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話は猫さんの生前の時まで遡った。それも300年も前の話。

10年ほど野良猫として生きて来た猫さんは、空腹から生きていくことに限界を迎えていた。

道端で倒れ伏してしまったその時、手を差し伸べてくれた女性が現れた。

それが猫さんの恩人である主となった人だ。

穏やかな生活がスタートし、飼い猫の暮らしとは快適なものだと満喫しながら、猫さんは主の女性のことを気に掛けていた。

自分の命を拾ってくれた人だから、幸せになって欲しいと願っていたそうだ。

しかし、彼女は難しい立場に置かれていた。

彼女は身寄りがないうえに庶民だった。そして貴族の恋人がいた。

身分違いの恋は苦しそうで、それでも彼女は貴族の男性が訪ねてくれるのを待ち、会えるとそれは嬉しそうに可憐に笑っていた。

決して男性は不誠実ではなかったそうだが、男性の親が貴族ではない女性を妻に迎えることを反対していた。

「必ず君と結婚する。誓いの証に持っていて欲しい」

男性はそう言って、彼女にガーネットが付いた首飾りを渡した。

職人が施した繊細で精巧な細工はガーネットを一際美しく輝かせ、素晴らしい品だった。

猫さんの主はとても喜んでいたそうだ。

そして「私の宝物にします。ずっと待っています。愛しています」と男性に伝えた。

しかしほどなくして、男性は女性のもとに姿を見せなくなってしまった。

そして……彼と入れ替わるように彼女の元を訪れたのは、男性の両親が雇った男たちだった。

粗暴な男たちが話していたそうだが、彼女を傷物にして彼から引き離そうとしたようなのだ。

彼女は首飾りを猫さんの首にかけると、猫さんと首飾りが傷付けられないように、クローゼットに猫さんを隠した。

彼女は男たちに蹂躙されることを拒み……殺されてしまった。


数日後、男性が彼女の家に駆けこんで来た。


そこには、もう言葉を発することはない彼女がいた。

彼女の傍らには猫さんもいた。首飾りを咥えて男性に差し出そうとしたのだが、男性は猫さんと首飾りには目もくれず彼女に駆け寄り抱き締めると、泣き崩れた。

何時間も泣き続けた彼は、「すまない」そう呟くと、持参したナイフで自らの喉を貫き、彼女の後を追って死んでしまったそうだ。


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