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幽閉されてから10年。私は18歳になった。
今も幽霊が見えるかどうかは分からない。何せ小屋から出されることはなく、決められた人間としか会っていないからだ。
しかし自分には何か不思議な力があるようだと自覚できるようにはなっていた。
何故なら、姉によって殺されていた虫や動物たちを、私が触れることで傷を治せるようになったからだ。
生き返らせるとまでは出来ないのだけれど死に至る怪我でなければ治すことは出来る。
そしてなんと、その彼らがお返しを考えてくれてなのか、花や木の実を差し入れてくれるようになった。
「今日もありがとうございます」
「チチチっ」
小さな動物しか通れない天井の隙間を抜けて、今日はリスさんが木の実を届けてくれた。
木の実を口に含むと甘酸っぱく、とても美味しい。
お礼を言うと、リスさんはこちらの言葉が通じているのかは分からないが可愛らしくペコリと頭を下げて去って行く。
手を振り、その姿を見送って「ふぅ」とため息を吐いた。
姉からの嫌がらせがエスカレートしていてごみも投げ込まれるようになり、
ここ数年はメイド達も加わり出して食事を出されない日があったり食事の中に虫が混入されている。
だからこそ動物たちからの差し入れが本当に有難い。
最近考えるのは、このままでいいのだろうか、ということだ。
姉の嫌がらせはこのままだと動物や虫たちにもっと酷いことをしそうだし、
私にもさらに凶悪な行いを強いてきそうだ。
しかしダメもとで小屋の扉を開けようとしても相変わらず鍵が掛けられている。
それでも例えばメイドが食事を運んできた時に体当たりをして転ばせ、その隙に逃げるとかは出来るかもしれない。
10年間抵抗してこなかった私が、そんなことをするとは考えもしないだろう。
つまり、逃げ出そうと思えば逃げ出せる。
「私がここからいなくなれば、動物たちが酷い目に遭わずに済むはずだわ。
けれどまずは幽霊が今も見えるか確認できたら……」
【幽霊が見えるかどうかの確認。まずは力になれそうです】
「え?」
今は夜も遅い時間。小屋の中には私しかいない。
横になっていた身を起こし、小屋の中を見回しても何も……いないかと思っていたのだが、キラッと金色の目が光る。
【初めまして、シャルロット・ファウベル伯爵令嬢。
私は猫の幽霊。名前はありません。私の姿が見えていて、声も聞こえているのなら、貴女の力は本物ということです】
タキシード柄と呼ばれる模様の黒色が多めの黒白の猫がこちらを見つめていた。




