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(アリシア王女視点)
城の中で騒ぎがあったと兵から報告がくる少し前、私はお父様の説得に苦戦していた。
呪いのことを夜会当日までお父様に信じてもらえていなかったのだ。
「お父様、信じてください。お願いします。私の言葉を信じられないのならファウベル伯爵を問いただしていただけませんか?」
「不確かな力を信用することは出来ん。……私が妻にかかりきりで、貴族たちに不穏な動きがあることは承知している。
兵だけではなく騎士たちにも注意するように伝えてある。心配せずに、お前は夜会に参加しなさい」
そう言って去って行こうとするお父様を呼び止めようとした時。
「大変です!」
部屋に騎士が駆け込んで来た。
「どうした?」
「し、信じられない報告をせねばならいのですが、突如首飾りが巨大化し、貴族三名を捕縛していました。
そこには謎の女性がおり、彼女が原因だとその貴族たちが言うのでひとまず牢へと連行いたしました」
「!?」「!?」
お父様と二人で顔を見合わせる。
私が話していた呪いの首飾りが騒動を起こしたのだ。
「その女性はグリーンブロンドの髪の美しい女性? なら、彼女が原因ではないわ」
「待ちなさいアリシア。その女が原因じゃない証拠がないのなら牢から出すことは出来ん。まずは騒動に巻き込まれた貴族たちから話を聞いて」
【嘘しか言わない人間から話を聞くうえに、しかも不確かな力についてどうやって聞き出すつもりですか?】
「な、何者だ!? どこにいる!?」
私とお父様と騎士しかいない部屋に声だけが響き渡る。
すぐにその声の主は姿を見せた。
【はじめまして。関わり合いになるつもりはなかったのですが、シャルロットさんが危険なので、致し方なく姿を見せています】
「あ、貴方、シャルロットの……」
【協力者というところでしょうか。そこの騎士殿。その立派な剣はどれほど振っても私を切ることは出来ませんよ】
剣を抜いていた騎士を牽制するように、現れた黒白猫は目を細めて睨みつける。
ただの猫とは違う威圧的な気配に、私たちは息を飲んだ。
【国王陛下、取引しませんか? 長年王子が床に伏している原因をお話しましょう。ですから、シャルロットさんを助けていただきたい】
「……息子のことも熟知しているのか?」
【ええ。まぁ、王子を助けたいと言っているのはシャルロットさんなのですがね。
王子は病ではなく呪いによって不自由な身体になってしまっている。
証拠を示せと言うのならば、二つあげられます。一つは王国総出で病について調べても20年以上改善されないこと。
つまりは病ではない。そしてもう一つがこれを使って改善が見られれば呪いだと証明できます】
「それは?」
黒白猫の真横に光り輝く首飾りが現れる。
「もしかして、それが、例の首飾り?」
【はい。シャルロットさんが浄化してくださったお陰で呪いは消え、聖なる首飾りへと変化しました。
これを王子の首にかけてみてください。少しは良くなるはずですよ。
どうです? 20年間どうしようもなかった王子をなんとかしたいのなら、信じてみませんか?】
黒白猫とお父様が見つめ合う。
数秒後、お父様は深く息を吐き出すと、頷いた。
「分かった。息子の部屋へ案内しよう」
お父様が受け入れると、黒白猫は満足そうに頷いた。




