かっていた。
「猫さん。いろいろなお話を聞かせてくださってありがとう。
猫さんへの恩返しの為にも、殿下の為にも私に呪いが解けるのならばしたいです。
力を貸してくださいますか?」
【協力をお願いしたのは寧ろ私の方ですから、喜んで。
早速、今晩から動き出しましょう。一晩で解決できるか分かりませんからね。
小屋の鍵は私が外からお開けしますのでご心配なく】
一瞬で猫さんが姿を消すと、すぐに扉の鍵が開く音がした。




